麗野鳩子 | Hatoko Uruwashino

草葉の陰の物書きモドキです。ジャンル不明の自由形。習性上、一句詠みます。エッセイは時々…

麗野鳩子 | Hatoko Uruwashino

草葉の陰の物書きモドキです。ジャンル不明の自由形。習性上、一句詠みます。エッセイは時々。作品と今後の予定については『お知らせ&お品書き』マガジンでどうぞ。お問い合わせはこちらから: m.international.jp@gmail.com

マガジン

  • 筆後感想文

    著者による執筆後の感想文のつもりでしたが、解説のようになっているようです。 作者の見解などあまり読まないほうがいいような気もするので、一部有料、期間限定無料にしています。 一作目の小説『丘の上に吹く風を書いて』の筆後感想文では、日本特有の信仰風情ふぜい、執筆時のあれこれや小説全体の構成、くどくなるから書いてはいないけど込めたこと、実は陽太は侍だった件等々、そこそこ暑苦しく語っております。

  • ショートショート

    ご提案型と一切ご提案しない型ショートショート作品置き場です。 ご提案型:提案書やら企画書やらは簡潔でないと読んでもらえません。ということで、ショートショートで書くことにしました。 一切ご提案しない型:その名の如くのショートショートです。 ささっと書いたものなので、さっさと先に発表するかもしれません。

  • 『倒木』三部作

    『丘の上に吹く風』の『あとがきにかえて』として投稿した詩『倒木』から生まれた短編小説を含む三部作です。 1.詩『倒木』 2.短編小説『六本木倒木事件』 3.短編小説『七人目の侍』

  • お知らせ&お品書き

    小説投稿のお知らせや、お品書き(作品紹介)などです。 作品については、最新のお品書きをご参照下さい。

  • あとがきにかえて

    小説執筆後の私情を詩情に乗せてお送りする謎の試みです。

最近の記事

【筆後感想文】『丘の上に吹いた風』を書いて

感想文と言いながら説明と解説になっていました。 語り過ぎず手短かにし、感想もちゃんと書いてみようと思います。 この筆後感想文も含め、なぜあれこれ企画しているかというと孤高操業だからです。誰かがやってくれるわけじゃないんで。 筆後感想文はBehind the scenesの位置づけで始めました・・・・・・のような説明をしないと理解されないのかもしれませんが、この企画もいつしかフェードアウトするのか、あっさりと季節のご挨拶に吸収されるのか、どうなることやらです。 まずは感想要休

    • 季節のご挨拶2024 初春

      まずは初鳴き。 鳥の中にはオウムのように人の真似をするものもいればガビチョウのように他の鳥の鳴き真似をするものもいますから、鳩がウグイスの真似をしたっていいんじゃないかと思います。もしかしたらこれはサバイバルスキルなのかもしれないのですから。 音が結構響いているのは風呂場で録音したからです。 最後のピピョピは「起きて」ですので目覚まし代わりにご活用下さい。 皆様の清々しい朝の目覚めを願いつつ、今後も練習を続けてまいります。 春ですね。まずは花模様例年よりずいぶん早く吹き去っ

      • 【短編小説 丘の上に吹いた風】あとがきにかえて(短歌)

        『地蔵菩薩』 つかの間と 錫杖にぎり 菓子に笑み 頬を伝うは 宝珠の涙 短編小説『丘の上に吹いた風』麗野鳩子|麗野鳩子 | Hatoko Uruwashino|note 一作目『丘の上に吹く風』の続編です。 陽太と美月の旅はどこまで続くのでしょうか。

        • 【お知らせ】『丘の上に吹いた風』公開中

          表題の作品公開しました。 マガジンにしましたので是非どうぞ。 短編小説『丘の上に吹いた風』麗野鳩子麗野鳩子 | Hatoko Uruwashino|note さて、投稿のタイミングが作品が自分から離れるタイミングで困ってます問題にぶつかっておりました。それもこれも|孤高操業がゆえかもしれませんが、そんなことを言っていてもしょうがないわけで、解決策として一旦有料で投稿して見直しが終わったら無料開放するという試みをしました。 見直し期間で作品自体が良くなったかはわかりません

        【筆後感想文】『丘の上に吹いた風』を書いて

        マガジン

        • 筆後感想文
          3本
        • 『倒木』三部作
          3本
        • ショートショート
          3本
        • お知らせ&お品書き
          14本
        • あとがきにかえて
          5本
        • 短編小説『丘の上に吹いた風』麗野鳩子
          10本

