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変化する寺院

こんにちは、コーイチです。
 少子高齢化や人口の流動化に伴い、宗教法人をとりまく環境は大きく変化しており、従来の寺院運営が曲がり角に来ています。
 今回は、そんな中大きくイメージを変えようとする寺院の様々な新しい取り組みを見ていき、今後もこのような取り組みは増えていくのか、またこのような展開が他施設でも見られるようになるのか考えたいと思います。


1.お寺ステイ

(出典:お寺ステイ_OTERA STAY youtubeより

 「お寺ステイ」とは、日本の歴史と文化が詰まった社寺での体験・滞在により「日本の魅力」と「ありがとうの感謝の輪」を世界に広げていく体験ステイサービスのことです。
 
 「シェアウィング」は、お寺に宿泊する「お寺ステイ」を事業の柱に2016年に設立されました。
 共同設立者の一人であり、以前から健康に関心が高かった佐藤氏は、自ら岩盤浴やホットヨガの施工会社を営み、フィットネスクラブやホテルなど全国約120か所でスパをプロデュースしてきました。
 「お寺ステイ」は、新しい旅のスタイルとして民泊が選ばれるようになってきたことから、「お寺での民泊」を最初のビジネスプランとして、寺院へ営業したことがきっかけで生まれました。
 しかし、宗教法人である寺院は公益法人でもあるため、営利事業の「宿泊業としての宿坊」という提案は受け入れてもらえませんでした。
 そんななか、知人の勧めで岐阜県飛騨・高山地域の高山善光寺という宿坊に泊まろうとしたところ、外国人観光客に人気の宿坊であるのに年内で閉めてしまうと聞きました。
 周辺に安価なゲストハウスが増えて競争が激化し、住職の家族も不在で運営が困難になったという理由でした。
 住職に宿坊を自分たちに任せてもらえないかと直談判し、2017年に「TEMPLE HOTEL」第1号として開業に至りました。

 この「お寺ステイ」は、日本だけでなく、海外からも大きな期待を寄せられおり、日本の伝統思想の評価は、世界的にも急激な高まりを見せています。
 こうした背景もあり、神社仏閣は外国人観光客の大人気スポットとなっています。
 しかし、古い木造のお寺や枯山水のミニマルな石庭を愛でることはできても、実際に仏教の教えを体験することは難しいところ、この「お寺ステイ」では、ホテルに宿泊する代わりにお寺に宿泊、本当のお坊さんと日常生活を共にすることができます。
 現役の住職に同席し、お遍路巡りや精進料理、護摩焚きを体験することで、日本伝統思想を深く理解することが出来ます。
 見るだけではわからない、思想をまさに「体感」することができるのは、この「お寺ステイ」だけと言えます。

2.寺カフェ

(出典:JAPAN FOOD TV youtubeより)

 「寺カフェ」には、境内にあるカフェや寺が運営するカフェなど様々な形態があり、近年、都会にあるお寺や神社のカフェが増えてきています。
 寺ならではのメニューがあったり、お坊さんが常駐していたり、特に癒しを求めている人や 悩みがある人には人気となっています。
 「寺カフェ」は、一般的なカフェと違い、写経も出来るし、お坊さんに悩み相談もでき、念仏も唱えています。
 
 近年、日本の人口減少や核家族化、若者の宗教離れなどの影響により、お寺の信仰者数も減少傾向にあります。
 また、高齢化により僧侶不足が深刻化しており、お寺業界全体で新たな取り組みが求められています。

 2013年9月、代官山の駒沢通り沿いに誕生した「寺カフェ代官山」は、当時、そのユニークな存在から数々のメディアに取り上げられました。
 一見、代官山にあっても違和感のないセンスのいいたたずまいでありながら、よく見ると店内には阿弥陀如来や仏頭が飾られ、お坊さんがいます。
 この「寺カフェ代官山」を運営しているのは、淺野住職で、「今の世の中、お寺に人が来ないのは当たり前で、法要以外、用事がなく、継承するお墓もなければなおさらの来ないと思い、だから私たちが街に出たんです。」と語っています。
 寺カフェの経営はようやく軌道に乗ってきたが、そもそも布教は儲かるものではありません。
 仏教によって救われる人がいるならば、と淺野住職はカフェという形で布教することを選んだとのことです。

3.寺キャンプ

(出典:ゆうだい日記 youtubeより)

 開創1200年の和歌山県那智勝浦町にある臨済宗妙心寺派大泰寺と、全国に7か所の宿坊「お寺ステイ」を運営する「シェアウィング」は、日本初となるお寺での常設キャンプ場&RVパーク「Temple Camp大泰寺」を、2021年6月初旬にオープンしました。
 大泰寺では、2019年に開業した宿坊の好評を受け、より気軽に泊まれる「アウトドアの宿坊」として2020年11月に「Temple Camp大泰寺」を整備し、バージョンアップを行ない、グランドオープンしました。

