見出し画像

日本のカーディーラーは変わるべき?

こんにちは、コーイチです。

NIO (蔚来汽車)という中国の自動車メーカーをご存じでしょうか?
2014年に上海で生まれた「中国のテスラ」と言われている新興EVメーカーですが、車メーカーというより、アップルのようなプラットフォーム企業に近いかもしれません。
車メーカーでありながら、どちらかというと「高級会員制サービス」という側面を持っているのがNIOの特徴で、「NIOの会員チケットが平均で約740万円(車両代のこと)ですが、それを買ったら車がお土産として付いてくる」という考え方に近いのではないかと思います。
今回は、NIOはどんなサービスがあるのかなどを見ながら、日本のカーディーラーの今後について考えていきたいと思います。

NIOの特徴

NIOの車はアップルと同じように、自社で製造しておらず、水平分業によってクルマを開発・製造しています。
クルマのデザインはドイツの会社が担当し、実際にプロダクトを作っているのはJAC(安徽江淮汽車集団)に委託しています。
NIO本体が事業として取り組んでいるのが、ユーザーに向けたサービスとなります。
NIOのサービス事業は主に「NIOパワー」、「NIOサービス」、「NIOハウス」の3つに分かれています。
クルマ本体の性能については、他記事を参照いただきたいのですが、
非常に上質で、ハイテク、洗練されたクルマとなっています。          

NIOパワー

NIOはEVの電気やリチウムイオン電池をデリバリーでも提供します。
電気自動車(EV)で面倒なのは車の充電ですが、NIOでは年約18万円相当もしくは月約1.6万円相当を支払うと、スタッフが家まで車を取りに来て充電をして戻してくれるというサービスを受けられます。
加えて、一定量までは充電スタンドでの充電が無料になるのです。        
例えば「今日、9時から15時まで〇〇の駐車場にクルマを止めるから、ここで充電をしておいて」というと、そこに充電カーがやってきて充電してくれます。
また特定の充電ステーションを使えば、電池スワップが受けられます。  EVは充電に時間がかかりますが、電池スワップを利用すれば長時間待つことなく、満タンの電池にその場でたったの3分で交換できます。

バッテリースワップステーション:中国の主要都市を中心に展開

EVの弱点と考えられていた「充電にかかる時間」を一気に短縮するこの電池スワップは、NIOのEVが便利にし、EV車の拡大を確実なものとしていると言えます。現在では、NIO以外のメーカーのEVにもサービスを提供するようになっているようです。
バッテリーは何年も使用すると劣化し走行できる距離も少なくなります。 (スマホでも同様ですよね)                     ある程度使用したら交換する必要があり、そこそこの費用がかかります。 NIOのようにバッテリーの電力が無くなるたびに毎回新しいバッテリーに交換でき、走行できる距離が短くなる心配もないことは、消費者として嬉しいのではないでしょうか。

NIOサービス

自動車保険を提供したり、車のメンテナンスサービスを提供します。
年約25万円相当を支払うと、点検・修理・メンテナンスサービスや、洗車サービス、空港での駐車サービス、運転代行サービスなど数多くの充実したアフターサービスを受けることができます。              (*サービスによっては、回数など規定あり)
また点検等で車を引き渡すことが必要な場合は、スタッフが自宅まで車を取りに来てくれ、終了したら家まで戻してくれるサービスも行っています。
そのような手厚いサービスが全て使えるため、適用範囲やお金のことを考えずに、使えることができるのです。
従来のメンテナンスは、運転してディーラーに行き、メンテナンスが終わるまでその場で待機し、また家まで車を運転して帰る必要があるため、丸一日近く潰れてしまうこともあります。
これを全てNIO側で実施してもらえるとなると、今まで「無駄」に感じられていた時間を他のことに使うことができるようになります。
日本の点検やメンテナンスは「安全に快適に移動できる」を実現する、言わば「普通の」メンテナンスとなります。                一方、NIOのサービスはそれらを前提とし「メンテナンスを気にせず生活を楽しんでもらおう」という一歩先の思想を考えて作られているように見受けられます。