        記事

          【短編小説 丘の上に吹いた風 エピローグ】次のページ

          エピローグ -次のページ- 大きく開いた窓のカーテンがはためいた。 風は部屋に吹き込むと、机の上の三年日記をぱらぱらとめくり始めた。 陽太が両親に残した手紙のページで一旦止まり、ゆっくりともう一ページめくった。 「ここに書けばいいんだね?」 風はうんとうなずいた。 ミカエルは背中の翼から取り出した羽ペンをさらさらと走らせた。 風は読んで嬉しそうにうなずいた。 一つ前のページに戻りそうになった。 風はふーっと吹いて押さえつけた。 また戻りそうになった。 風もまたふーっと吹い

          【短編小説 丘の上に吹いた風 エピローグ】次のページ

          【短編小説 丘の上に吹いた風 8】泣き笑い地蔵

          8.泣き笑い地蔵 話はあっという間に広まった。 三田が知った時には、静かな山間の集落はその話題で持ちきりだった。 お地蔵様もあの事件を悲しんでいるのだろうという近所の住人達の話を、全くの当て推量だと片付けられず、三田は薗と連れ立って時折地蔵堂を訪れるようになっていた。 話を聞いて訪れる者が増えたのか、地蔵堂の中は供え物でごった返していた。 「サンタ先生、お地蔵様今日も泣いてますね」 目を糸の様な月にして微笑む地蔵菩薩の両目から流れた涙は頬を伝い、丸い顎先からしたたって赤い前

          【短編小説 丘の上に吹いた風 8】泣き笑い地蔵

          【短編小説 丘の上に吹いた風 7】旅立ち

          7.旅立ち 「一服するから、ちと待っとれ」 ようやく戻ってきた地蔵菩薩に促され、陽太と美月は地蔵堂の前に座った。 せっかく水守が供えてくれたのだから無駄にはできんと、地蔵菩薩はピンクのすあまをびよんと伸ばして嚙みきり、茶で飲み下した。 「お地蔵様って、毎日ここにいなくて大丈夫なの?」 「陽太は心配性じゃな。水守が供え物を持ってくるのは週に一度じゃ。その時におれば何の問題もない。たまには餡のない菓子もいいものじゃのう」 地蔵菩薩はまた一口茶をすすり、ほうっと息をつくと、今度は

          【短編小説 丘の上に吹いた風 7】旅立ち

          【短編小説 丘の上に吹いた風 6】ドクター外中のおにぎり

          6.ドクター外中のおにぎり 婦長室のドアをノックすると、すぐにどうぞと返事が返ってきた。 袖山は書類に目を通していた婦長の前に座った。 「婦長、先日の件なんですけど」 「その件なら私も賛成です」 「それは心強い。僕からそれとなく話してみます」 「それとなく? 直球でいいと思いますよ、外中先生だいぶ鈍感なところがあるから。それで危うく結婚相手逃しそうになったじゃない? あの時はさすがに私も焦りましたよ」 「今回は大丈夫ですよ。なにしろ・・・・・・」 「そうですね、なにしろ・・

          【短編小説 丘の上に吹いた風 6】ドクター外中のおにぎり

          【短編小説 丘の上に吹いた風 5】友の行方

          5.友の行方 ホスピスの長く張り出した軒の上は、陽太の新しいお気に入りの場所になっていた。 生垣と栗の木の間にモグラが作った塚、すももの木に引っかかるセミの抜け殻、大きな実を一つだけつけた小さなレモンの木、どれもこれも軒下のデッキから見ていた頃には気づかなかったものだった。 陽太と美月はあれから何度も地蔵菩薩を訪ねたが、地蔵堂はいつ見ても空のままだった。 なかなか帰ってこない地蔵菩薩に不安になり始めた美月の気を紛らわせようと、陽太は何かないかと庭を見渡した。ついさっき紫陽花

          【短編小説 丘の上に吹いた風 5】友の行方

          【短編小説 丘の上に吹いた風 4】交渉代理人

          4.交渉代理人 池の対岸へと続く道は晴れた日でもじめっと暗く、陽太はあたりをうかがいながらそろそろと進んだ。 丘の上から眺めていた頃はいつか行ってみたいと思っていたが、そうしてようやく辿り着く池の対岸は、いざ来てみると薄気味悪かった。 風になったのだからさっと通り抜ければいいと分かっていても、また今日もどうしても前に進めなくなった。 「これ、待ちなさい。陽太と美月じゃな?」 誰かに呼び止められ、陽太と美月はその場に凍りついた。 陽太は姿の見えない声の主を探してあたりを見回し