 同「寺キャンプ」は、キャンプ4組とRV車5台が同時に宿泊可能で、テントサウナなどのアウトドアアクティビティを楽しむことができ、禅堂では坐禅の指導を受けることや仏像鑑賞や写経、朝がゆ体験ができます。
 
 仏像鑑賞では、薬師堂に保管されている歴史ある仏像、木彫、水墨画を住職の説明を聞きながら鑑賞ができます。
 写経では、写経した紙は、最後に名前と願いごとを書いてお寺に納めていただきます。
 坐禅は、坐禅堂で行ない、座布団に座ると住職が姿勢をみていただき、姿勢を正し、吐く息に意識をむけ、こころを整ることができます。
 鐘撞体験では、合掌して一突きし、合掌して礼拝します。
また、お寺では、デイユースでワークスペースとして活用することもでき、Wi-Fiも完備しているため、「寺ワーク」
可能となっています。
 近所の散策には、レンタサイクルもあります。
もちろん、焚き火と地元の食材でBBQも楽しめます。
 朝食は、住職が作った朝がゆが食べられます。

 サウナと禅の組み合わせで「究極のととのう体験」を提供できる施設となっています。

4.最後に

(出典:Temple Hotel高山善光寺 youtubeより)

 全国に約7万7000もの寺院が存在しますが、住職の後継者不足や檀家の減少などから20年以内に約4割が廃業すると言われています。
 仏教界全体の総収入(市場規模)は、コロナ禍前の水準で総計約5700億円(非収益事業と収益事業の合計)とみられていますが、2020年では約3000億円(前年比約53%)もの減少となっている可能性があると言われています。
 布施収入だけで生計を立てられない寺が多数派で、コロナ禍により更に大きな打撃を受けたとのことです。

 地域からコミュニティの核である寺が消えれば、地方の衰退はますます加速するという悪循環に陥る可能性があります。
 また、寺院の消滅は、地域の安全にも関わり、空き寺が犯罪の温床になったり、防災の拠点として機能しなくなったりする可能性もあります。
 今後は、国や行政レベルで寺院消滅回避への対策が求められています。

(出典:こはる Trip & Eats youtubeより)

 そんな状況下でこれらのような寺院の強みを活かした「ウエルネス系体験施設」の取り組みは、今後も増加してくるかと思われます。
 寺院と同じように人が集まらず、ほとんど利用されていない公共施設なども、その施設の特徴を活かし、新たな取り組みを行うことによって、従来のイメージを変えることも可能かと思います。
 普段なかなか行くことがないかとは思いますが、一度近くの寺院へ行ってみてはいかがでしょうか。
 新たな自分が見つかるかもしれません。


5.参考

 寺院とは異なりますが、「ウエルネス系体験施設」という点で非常に似ている、下記施設も参考までに紹介します。

(出典:おとたびチャンネル youtubeより)

 淡路島で地方創生にも取り組むパソナグループは、2022年4月に座禅やヨガを通して心身のバランスを整えるウエルネス系体験施設「禅坊 靖寧(ぜんぼう せいねい)」を開設しました。
 淡路島北部の四方が山に囲まれた高台にあり、うっそうとした森の中に橋げたが突き出したようなインパクトのある木造建築で、自然の景観を損なわない設計により、空中に浮かんでいるように見えます。
 約3000平方メートルの広大な敷地に建つ施設は、1階の宿坊風個室とレストラン、2階の座禅・ヨガ用空間から構成されており、中でも国産杉を組み合わせて作った全長約100メートルの直線的なウッドデッキが印象的となっています。
 2階展望デッキの開口部に天井以外ほとんど視界をさえぎるものがなく、360度見渡せることが出来ます。

 設計者である建築家の坂茂氏によると「人は普段、下から木々を見上げているが、建物の中にいる威圧感がなくなり、宙に浮かぶように上から木々を見下ろせれば、鳥のさえずりに囲まれて非日常的な場に身を置ける。空中で座禅を組むためにはどんな空間をつくればいいのか自問し、そんな考えに至った」と語っています。
 ウッドデッキで行われる瞑想体験では、まるで森の中に1人存在しているかのようで、風が吹いて揺れる木々のざわめきや野鳥のさえずりや虫の鳴き声などが間近に聴こえ、大自然がすぐそばにあることを体感できます。

 またレストランでは、健康的で滋味深い「禅坊料理」を味わったり、「起きて半畳、寝て一畳」の精神に基づき必要最低限のものだけで構成された宿坊で自分に向き合ったりでき、忙しい日常から離れ、豊かな自然の中で本来の自分を取り戻す「リトリート」がかなう施設となっています。

 今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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