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野性のエンジン5. “特異点を撃て”

縁に偶然は無い。必ず後から構図が浮かび上がりそこに運命かミッションが現れる。また様々な情報やリスク、時代や趨勢を人間はキャッチして特異点(シンギュラーポイント)を観る。科学的に様々な意味があるが、企画者の場合それは一つのモデルがいくつかの分野領域に効果をもたらし波及して大きな波を起こす秘鍵となる。理事長に紹介されたスリランカ人のD氏がそうだった。
彼はスリランカの世界的紅茶商社の日本支社長だった。100年の伝統と世界155ヶ所の販売拠点を持つ紅茶の栽培、製茶、ブレンディング、ブランド化、販売の多国籍企業だ。彼は既に自分の名前をブランド名とする上質紅茶を菊のご紋つき(宮内庁許可)で日本の国会議事堂内売店で販売していた。
お茶生産者団体の専門委員だった私は彼に、『A社は日本国内で日本茶の買付をしないのか?』と聞いた。世界的な日本茶ブームに乗れない日本茶生産者達は、価格低迷と高齢化廃業であえいでいる。有名なお茶メーカーや飲料会社は海外の茶畑からの安い茶葉を製茶する為、国内茶生産者とは無縁。さらに千利休以来400 年、茶商と呼ばれる製茶業界の下部構造とされ、自分で新しい商流を作ろうとすれば、取引中止、村八分となる産地の現状がある。農水省が手を差し伸べていたが、助成金プログラムや政策に新機軸や魅力的ソリューションが無かった。野性のエンジンとしては、世界販売網を持つA社が国内茶生産者から直接、茶葉を買い取り彼らの世界中の紅茶ユーザー層に、新しい日本生産者&スリランカ人茶ブレンダー(世界最高レベル)による日本茶をオンデマンドで供給するモデルにワナワナしていた。D氏は軽く『できますよ。面白いですね。』と言い、数日後にスリランカ本社のゴーサインを得てしまった。ワナワナブルブルしながら私はポンチ絵を書き、農水省茶業グループにD氏と理事長を会わせた。
昭和ならば茶産地に国際公益センターの入れ物として、ビルを建てるところだが、海外商社による国内農畜産物の買付を禁止規制する法律は無いので、非常に面白いと若い担当者は話し、さらに国際茶公益デジタルプラットフォームの可能性についても、目を輝かした。それならばとエンジン全開、理事長人脈(ドラエモンかよ)で新進気鋭のデジタルプラットフォーム企業の若手イケメン社長を紹介され、新たなポンチ絵を描き出した。単にスリランカ国際紅茶商社が日本茶生産者からの製茶前の荒茶を買い付けるだけでなく、この際、JICA(国際協力機構)の無償資金協力と実習生受け入れプラグラムを活用したスリランカ人の紅茶栽培に熟練した若者たちを国内茶産地に受け入れて日本茶栽培者層を増やしかつ移住してもらう。おまけに増産された茶葉はスリランカ国際茶商社が引き受けて世界輸出する。非常に合理的な産地再生国際化による地方創生モデル。名付けて“第2の天孫降臨”。だがまだこの特異点には深みがあった。仏教だ。スリランカ仏教は日本仏教よりはるかに釈尊の根本仏教に近く、ヨーガ・瞑想技法は大脳生理学や生化学によるエビデンスを持ち、アメリカ仏教としてチベット仏教と双璧をなす。茶生産者であり仏教徒のスリランカ人移民団を、地方創生の器として日本伝統仏教の新しい檀家として受け入れるスキームは成立可能か?既にスリランカ仏教は蘭華寺として日本信者達を獲得して、マインドフルネス瞑想は宗教の範疇を越えて普及し始めている。日本各地に根を張る、総本山→本山→寺院網→各地域檀家組織は、急激に崩壊消滅しつつあるが、新しい血を流し込むことで豊かな精神的土壌として移民の方々を育み新しい日本人を創造可能と思われる。立っているものはなんでも使えとやら、日本伝統仏教とスリランカ仏教のマッチングの下部構造がお茶なのだ。ワナワナぶるぶる。


日本の特異点


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