中国の国家市場管理局(SAMR)は6月初め、「電気自動車のバッテリースワップ安全要求に関する国家標準」(GB/T 40032-2021)を承認しました。これは、バッテリースワップモデルの開発を管理する業界初の必須標準となります。
この規格は、NIO、北京電気自動車有限公司、吉利汽車などの企業が起草したもので、バッテリー交換可能な電気自動車の安全要件、試験方法、検査規則などを規定しており、今年11月1日から施行されるということです。

NIOハウス

中国各地にショールームと併設された「NIO HOUSE」というラウンジを持っています。
NIO ハウスは新たな価値をユーザーに提供する場所となっています。   
建物は大抵2階建てで、1階にクルマが展示され、2階がラウンジになっています。
ラウンジは入口がロックされており、専用のカードキーを持ったNIOのカーオーナーしか入ることができません。
中には、コワーキンスペース、ミーティングスペース、カフェ、ミニ図書館(自動車以外の書籍など幅広く用意)、キッズスペースなどがあり、自由に使うことができます。またキッズスペースでは親子向けイベントや子供たちの美術や音楽のクラスも頻繁に行われています。
商談スペースも日本の自動車ディーラーのようなものではありません。
仕様を決めたり、操作方法や装備などを説明するためのモニタースクリーンが置かれたデスクがいくつか並べられ、大きなソファが点在しています。
日本のように紙コップでコーヒーが供されるようなことはなく、大きなバーカウンターがあり、中にはバーテンダーが控えていて、好みの飲み物を作ってくれます。
日本のカーディーラーと決定的に異なっているのは空間のゆったり感と高級感、シンプルでスタイリッシュなデザインかと思います。

2019年頃、深刻な資金不足に陥ったNIOは現在、消費者の生活に密着した派手なクラブハウス型のショールーム「NIO HOUSE」の開設計画を縮小しています。
同社は現在、ショッピングモール内などにより小型のショールーム「NIOスペース」の開設に専念しています。
NIOスペースは面積80〜200平方メートル程度の広さで、オーナー向けの特典はないものの、一般的なショールームに近い形態で出店しています。
2020年以降は業績も好調になり、2020年末までにNIOハウスとNIOスペースの販売及びサービス店舗の累計数を200近くにまで増やし、より身近な場所で実際にNIOの車に触れてもらう場所を増やしていってます。

画像4

               (NIO space  出典:Chinapev.comより)

NIOアプリ

NIOアプリにはSNS機能もあり、そこでNIOユーザ同志で繋がることを目指しています。オンライン・オフライン共にNIOコミュニティを作る仕掛けを作って、ファンを獲得しています。
SNS機能では、NIOのカーオーナーたちが日常の写真や、NIOで行った場所の写真、「NIO House」で仕事をしている写真などをアップしています。「NIOってカッコ良い」というロイヤリティ意識や帰属意識を醸成する意図もあるでしょう。

「NIO House」で行われるイベントのお知らせもあり、毎日アプリにチェックインするとポイントが貯まります。
アプリを開けば、ポイントを貯めるためのチェックインだけではなく、SNSやイベント情報など他の情報も目に入る可能性もあるので、高頻度で接点を取ってエンゲージメントを高めていくことになります。
又貯まったポイントは、アプリ内のECサイト(ショッピングサイト)でおしゃれな日用品やNIOグッズを購入したり、「NIO House」のカフェで飲み物を買うのにも使うことができます。
こうしたファンコミュニティの拡大は、顧客の拡大に加えて、思わぬメリットも生んできました。
2019年、NIOは経営危機に立たされました。バッテリーから発火し、安全性への疑念が広がったのです。
ネット上では炎上状態になったのですが、その過程で驚くべきことが起きました。
ファンが、NIOを擁護する運動をネット上で展開し、これにより正しい情報が流れはじめ、安全性をクリアしたことが広く認識された結果、NIOは経営危機を乗り越えることができました。
そればかりか、一部のファンが立ち上がり、NIOの経営を支えようとNIOのクルマの営業まで始めてしまったということです。
ユーザーの満足度が高く、NIO愛の深さが分かるエピソードではないでしょうか。

