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発酵あんこに関する考察など

丹波で麹屋を始める準備をすすめてます本間です。

諸般の事情があって、発酵あんこ(発酵あずき)に関する試作をしていました。

目標とするものの半分にも到達できてませんが、

・ひとまずここまでの軌跡を残しておく
・自分の中の思考の整理

以上2点を主目的としてnoteにまとめておこうかと思いつらつらと指を弾いております。


さて、発酵あんことはまずなにか、ということですが、

要は茹でた小豆と米麹とを混ぜて甘味を出したあんこ様の食べ物、

ということになりますでしょうか。


米麹とゆであずきを合わせて60度程度で糖化発酵(酵素分解)をすすめることで
米麹の持つでんぷん質及び小豆に含まれるでんぷん質を糖化して糖に変えることで甘みを出します。


一般的には糖度30-40程度になっているケースが多いでしょうか。
もちろん、濃度によりますが。

僕の個人的な感覚としては、
あんこ並みの水の詰め方で糖度30-40というのは非常に低いなーと思っていました。

というのも、甘酒で同程度の濃度のものをつくれば糖度60度近いものがつくれるはずだからです。


もちろん、小豆は米よりもでんぷん自体の含有量が少ないため、
米よりも甘みが出ないのは当然なのですが、

いやしかし、小豆は豆の中でも特にでんぷん質が多い豆です。

そのでんぷんが十分に分解されれば糖度40以上は目指せる、と考えていました。


が、実際にはそうなっていません。


その理由を色々と調べる中で、小豆の(大豆を除く主な豆類)のでんぷん質の特殊な構造に原因がある、ということにたどり着きました。


あんこを食べればわかると思うのですが、ザラザラ、というかサラサラとした舌触りがあると思います。

これがそのでんぷん質の正体で、"でんぷん粒子""あん粒子"などと言われているものということが分かりました。

これはでんぷん質を取り囲むようにタンパク質が周囲を覆ってしまうことで出来ており、
このタンパク質が疎水性(水を寄せ付けない)性質をもっているため、

そのタンパク質内に含まれるでんぷん質を分解できない、ということだったのでした。

このでんぷん質の含有量がなかなか無視できないものになっていて、

これを取り出すには最終的には物理的に破壊するしかないだろう、という結論に至りました。


基本のアプローチとしては熱処理前の段階で粉砕するか、茹でた後に粉砕するかの二択になろうかと思います。

実はこの前者の方には(特殊な粉砕技術であるというものの)井村屋さんが特許を取られている上に、家庭の設備では不可能であろうという結論に至りました。

なお、小豆粉を使用するというアプローチは手立てとして残っているので、それは追って検証していきます。

さて、話が逸れましたが、後者のアプローチ、茹でたあとに粉砕し、あん粒子を物理的に破壊して、
閉じ込められたでんぷん質を取り出そうというものが今回の検証のアプローチです。

これによって、もっと甘味の強い発酵あんこをつくることが可能かを検証しました。


実は、これに似たような取り組みを研究機関でされている方は既におられて、
茹でたあとの物理的破壊であん粒子を破壊することで小豆ゲルをつくることに成功した事例を見つけることができました。


これを家庭レベルで実現可能か、ということを確かめました。


まず、小豆の茹で方を二種類、通常の鍋と圧力鍋の二種類でつくり、

片方は裏ごしだけを、
もう片方は家庭用のブレンダーを使用し粉砕を

それぞれ行いました。

その後に麹の割合など、調整して最終的に20種類程度試作し、
最低限人に食べさせられようかというレベルに到達できたものが2種類でした。


正直、自分で十分に美味しいと思えるものにはたどり着けませんでした。


問題点は大きく3つ、

1.甘みが十分でないこと
2.酸味が発生したこと
3.僅かに苦味えぐ味が発生したこと

この3点でした。

特に1.が致命的で、家庭用のブレンダーで粒子構造を破壊するのはたいへん難しかろうという結論に至りました。

とはいえ、連続稼働を繰り返すことで不可能ではなさそうだということも感じました。

基本的にはブレンダーを使い続け、破壊し続けること、
また、麹自身が自己消化されて甘みになるので、麹の配合割合を増やす、ということも甘みに対する解決策にもなろうかと思います。

2.に関しては乳酸菌の繁殖が感じられました。
これについては浸透圧と水分量の問題に依存していそうだなと感じます。
つまり、濃度をもっと高めることでそれは防げるだろうかと考えています。
しかし酸味を減らす努力は割と重要かなとも感じています。


3点目、苦味に関してですが、
当初、小豆由来のサポニンによる苦味かなと考えていたのですが、
発酵あんこの加工(発酵)前よりあとの方が確実に苦味が増えていたので、

これはおそらく、小豆のタンパク質を分解したアミノ酸に由来するニガエグみなのではないかと仮説を立てています。
なので改善アプローチとしては、麹の作り方そのものを見直すことになろうかと思います。

タンパク質の分解酵素をつくらないようにさせることで、苦味を軽減させようというものです。

以上、それぞれで一応の改善アプローチは見えているので、あと4回くらい繰り返せばそれなりに満足行くものが出来てくれるんじゃないかな…
などと考えています。


ここまでがあん粒子破壊による小豆由来のでんぷん質による甘みを出した発酵あんこ(こしあん)

というものの方針ですが、

粒を残したあんに対しては全く別のアプローチを取ることになります。

基本的には↑のこしあんと、麹由来の甘味で甘く煮た小豆とを混ぜ合わせるのが一番妥当性の高い方針ではないかなとアタリをつけています。


さて、僕の思考の整理という側面が強かったので見苦しいところが多々あっただろうと思います。すみません。
そしてお付き合いいただきありがとうございます。


引き続き発酵あんこについてはもっと良いものがつくれないか、試作を定期的に繰り返していこうと思ってますので、また進捗があれば書いていこうかと思います。

では、また。

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