スクリーンショット_2019-11-15_18

#5 AI時代における「働き方改革」とは

働きごこち研究所」という会社を経営している、藤野貴教(ふじのたかのり)と申します。人・組織の働きごこちを研究して、大企業や経営者向けの研修、採用コンサルティングをしています。今回は「AI時代の働き方改革」についてご紹介します。“これからの働きかた”に興味がある人、大企業で働きづらさを感じている人、どうせ働くなら楽しく働きたい人に、ぜひ読んでいただけましたら嬉しいです。

▶︎関連記事
#4 テクノロジー化しなければ自治体も企業も負けてしまう?

AI時代における「働き方改革」とは

AI時代の働き方改革は、大きく分けて2つあると考えています。ひとつは「顧客や業務の不便をテクノロジーで解決すること」。次に、浮いた時間で「人間らしい感性を生かし、目の前の人に喜んでもらう仕事をすること」です。まずは、わかりやすい事例を紹介します。

僕は愛知県西尾市で、スマート自治体推進アドバイザーをしています。市の中で実際に行われているのは、西尾市役所のふるさと納税の仕事をRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)化をする取り組みのこと。ルールエンジンや機械学習などのAIを取り入れたソフトウェア型のロボットを利用して、これまで人間が行ってきた業務を徹底的に自動化・効率化したのです。

その結果、約7時間かけてひとりの職員が行っていたメール対応や、ふるさと納税の返礼品発送業務が効率化され、たったの約1時間でできるようになりました。そうして浮いた時間は、顧客が喜んでくれる返礼品を企画したり、返礼品を作っている生産者を訪ねてお礼を伝えたり、ふるさと納税のお客様向け観光イベントを企画したりしています。人間だからこその「知恵や感性」を使い、付加価値を生める仕事に時間を充てられるようになったのです。これがAI時代の働き方改革の一例です。

画像1

しかし、こうした働き方改革が進むことで「AIに人の仕事が奪われてしまう」と不安を感じている人は多いと思います。大企業の中で講演をしていると「20年間この仕事をやってきているので、この仕事以外は知らないし、他のことはできません。奪われてしまったら、非常に悲しい」という不安の声をいただいたこともあります。では、私たち人は今後の仕事をどう捉えていけば良いのでしょうか。

解決すべきは「ロボット化」している現代の働き方

僕は、テクノロジーが進化していくことは、問題だと思ってはいません。むしろ「現代人がロボット化して働いていることこそが真の問題だと捉えています。目的意思や感情をもたないで言われた通りに動き、ひたすら目の前の仕事をこなす。これでは人間がロボット化してしまっているように感じるのです。

大量生産・大量消費のために、合理的なオペレーションが求められた高度経済成長期の20世紀には、そうした働き方が合っていたかもしれません。ですが今の時代は、上から支持された命令に答えるだけでなく、現場で自らの頭で考え新しい価値を生み出すことが、企業組織で働く人には求められています。その時代の流れに合わせ、ロボット化した働き方を変え、“人が人らしい働き方に進化すること”が大切になると僕は思うのです。

21世紀に生きる人は、“働く目的意識”を今一度取り戻さなくてはなりません。自分はなんのために働くのか、誰のために働くのか。“お客様に喜んでもらうこと”のために、何ができるのかを考え動いていくこと、そうしてお客様がサービスを通して得られる体験(UX)を高め続けていくことが、人が担うメインの仕事になっていくのだと思います。

画像2

使いやすさ、心地よさ、気持ちよさ、温かさを感じられるように、オンライン・リアルを問わず、心を込めて工夫をすること。不便や不快、悩みやイライラ、喜ぶポイントに気づくことはロボットにはできません。人間じゃないとできない仕事です。人間だからこそ、そこに気づき、アイディアを出し提案することができるんです。

AI時代の働き方改革としてお伝えした、「顧客や業務の不便をテクノロジーで解決すること」と「人間らしい感性を生かし、目の前の人に喜んでもらう仕事をすることの意味は伝わりましたでしょうか

とはいえ…多くの企業がそうは思ってはいるものの、進まない状況があると思います。次回#6では、背景にある「企業と個人の不都合な真実」についてお伝えをする予定です。楽しみにお待ちください!

スクリーンショット 2019-11-15 18.32.47

▶︎関連記事
#1「働く」の、これからを。“働きごこち研究所”が立ち上がるまでの軌跡
#2 人工知能時代の働き方——まずは日常生活で「サクサクユーザー」を目指そう
#3 世界で1番早く「高齢化」が進む国、ニッポンに対して僕らができること
#4 テクノロジー化しなければ自治体も企業も負けてしまう?
▶︎働きごこち研究所についてはこちら
http://www.hatarakigokochi.jp/
▶︎藤野貴教の書籍 『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』は、おかげさまで中国・台湾・韓国で翻訳されました。
https://www.amazon.co.jp/2020年人工知能時代-僕たちの幸せな働き方-藤野-貴教/dp/4761272546

藤野貴教 Fujino Takanori
株式会社働きごこち研究所 代表取締役 ワークスタイルクリエイター

2007年、株式会社働きごこち研究所を設立。「働くって楽しい!」と感じられる働きごこちのよい組織づくりの支援する傍、2015年より「テクノロジーの進化と人間の働き方の進化」をメイン研究領域としている。日本のビジネスパーソンのテクノロジーリテラシーを高め、人工知能時代のビジネスリーダーを育てることが志。グロービス経営大学院MBA取得。『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方(かんき出版)』を上梓。
執筆アシスタント : 水玉綾 Aya Mizutama
フリーランスの編集者・ライター

株式会社CRAZYにて人事担当として、2016年10月に採用広報を目的としたオウンドメディア「CRAZY MAGAZINE」を立ち上げ、2018年7月に独立。現在は外部広報として「CRAZY MAGAZINE」の編集長をする傍、DeNAの採用メディア「フルスイング」で企画編集や、「新R25」「未来を変えるプロジェクト」等のメディアにて働きかた・組織論を中心としたインタビュー・記事制作を担当。

2冊目の本書いていて、たまにやる気出すためのNote書きます。