プロジェクトをデザインする【1】

 Hasniccaで、アイデアの発想やコンセプトスケッチを主に担当をしているコクボです。本文では、ものづくりと関係が深いプロジェクト自体を、私たちはどのようにデザインするかを3回に分けてまとめてみようと思います。続き次第では本投稿に加筆修正があるかもしれません。


■はじめに

 ものづくりは、作る意思の発生を起点とし、完成によって必ず終点を迎えるという点で定常業務と異なります。このようなものづくりに向いているのが特定の目的を達成するために行う業務、すなわちプロジェクト制です。
 私たちHasniccaでは、ものをデザインすることと同じくらいプロジェクトを設計=デザインすることを大切にしています。プロジェクトのデザインは、投入できるリソースの最適化をし、同条件でもプロジェクトのデザイン次第でアウトプットのクオリティに大きな影響を与えると考えているからです。

■プロジェクトをデザインするときに意識しているポイント

 私は、以下の3つのポイントをプロジェクトのメンバーと必ず明確化・共通化することを意識しています。
①最終目標
②前提条件
③スケジュール
上記のポイントでさらに気を付けているのは、アウトプットに関することなのか、プロジェクトの運用のことに関することなのかを切り分けて考えることです。これについては後述します。

■①最終目標

 最終目標を定めることは、プロジェクトを計画するためにも、メンバー全員がどこに向かうのかの共有のためにも極めて重要です。最終目標は主に次の点の疑問点に答える形で構成し、全員の意識を共有します。

・なんのために作るのか?
 「なんのために作るのか?=このプロジェクトの意義」をメンバー間で共有することで、アウトプットの模索の範囲が定まり、また本質的に考えることができるからです。
 よくある例になりますが、「車を作る」について考えてみしょう。車を作ることはそれ自体で目標になりますが、その意義を掘り下げていくと、更なる選択肢を考えることができます。「車を作る」意義が「高速で移動したい」であれば「車を作る」でいいですが、「野菜を新鮮なうちに運びたい」が意義であれば冷蔵庫を作るも選択肢に入ります。「誰かに会いに行きたい」が意義であれば代替案として「電話を作る」もありでしょう。そしてこの意義を深化させると、「このプロジェクトは誰かを幸せにするか」「このプロジェクトは社会をよくするか」といった部分が見えていきます。選択肢を広く取り、このプロジェクトに合致するものは何か?と考えて選択することによって本質に近づけると信じています。
 ここで、意義の深掘りの深さをコントロールすることに注意します。なぜなら不必要に意義を深くしすぎると今度は抽象度が高すぎて、なにも考えられない危険性があるからです。プロジェクトに応じて意義の深掘りの深さを調整し、適切な位置で「なんのために作るのか?」を定めることが進行と本質の検討の役に立ちます。

・なにを作るのか?
 デザインのプロジェクトは、「なにを作るか」が目標になることが多いです。「なにを作るか」は、例えば「椅子を作る」といった具体的な場合もあれば、「ある課題を解決するための施策を作る」といった抽象的な場合もあります。ここで大事なのは、この抽象度をメンバーで揃えることです。具体的なものを想像しているメンバーと、課題解決施策を想像しているメンバーとでは話が噛み合わなくなります。メンバーの認識がずれたまま進めるとプロジェクトが進んだ時に取り返しがつかなくなるので、徹底的にすり合わせを行い、定期的に認識の確認を行います。

・最終成果物はなにか?
 上記の「何を作るのか?」を具体的にするものですが、「なにを作るか?」と混同しがちなのが「最終成果物は何か?」ということです。「なにを作るのか?」はメンバー間での抽象度が揃っていれば、抽象度自体は問いません。しかし「最終成果物はなにか?」を考える時は必ず具体的な物体を挙げます。「椅子を作る」の場合、実物プロトタイプ、座ることはできないが形状が確認できるレベルのモック、設計図、アイデアスケッチ……等、作ったものの表現方法は何パターンもあります。「ある課題を解決するための施策を作る」であれば、事業書から、提案資料、タッチポイントのプロトタイプ、誰かにプレゼンすることが必要であればプレゼン資料となります。最終成果物はプロジェクトの途中で変わることもありますが、予測でもいいので最初に定めておくことで、メンバー間でも共通認識ができ、プロジェクトが円滑に進みます。

・作った後にどうするのか?
 デザインのプロジェクトの目標の大部分は「なにを作るのか?」に答えることでなのは間違いないと考えますが、全てでもありません。他に補完すべきことは「作った後にどうするのか?」を明確にすることです。「作った後のことまで全部やる」、ということではなく、あくまで「作った後にどうするのか?」の予測にとどめておくことが重要です。このプロジェクトが作って終わりなのか、売るところまでするのか、あるいは次の専門家に引き継ぐのか。プロジェクトがどこまでを範囲としているのかがメンバー内で共有できていないために、プロジェクトの終わりどきがわからないことを防ぐためにこのプロジェクトメンバーで何を作り、作ったものをどうするのかを具体的に決めておきます。

・どう評価するのか?
 次のプロジェクトに繋げて更なる改善と研鑽を図るためプロジェクトの完了後には総括が重要です。しかし「ものができたか」だけを評価軸にすると、結果は0か100となり、振り返りも解像度が低いままで終わり次回へ活かすことができません。そこでプロジェクト開始段階で最終目標を設定するとき、「アウトプットを完成させる」他に、「何が、どうなったら、どう評価するか」の定めることで、プロジェクト完了後に解像度の高い評価を行うことができるようにします。

・何を得るのか?
 最後に「もしアウトプットが完成しなかったとしても、このメンバーで何を得るつもりなのか」ということを共有しておきます。私たちは技術的にものが完成しないということは当然ありません。しかし不可抗力でプロジェクトが頓挫することはどうしても避けられず、その場合、徒労感だけが残りメンバーみんなが不幸になります。必ずものを完成させる他にサブとなる目標を掲げます。それは例えば「このプロジェクトを通して〇〇の方法を学ぶ」や「メンバー間の円滑なコミュニケーションシステムを構築する」といったもので構いません。ものの完成以外の最終目標を持つことでモチベーションコントロールと機会を無駄にしない心持ちが生まれます。

続きは3週間後くらいを予定しています。

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