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家が整うと、心が整う。「収納の本質」−前編

秋になり、なんとなく年末を意識し始める頃。なるべく早めに終わらせたいのが大掃除です。普段できないところまで掃除し、要らないものを捨て、すっきりと心を整えたいと毎年思いますが、皆さんはいかがでしょうか。
「収納がきちんとできると、心に良い作用がある」。
そう語るのは、収納をしっかり備えた家づくりやリフォームを得意とし、収納のコンサルティングと家具制作も行う、住宅建築家の更谷さん。収納で心が整う理由について聞きました。

片付けが生まれつき苦手な人はいない 

−− 更谷さんが、お客様に行っている「収納コンサルティング(以下:収納コンサル)」が好評だそうですね。

更谷 そうなんです。収納コンサルは、うちにリフォームを注文してくださった方には、基本的に全員に受けてもらっている、収納のシステムをお客様と一緒に構築するサービスです。片付けは、その時片づいても、時間が経つとまた散らかってしまうということも多いのですが、その場限りではなく、ずっと片付いた状態をキープできるように一緒にものの住所を決めていきます。

更谷えみ(さらたに・えみ)/1971年愛知県生まれ。住宅建築家、一級建築士、インテリアコーディネーター。2007年にCAFE&建築工房を住宅建築家澤田晃さんと立ち上げる。地元愛知県の木材と職人の知恵と技を活かし、収納をしっかり備えた設計・家具製作・リフォームを得意とし、完成後の収納コンサルもしている。

−− 収納コンサルの流れを教えてください。

更谷 まず片付けたい場所の寸法や物の把握、人の動き方のヒアリングをします。現状で使える家具があれば、本当に必要な家具だけを置き、不要な家具を処分します。そのあと、全ての物を出し、捨てるものがあれば捨て、動線に沿って並べていきます。物の並べ方を変えるだけで「使いやすくなった!」と目から鱗が落ちた思いで感激するお客様が多いです。新たな棚が必要であれば、うちでオリジナルで制作することもあります。

−− 工事をしなくても、使いやすくなるなんて嬉しいですね。

更谷 そうですね。いい収納は、工事をしなくても誰でも作ることができます。残念ながら使っている収納のシステムが良くない場合が多いので、片付けられない自分を責める必要はありません。片付けが生まれつき苦手な人はいないのです。

−− なぜ収納コンサルを始めたのですか?

更谷 今でこそ収納コンサルをしていますが、私も子供の頃から片付けは苦手でした。ですが、中学生のとき、友達の部屋を片付ける機会があり、それがとても気持ちよかったのです。自分の部屋の片付けはどうしたらいいかわからないけど、他人の部屋なら客観的に見ることができるのだなと実感しました。

仕事で住宅を設計していくうちに、収納も設計ができると気づき、2010年からリフォームを依頼してくれたお客様に、収納コンサルを始めました。

−− 収納コンサルを受けた後、お客様の反応はどうですか?

家が整ったら、心も整った

更谷 とてもいいです。収納コンサルをさせていただいた、あるお客様の台所の写真です。収納コンサル前後で、どう変わったかわかりますか?

−− 同じ場所とは思えないくらい、気持ちよく片付いていますね。驚きました。新たな棚が二段ありますね。
 
更谷 棚と引き出しと台を新たに用意しました。お客様からの要望は、好きな絵や小物を飾り、神棚のようなスペースを作りたいという内容でした。小物を飾る棚、収納する引き出し、その上に料理道具が置ける台を制作しました。大量のものを仕分けし、一つ一つ納めるべき場所に納めていきました。

−−まるで神社のように澄んだ空間に生まれ変わりましたね。この場所なら、道具も使いやすそうで、絵もしっかり飾れていますね。

更谷 そうなんです。お客様からは「物の置き場所が決まると、本当に使いやすくて片付けやすい。魔法をかけてもらったみたい!」と感想をいただきました。

この日は夏至が近かったのですが、後日同じお客様からこんなメッセージをいただきました。

「夏至の朝を無事にお迎えできる歓び、今年はひとしおです。
この台所に立って、新たな1日が始まる幸せを感じています」

更谷 収納コンサルを通じて、こんな幸せな気持ちを共有できることが、私も幸せです。家が整うと、心が整うんですよね。

(後編へつづく)


収納コンサル画像 / 遊眠堂
取材・文・写真 / 原井けいこ

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