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AFCアジア杯の傾向をFIFAデータから紐解く

2、3月忙しかったため時期を外してしまいましたが、1〜2月に行われたAFCアジアカップもFIFAデータが掲載されたため、こちらを使って大会を振り返ります。

データが掲載されているのはAFC公式サイトの以下のページ。

「FIFAデータ」については以前フットボリスタさんにて執筆。

noteでも以前執筆しました。

なぜAFCなのにFIFAデータが?という謎についての回答は持っていませんが、同じカタール開催ということと、おそらくFIFAとしては多くのデータを取得したいと考えているでしょうから、その辺りの思惑が一致したのでしょう。データの定義についてはほぼ同じと考えていますがスプリント数、ハイスピードラン数など、いくつかは定義が違うと推測できるほどの差異があったため、注意しながら扱うことにします。

最初に紹介したいのはFIFAデータ特有のインコンテスト比率です。FIFAはボール保持率を従来のAチーム:Bチームではなく、Aチーム:インコンテスト:Bチームで計算しています。どちらも確実にボールを保持しているとは言えないインプレー時間がここに計算されると言っていいでしょう。以降、分かりやすく表記するためにルーズボール率とします。W杯では10%未満に半分の試合が収まるような分布でしたがアジア杯では比率が高い傾向にあり、13-15%近辺の試合も多くありました。日本の試合も5試合中4試合がこの領域にいます。

ルーズボール率別の試合数

W杯に比べルーズボールが生まれやすい試合が多かったと言えますが、定義変更の可能性もあるので、他のデータも確認しましょう。ルーズボールが生まれやすいアクションをまとめました。

ルーズボールに関連しそうなアクションの1試合1チーム当たりの中央値

FIFAにはラインブレイクのデータが細かくありますが、ハイボール比率はラインブレイクとなるプレーが相手の頭上を狙った比率となります(レポート上はオーバーと記載)。まずこちらがW杯よりも高い比率となり、これに応じて空中戦の数も多くなっています。インタラプトは相手の攻撃を遮断するも保持権を得たとは限らない場合にカウントしているようです。相手のクロスやシュートをブロックした場合などが対象となると思われます。こちらの数値も高く、クリアランスの数値も高い傾向でした。これらの数値からもアジア杯はルーズボールが生まれやすい大会だったと言えるでしょう。紹介したデータが全部定義変更されていたらどうしようもないので、気にせず話を進めます。

FIFAのデータにはプレイフェーズという試合の状況を分類したデータがあり、以前の記事やフットボリスタさんの記事でもよく利用しています。このプレイフェーズのうち、トランジションフェーズ(攻→守+守→攻)とビルドアップフェーズで分布をすると大きな違いがあります。アジア杯は落ち着いてボールが動く時間が短く、攻守の切り替えが激しかったと言えるでしょう。

トランジションフェーズとビルドアップフェーズの1試合1チーム毎の散布図

ルーズボールが多いとなるとそのボールをどちらが拾うかという点が重要になります。最終成績別でデータを出すと、アジア杯では上位成績のチームほどルーズボール勝率が高いという傾向になりました。ここまで綺麗に出るのも珍しいです。

最終成績別で集計したルーズボール関連データの1試合1チーム当たりの中央値

今回のアジア杯ではトラッキングデータも掲載されましたのでこちらも見てみましょう。ただしなぜか1試合(イラクvsヨルダン)だけ掲載されませんでしたのでこちらの試合は除外します。

延長戦を除いた1試合1チーム当たりの総移動距離別試合数
1試合1チーム当たりの高強度割合(20km/h以上の距離÷総距離)別試合数
1試合1チーム当たりの中央値

総移動距離はW杯よりも長い数値になりました。このデータは様々な影響で生まれる数値だったので特定の何かが影響したとは言いづらいですが、W杯よりも動きの総量は多かったことになります。とはいえ、高強度(20km/h以上)の走行距離はたいして変わらず、総距離に対する割合ではW杯の方が高くなりました。トップスピードも全体的にはW杯の方が速い数値を出しており、フィジカル的にはやはりW杯の方が上と言えます。

フィジカルデータについてはゲキサカのyoutubeチャンネルでも紹介されているので興味のある方はどうぞ。


ベスト8という結果に終わった日本のデータを見てみましょう。下表は準々決勝までの試合範囲でルーズボール勝率の順にベスト16以上のチームを並べました。

ベスト16以上のチームのデータ

先に紹介したデータでも傾向が出ていましたが、優勝したカタールがルーズボール勝率も空中戦勝率もトップ。2位のヨルダンも高い数値となっています。どちらも試合内のルーズボール比率も高いので、多くのルーズボールが生まれる中でそのボールを奪ってきたことになります。勝率では日本もどちらかというと上位で、サマリーではイランと近い数値となっています。この傾向とリンクしない中で勝ち上がったのは韓国のみとなりました。

また、このデータを見る限り、FIFAのデータ上のルーズボール勝敗は多くが空中戦のようですね。

日本代表の試合別データ

サマリーではイランと近いデータでしたが、試合別で日本代表のデータを追うと、そのイラン戦で低い数値となり敗戦したことが分かります。国際大会の後半はノックアウト方式となるので、それまでがどんなに良くても1試合悪ければ終わりとなるのは言うまでもありません。実はW杯でも最後のクロアチア戦が低い数値となっていたことも併せて報告しておきます。

以前から言われていることではありますが、ダイレクトな攻撃に対しての弱さを見せた大会となりました。以前の記事で書いていますが、W杯の上位チームはどのような試合展開にも対応できる力を持っています。本当に勝ちに行くのであれば「綺麗ではない試合」にも対応しないといけません。

ちょうど五輪出場をかけてU-23のアジアカップが始まります。こちらもカタール開催なのでもしかしたらFIFAデータが出るかもしれませんね。その際は何かしら触れられればと思います。

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