          【短編小説 丘の上に吹いた風 4】交渉代理人

          【短編小説 丘の上に吹いた風 3】再開

          3.再開 誰も手入れをしなくなっていたホスピスの庭には、冬の間に枯れた雑草がのしかかっていた。 庭の一角を区切って設えた菜園も、どこに何が植わっていたのか分からないほど荒れていたが、今日はそこに人影があった。 栄養士も兼任する看護師の薗は、あの日以来初めて庭に出ていた。 枯草を束ね、またあちこちから伸び始めた雑草を一つひとつ引き抜き、時折まとめて端に置いている。 ざくざくと地面を掘るような音に気づき、薗は頭を上げた。 「サンタ先生!」 慣れてはいたが、久々にニックネームで呼

          【短編小説 丘の上に吹いた風 3】再開

          【短編小説 丘の上に吹いた風 2】森の門番

          2.森の門番 一向に進展のない事件の担当になって以来、署にいても上司から何か報告はないのかとしょっちゅう聞かれることにうんざりして、大島は後任の会田を連れて丘の上のベンチで仕事をするようになっていた。そこが事件現場だったこともあり誰にも文句も言われないということもあったが、大島はいつの頃からか丘の上が気に入ってもいた。 「報告書、また訂正ですね。三枚の羽は消えたってことでいいですかね?」 「消えたというより紛失だな」 いざDNA鑑定という段になって、専門機関に預けていた白い

          【短編小説 丘の上に吹いた風 2】森の門番

          【短編小説 丘の上に吹いた風 1】定例会議

          1.定例会議 いつもの十二人掛けの円卓はこんなに小さかっただろうかと、議長のミカエルは並んで座る残りの三人をちらりと見た。天井のない議場は、見上げるとどこまでも空と雲が続き開放感があったはずだが、今日はやけに息苦しい。 「だからこうして回収してきたじゃないのよ!」 ガブリエルは椅子から立ち上がり、バンと円卓を叩いた。その拍子に円卓に置かれていた三枚の白い羽がふわふわと宙を舞った。 ミカエルはゆっくりと降りてくる羽を一枚ずつ摘まんで円卓に戻し、隣に座る書記のウリエルに視線を投

          【短編小説 丘の上に吹いた風 1】定例会議

          【短編小説 丘の上に吹いた風 プロローグ 】始まり

          プロローグ -始まり- 机の脇の引き出しにしまっておいたはずの天使の本を探し始めて、かれこれもう一時間になる。あちこちひっくり返して舞い上がったほこりが、窓から差し込む日差しにちらついた。 三田ははたと思い立ち、ドアを開けて談話スペースに出るとその脇の本棚に向かった。 「まさか・・・・・・」 一冊分開いていた隙間にぴたりと収まる天使の本があった。 三田は背筋が凍るのとは違う奇妙な感覚にとらわれた。この辺りじゃ狐か狸の仕業かと思うようなことが時々起こるんだと、あの日近所の住人

          【短編小説 丘の上に吹いた風 プロローグ 】始まり

          年末のご挨拶 2023 冬(追記あり)

          季節のご挨拶というよりは読み物集になっているのは、『はと子劇場』にと書いたものや、ちょこちょこ書きためたものを集めて投稿しているからです。 公園の池に足の生えおたまじゃくしが山ほどいましたが、夏が終わるや否やあっという間に姿を消しました。冬眠に供えていたのでしょうが、ずいぶん長いこと生やしていた尻尾をそんなに急に引っ込められるものなのかと驚きました。引っ込んだことにしてやむなく陸に上がったのだろうか、まあうまいことやったんだろうと池を見渡しましたが、答えてくれそうなカエル

          年末のご挨拶 2023 冬(追記あり)

          【ショートショート】諸人去りて/聖なる誓い

          クリスマスにちなんだショートショートを二作用意しました。 しみじみ話と笑える話を一つずつです。 小説の世界観づくりの一環として、『はと子劇場』は役に立っているのでしょうか、足を引っ張っているのでしょうか。後者のような気もしなくもないです。せっかくビルドしたワールドを自らぶち壊さぬよう、途中から有料にしました。 諸人去りて 薫子ちゃんと遊ぶのは決まって空き地だった。交代で歌うのが私達の遊びで、誰も来ない空き地はそれにぴったりの場所だった。学校で配布される『歌はともだち』とい

          有料
          500

          【ショートショート】諸人去りて/聖なる誓い