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本当の事を書くから

 シファ病院への爆撃の模様が報道されると、
 配偶者は胸を押さえてうずくまり、
 部屋の隅でうなり声を上げるのみとなってしまう。

 そうした人間である事は、
 結婚以前から知っているんだが。

 実用射撃の元選手であったにも関わらず、
 いや、むしろ元選手であったが故に、
 非戦闘員のとりわけ子供に、
 銃口や爆撃が向けられる現実が耐えられない。

 申し訳無いんだが、
 全ては運なんだよ。

 私たちは無事に過ごせている今日一日に、
 有り難く、
 本当に心から有り難く、
 感謝するしかないよ。

 そして同時に覚悟しておくんだ。

 次に革命が起こるとしたら、
 倒されるのは私たちの側だと。

 この国なんかはとっくの昔に、
 自分たちも含めて、
 罰が当たる側に回ってしまっているんだと。
 先祖からの業に、
 親世代の無策も祟っている事は疑いないが、

 事実としてそこを認めた上で、
 どう動くか、つまり、
 どう生きるかが考え切れる。

 そう語りかけたらとりあえず立ち上がって、
 風呂に入りに行ってくれたわけだ。
 シャワーを浴びながらやはりうなってはいたが。

 本当の事は、
 時に当事者を容赦なく傷つけるし、

 真実を見詰めたくない人たちからは、
 時に結構な正当性を訴えられて嫌われてしまうが、

 何に対し、
 どういった事を口に出せば良いのかも分からず、
 今苦しんでいる人たちに対してだけは、

 はっきりした文言に代えられた分の、
 気持ちは楽にさせてあげられるので、

 私は本当の事を書くから。

 ってか今現在の状況を見て、
 不安に陥らない方が異常だろ?

 本当は一人一人が、
 自分の身の内からの言葉を探し出せる事が、
 何よりだと思うけどな。

 残念ながらこの国は、
 そうした自主練を積み重ね切れるほどの、
 精神力を鍛える機会を、
 一般的には与えられていない。

 所詮受け身でいる間の問題点ではあるが。


18:30追記。しかし自分に対しても重要事項。
  「本当の事」=現実とは考えていない。
  現実は常に無慈悲かつ残酷なもので、
  感動するに値しない。

  一人一人の血肉を通したところに、
  「本当」があると認識している。

何かしら心に残りましたらお願いします。頂いたサポートは切実に、私と配偶者の生活費の足しになります!