画像2

                                                                      (出典:NIOのアプリより)

NIO Life

画像4

画像5

                                                                           (出典:NIO公式サイトより)

「NIO Life」は2018年に立ち上げられ、これまでに服飾品、スーツケース、ガジェット、家具・インテリア雑貨、カーライフ、カーホビー、ホテルステイ、食品の8カテゴリーを展開し、300万点以上の商品を取り扱ってきました。
英インテリアデザイナーのトム・ディクソン氏など世界的なデザイナーとコラボレーションし、商品の企画開発、デザインからサプライチェーンまでを手がける専門チームを商品カテゴリーごとに設けています。
NIOは顧客に車を販売するだけでなく、新しいライフスタイルを提案し、それに合わせた多様な体験を提供します。
「NIO Life」はユーザーコミュニティのコンテンツを形成する重要な要素であり、まだNIOの車を持たないユーザーにも憧れを想起させます。
「NIO Life」の商品を購入するの顧客のうち、半分はNIOのカーオーナーではないといいます。                          コアユーザーは一〜二級都市在住の新中間層で、大部分は男性のマイカー所有者ということです。

顧客ロイヤリティ

驚くことに、ショールームのスタッフの一部はNIOのカーオーナーが務めているということです。彼らはボランティアで接客をしており、店舗によってはボランティアの顔写真が店舗の目立つところに貼られていたりもします。
又、毎年「Nio Day」を開催しており、2017年の第1回目では、生産開始の1年前に車を注文した人全員に航空券と高級ホテルの費用を負担しました。

新時代のEVメーカー「NIO(蔚来汽車)」が提供するのは、「車」でも「移動」でもなく「ライフスタイル」そのものかと思います。
NIOはもはや従来の「メーカー」の域を超えたサービス提供を行なっていると言えるでしょう。
NIOは「車」や「移動」だけを提供しているわけでもなく、NIOの車を入口とした「会員制サービス」で快適なライフスタイルを提供し、顧客ロイヤリティを高めていることがわかります。

最後に

いかがでしたでしょうか。
今までのカーディーラーとは違い、ワクワクしてきませんか。
NIOは事業もまだ黒字化していませんが、徐々に売上高と損失のギャップは縮小し続けています。                       又、初の海外マーケットとしてEVの人気が高いノルウェーに進出することが決定したようです。
環境に対して関心のある中国の消費者に向けてブランド育成し、惜しまず努力してきたNIOは十分にテスラの脅威になると考えられます。       今後の中国市場から世界市場にマーケットを広げたNIOの活躍が見ものですね。

日本の自動車メーカーディーラーとは販売方法や直営であることなど、全く違いますが、日本のディーラーも顧客サービスとして何かしらのヒントがあると思います。
今後、日本でもEVが増加していくことになると思われますが、その場合従来とは違う店づくりやサービス、販売方法、立地に至るまで、大きく変化していくことが予想されます。                         
日本ではLEXUSやマツダ(一部)、その他一部の店舗環境はかなり洗練されていますが、ほとんどの店舗はあまり洗練されているとは言えないですね。  又、現時点でNIOのようなサービスを提供している店舗はないかと思います。(クルマを売らないショールームなどはありますが、それはブランディングが目的なので含んでいません)                         近い未来、クルマの進化と共に、日本のカーディーラーも変わっていくべきかと思います。                       

私もこのような新しいカーディーラーづくりに関わっていければいいなと 思います。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。          
よろしければフォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします

よろしければ、サポートお願いします。サポートされたものは、今後の活動費として活用させていただきます。