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激情型劇場

つい数年前まで「劇場型」を「激情型」だと思っていた。お恥ずかしいにも程があるが、事実である。ニュースなどで耳にする度に、ほうほう、犯人は激情に駆られ、そして逆上するなどして大きな事件を起こしてしまったのかと随分な勘違い(注1)をしていた。かといって、それで何か支障があったのかというと、何もなかった。
 
さて、我が「はと子劇場」で、激情に駆られた末に何かが起こる演目はあるのかと聞かれても、それは難しい。何しろ支配人兼座長が鳩子である。激情がないわけではないが、いかんせん乏しい。だからといって薄情でもないが、『軟』ときている。その点では、競合(注2)との住み分けに成功しているかもしれない。
 
では、大したドラマも起きないくせに、なぜ「劇場」にしたかというと、なぜか物語調になってしまうからでもある。ならばいっそのこと「劇場」にしてしまえと自棄やけになったわけだ。これがいわゆる「激情」なのだろうかと勘違いしそうになったが、どちらかと言うと開き直りだろう。

されどせっかく劇場なのだから、激情に充ち満ちた演目があってもいいだろうとも思う。一筆書きのような激烈フェイスで、縦横無尽に駆け巡る鳩子もいいかもしれない。ただ、残念ながら今のところその予定はない。ない袖は振れないのだ。
 
波風と激しめの感情をご希望の方は、鳩子の自由形フリースタイル小説(注3)のほうでならそれなりなアップダウン見受けられると思います。また、今後の作品にも是非ともご期待下さい。
 
ここで一句
 
推敲を 何度も遂行 もう結構

セルフ推敲に限界を感じる今日この頃を詠った一句。目がショボショボです。
 
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注1 ちなみに、「台風一過」は「台風一家」、「捜査一課」は「捜査一家」で、ファミリーのたぐいだから仲良く連れ立ってやってくるのだろうなと思っていた。今でも、できればそうであって欲しいと思っていたりもする。

注2 はと子劇場の目と鼻の先に、もう一軒劇場がある。『むらさきビキニ劇場』と、勝手に鳩子に名づけられている不名誉なその劇場は、支配人兼座長である男の一人舞台が売りだ。ネオンパープルのビキニ一丁で演じきるところは、はと子劇場とはいささか趣きは違うものの、根強いファンがいてもおかしくはない。しかし、仮に近所の小学生を集めてみせていたりするのであれば、まったく破廉恥はれんち御仁ごじんである。ちなみに、紫ビキニ劇場の今後の動向についてはさほど気にしていない。

注3 東の都の一場面を切り取って描写するシティポップのような、さほど波風の立たない世界もある。それはそれで一つの世界観だと思う。しかし、鳩子の作品は波というより風が吹きまくる。その模様は一作目『丘の上に吹く風』、現在訳あり連載中の二作目『へそ出しさやか』でどうぞ。

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潜っても 潜っても 青い海(種田山頭火風)