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2023年8月読書は個性派7冊~三島由紀夫からヒロスエまで~

月末は読書記録の投稿、今月は7冊(で止めておく)。
例によって多様性豊か?である。


①命売ります(三島由紀夫)

庭に咲く花とともに

主人公、山田羽仁男は、新聞の活字がゴキブリになって逃げてしまったことをきっかけに自殺...未遂に終わるも、自分の命に価値はないと悟り「命売ります」と新聞広告を出す(今だとSNSか...)
著者が亡くなる2年前に書かれたエンターテインメント性の高い怪作、純文学作品ではないこの小説の中で本音の「死生観」が語られている…と思ったり思わなかったり

依頼主①老人 秘密組織のボスに囲われた妻を殺してくれ
依頼主②図書館事務員 自殺誘導薬の実験台になってくれ
依頼主③少年 病気の母を慰めてやってくれ...母は吸血鬼
依頼主④謎の男2人組 B国大使館に潜入、毒のないニンジンを見分け齧り電報解読のキイを握れ
依頼主⑤玲子 命の売り合い?

著書概要、、、奇想天外とはこのことか

以前購読した「三島由紀夫のレター教室」と同様に、純文学とは異質な世界観で綴られる展開、時代背景のために今となっては不適切な表現があったり古さを感じる部分もあるが、それを差し引いても奇想天外なエンタメ作品として十分に楽しめる。また、三島由紀夫の表現力はここでもセンスが光る。
こんな文章を自然に書いてみたい。

新しい歯磨きを箱から出して、張り切ったチューブの光沢に新鮮さを感じるようなもので、何かそれがさわやかな朝を約束してくれるように思われたのである

死に追われていると感じていた間だけ、あの恐怖は目をそむけてもそむけても映る、地平線上のふしぎな黒い巨大な煙突のように聳え立っていた

著書より引用


②プロカウンセラーの共感の技術(杉原保史)

星乃珈琲にて

以前「キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門」を読んで、著者の「共感力」に関心を持って他の著作を探し、たどり着いた一冊。

カウンセリング業界でいう共感とは、人と人とが関わり合い、互いに影響しあうプロセスと定義する。
今まで自分は受容したことでほぼ共感ができていたように勘違いしていたかもしれない。共感は今まで思っていたよりも深い概念で高度な技術である。
そして技術なき共感は相談者に心を開いてもらえないし、失礼である。
でもまずは「自分は共感ができていない」ということを素直に認め受け入れる、そして穏やかに耳と心を相手に傾ける...今の自分と照らし合わせるとこんな感じだろうか。
やさしい語り口ながらもカウンセラーに求める姿勢は厳しく、真剣に相談者に向き合う、そんな筆者の人間性にまで触れられるような気がした。


③キャリアの悩みを解決する13のシンプルな方法 キャリア・ワークアウト(田中研之輔)

長女の彼氏から貰ったお土産とともに

キャリアコンサルタントを志す以前から接していた「プロティアン・キャリア」、その権威である田中研之輔教授による実践書。
キャリアの悩みや不安を抱える34歳の会社員・佐藤さんが「キャリア・ワークアウト」を通してキャリア自律していく成長ストーリーが綴られる。
主人公が34歳という設定の通り、基本的には若い人向けと思うが、あらためて中年のキャリアにもがく自分の刺激にもなった。
そう、いつからでも何歳からでもキャリアはつくれる、から。

タナケン先生のメッセージが深く胸に突き刺さる

働くとは、悦びであり、キャリアとは生きざまである


④ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2(ブレイディみかこ)

スタバなう

Part1を読み半年以上が経過、ようやく続編を読め「地べたのイギリス」に住む親子の成長物語を見届けることができた。
貧困・差別・ジェンダー問題等、世界の縮図のような環境で筆者の息子はたくましく力強く大人の階段を育っていく。

「ライフってそんなものでしょ、後悔する日もあったり後悔しない日もあったり、その繰り返しが続いていくことじゃない?」
13歳の少年のライフは岩崎恭子級に動いているのだ。

⑤ヒロスエの思考地図 しあわせのかたち(広末涼子)

実家の母より送られてきたアイスとともに

南国土佐に生まれ育ち、県民性?そのままに楽観的で祭り好き、明朗活発に育った筆者は高校・大学時代から哲学書を持ち歩いていた
哲学者の言葉を引用しながら、自分の思いがヒロスエ・メッセージとして綴られる。
語られる一言一言に妙に説得力を感じてしまうのは気のせいだろうか..

