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イッパシになるために大切なもの

散歩の途中、国道脇の歩道の並木の陰で、元々何色だったのか分からない程、汗と垢と埃で全身灰色の爺さんが座り込んで缶ビールを片手に弁当をつまんでいた。
汗と垢と埃と日焼けで灰色に汚れた顔の真中に鋭い目がギラギラと光る。この爺さんが生きてきた歴史がその眼差しに表れているかのようで、傍らを通り過ぎていくジャージ姿の中学生たちを近づけない程の圧力を体から漲らせながら、黙々とビールをあおり、弁当をつまみ、広げた股間に開きっぱなしのジッパーから覗くイチモツまでもが威圧感を放っていた。
自転車散歩の途中でこの爺さんをときどき見かける。どう見てもホームレスにしか見えないが、ここまで生きてきた爺さんのプライドというか、意地というか、そういう気配をいつも漂わせている。
こういう光景は珍しいことではない。公園や街中で見かけるホームレス風のオッサンたちの多くがそうであるように見える。

もうひとつ
空き缶を一杯に詰め込んだゴミ袋を荷台にくくりつけた自転車を押して歩く年老いたホームレスを、ビニール袋を詰めたタモ網を後生大事に持ち、顔色をうかがいながら後ろからチョコチョコと付いていく若いホームレス。
春先から夏にかけてこの2人の姿をよく見かけたのだが最近見なくなった。西風の吹き始めた運河沿いの並木道。
久しぶりに姿を現したのは若いホームレスひとり。
相変わらず所々擦り切れ黄ばんだ長袖のTシャツに短パン、左手にビニール袋を詰め込んだタモ網を左手に持ち、西陽を受けてTシャツ越しに男の筋肉質の体形が映し出されている。くわえ煙草で硬く丸まった桜の葉が舞い落ちる道路の真ん中を闊歩するこの若いホームレスの姿がなんだか逞しく、自信に満ちているように見えた。
う~ん、これはイッパシのホームレスとして自立したってことなのか。
私もイッパシの偏屈爺として自立せにゃあいかんな。

イッパシは大事だな、ヤッパシ。


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