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夜行秘密

『夜行秘密』 / カツセマサヒコ

indigo la Endのアルバム『夜行秘密』をベースにカツセさんが書き下ろした小説。
このコラボだし"過去への後悔"と題された物語を読み終わる頃には感傷的になっているだろうなと安易に想像できたから
それなりに覚悟して読み始めたけど、
そんな私の構えなど優に超えて、
想定外の展開に途中から読むのが苦しかった。
カツセさんのことだしちょっと切ない恋愛小説だと思ってた(バカにしている訳では無い)
自分が恥ずかしくなるくらい
読み終わった頃には感傷的だとかおセンチだとかその程度のものではなくて
大きな喪失感にかられた。

1章読み終える度にその章のタイトルの曲を聴いて歌詞を読んでカツセさんはこう解釈したのか、と自分の歌詞の解釈と照らし合わせた。
indigoの曲は大好きだけどそのほとんどは
何回聴いても歌詞の意味全てを理解できるものはなくて、でも絵音さんの書いた歌詞の本当の意味を知ったら苦しくなるような気がしてたからそれでよかった。
カツセさん視点の解釈は、私の解釈とはかけ離れていて浅はかな感想だけど凄いなあと思ったし、やっぱり苦しくなった。

誰もが大小あれども
"あの時、ああしていれば"
"あの時、ああしなければ"
を抱えて生きている。
その時の分岐点に戻って自分が選ばなかった方の道を選んでいればと後悔するけど、
私は戻った所で同じ選択をしてしまうんだろうなと思う。
そうやって過去の自分を肯定しようとしているのかもしれないけど。

早く忘れたいと強く願いつつも一生忘れられないだろうと思っていたその時抱いた悲しみも、
気づいたら自分の中からは消えているし、
悲しいままに時間が過ぎていく事はなくて、
"それ"に気づい時に
"それ"がなんか悲しかったりして。
だから物語の中の人物たちが自分を見失うほどの感情をずっと抱えて生きていることに感心した。
そこまでの覚悟が私には無いから羨ましいとまでは思えなかったが。

小説を読み終えて喪失感でいっぱいになっているけど、また少し時間を置いてから読み返そうと思う。
話の細かい内容はもちろんだけど、今自分の中にある感情もきっと忘れちゃうだろうから。

敬具

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