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立憲民主党、躍進の理由

同党代表・枝野幸男氏の演説には民進党時代には考えられなかった大観衆が詰めかけただけでない。インターネット上においても、立憲民主党の公式アカウントは、Twitterで国政政党アカウント中トップの20万人近いフォロワーを獲得した。なぜ衆院選直前に結党した、たった15人の新党がここまで人気を博し、議席を3倍以上に増やす大躍進に至ったのか。要因を考察する。

①リベラルに純化した

旧民進党出身者で設立された立憲だが、その特徴のひとつに、議員の殆どが左派系である点が挙げられる。これまで左派有権者の受け皿とされてきた旧民進は、左派議員の他に前原誠司氏や細野豪志元環境相など右派とされる議員も多く在籍しており、改憲や安保法制をめぐって党として統一した主張を展開出来なかった。しかし立憲は前原氏や細野氏などの右派議員を希望の党へと排出し、枝野代表、長妻昭代表代行などの左派議員のみで結成されたため、純粋な左派政党として旧民進よりも左派有権者の支持を得ることに成功した。

②抽象論によるポピュリズム演説

枝野氏は演説で、抽象理念を説く分かりやすいキーワードを多用した。自民が演説時間の多くを外交問題や北朝鮮問題など、具体的な政治課題に割いた一方、立憲は演説時間の12%を結党理由に割いて党の思想理念を説明したほか、「草の根からの民主主義」などのキーワードを用いたのだ。戦後日本政治の大前提である民主主義それ自体の重要性に言及し、ボトムアップ政治への転換を呼びかけるなど、誰が聞いてもわかりやすい、ごく当たり前の抽象理念を強調することで、無党派層にも響きやすい演説を展開した 。

③際立ったインターネット戦略

立憲の戦略で今回最も際立ったのは、SNSを活用した巧みな広報戦術だ。まず、立憲は枝野氏や福山氏の演説を、「〇〇大作戦」と銘打って宣伝した。Twitter上では、過去の演説で多くの観衆が集まった写真を使用し、例えば「新宿大作戦」と銘打つことで、政治家の演説を、あたかもエンターテインメントショーかのようにSNS上で広めた。臣民型民主主義の日本においては、政治家の活動は市民から離れたところで行われているという感覚が強い。そのようななかで、演説にカジュアルな名前を付けて広く参加を募る戦略は、あたかも有権者ひとりひとりが選挙に参加しているかのような感覚を覚えさせる。一度演説に足を運んで支持者は、次の「〇〇大作戦」にも再び足を運ぶだろう。

また、有権者からのコメントに党公式アカウントが積極的にリアクションを取ったことも有権者との距離の近さを感じさせた。これまでの政党公式アカウントは党公式の発表を告知することに重きが置かれ、担当者の人間味を打ち出すことはほとんど無かった。しかし、立憲公式アカウントは時にフォロワーからの批判に対応したり、党に関するネットニュースを自らリツイート(拡散)することで、一般人のSNSアカウントに近いカジュアルさを演出した。その結果として、立憲は政党公式アカウントとしては異例の20万人というフォロワー数を獲得し、インターネットを頻繁に利用する若年層への発信力を強めた。

このように、立憲はイデオロギーの分かりやすさと、ポピュリズム演説、またインターネット戦略を駆使することで支持者を獲得し、熱狂を得た。枝野氏の演説では観衆が「枝野!枝野!」とコールする場面もみられ、これまでの演説風景では見られなかった熱の帯びようであった。

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