☑タレス→困難なことは自分を知ること、自分の未知の部分に目を向ける
☑ヤスパース→挫折は人を大きくする、失敗は人を強くする、マイナスをプラスにできるかはその人次第
☑ヴァレリー→言われた悪口は許す、に近づくと自分も楽しい
☑セネカ→自分らしく自然体で生きていいんだよ
☑サンブラーノ→不安を肥しにして成長していく
☑カント→女性は男性よ現実的、未来を守ることに重きを置く
☑カーロ→女性が去る時は戻らない、振り返らない
 愛し合うためには愛する、人を愛する勇気と自分の愛する努力を高める
☑フロム→広末涼子40歳、愛することを知るのはまだまだこれから
☑ニーチェ→愛することができない時は自分を大事にする、本当の意味で相手を大事にする=通り過ぎること
☑サガン→愛することは好きだとか恋してるでは手の届かない信頼と理解がある、だから見逃すこと=余計なことをしない振る舞い
☑アラン→家族は裏切らない、この幸福は決して私を裏切らない
☑ヴェイユ→不幸は無駄にならない、しんどい時は人生において重要な時
☑三木清→自分の怒りをコントロールできる人間性、相手の怒りを包み込める広い心を持つ
☑キルケゴール→出会い・経験で人は死ぬまで変わり続ける、謎だから人は面白い
☑パスカル→悩みすぎず、考えすぎず、日々の小さな幸せを感じることで私は生きていける

ちなみに興味本位で読んだことは事実だが、広末涼子に関して報じられていたことに一切興味はない。(広末さんに興味がないというよりは、芸能人のプライベートをここまで報じる意図がわからない)


⑥名医が教える飲酒の科学(兼石かおり)

晩酌やめたのにお中元でビールが届く・・・💦

酒飲みは「酒は百薬の長」と科学的に何の根拠もない言葉を信じて飲む。
コロナ禍の家飲みのために5ℓの業務用ウイスキーを買うほどの酒飲みの筆者が名医へのインタビューを通して科学的・客観的に酒が人間の体に与える影響を調査する。酒は嗜好品ではなく薬物と理解すべし、というフレーズが印象的であった。。。
さあ、正しい知識と理解を持って命がけで酒を飲み、楽しもう

ということなのだが・・・

実は本書を読む前から、毎日続けていた晩酌を週1~2日程度に変えていた。「酒が弱くなってきた」実感があり、いざアルコール摂取を減らしてみたのが実情であった。結果、何のストレスもなく過ごせたことで今は「今までなぜ毎日飲んでいたんだろう」と思うほどである。
どこか「酒飲み自慢」していた自分がいたような気がする。
今となっては恥ずかしく、バカバカしい限りである。

⑦ひとりずもう(さくらももこ)

ハーゲンダッツのアイスをお供に

「ちびまる子ちゃん」で知られる漫画家の自伝エッセイ。X(Twitter)で紹介されている投稿を見て興味を持ち、図書館で発見。
変化を嫌い男子を避けオシャレにも無縁、妄想に浸りゆるゆるの生活を送る筆者が妄想する中学・高校時代。
そんな筆者が「漫画家になる」夢に向かい覚悟を決める転機を迎え驚く。
「シュールな漫画家」のイメージがあったが、実は夢を叶える情熱を持ち、自分の生きる道(戦略)を冷静に考えることのできるマーケターだったのだ。
8月15日で没後5年、生きておられれば同い年だった彼女に今さらながら思いを馳せる。


私の2023年読書記録を最後まで読んでいただき感謝します。
今月はすべて図書館で借りた本になりました。
共感の技術などはキャリアコンサルタントとして研鑽を積むためののバイブルとして購入した方がいいかもしれないと思いつつ、こうして借りて読むところから始めた方が、買ってから「思ってたとの違った」と思わなくて済むかとも思いました。
9月は前半で資格試験を終了するので、ますます読書の質も量も充実させていきたいと思っています。
なぜなら、私にとって「読書は楽しい」からです。


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