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学参の紙面デザイン

デザインとは

こんにちは。
今回は紙面デザインの話です。

本づくりにおいて「デザイン」と言うとき,表紙カバーのデザインのことを指すと思っていましたが,必ずしもそうではありません。

本のメイン部分である本文にも,デザインが必要になります。

学参の原稿はワードで作成しますが,それをそのまま印刷して本にするわけではありません。

多くの場合は,ワード原稿を組版作業者がデザインフォーマットを使ってインデザインで組みます。

そのため,組むためのフォーマット(デザインフォーマット)をまず最初に確定させなければなりません。
これは多くの場合,デザイナーさんの仕事となります。

簡易的でシンプルなデザインであれば,組版会社が見本組としてそのままデザインを作成することもあります。
もしくはいっそインデザインも使わず,ワードをそのまま印刷の版下データとして使用することも可能です。その場合は,予算を各段に抑えることができますが,見栄えではどうしてもインデザインには劣ってしまいます。

そのため,学参では以下の2パターンが多いです。

① 色は1~2Cで,シンプルで簡素なデザインを前提に,組版会社にデザインと組版の両方をまとめて依頼する。

② 色はフルカラーで,ヘッドや見出しや各アイコンなど,デザインのスキルを要する場合には,デザイナーにデザインフォーマットの作成を依頼し,フォーマットが完成したらそれを組版会社に渡して全ページを組版してもらう。

デザインを依頼する

デザインを組版会社にお願いするのか,デザイナーにお願いするのか。
いずれにしても,「ここはこうする」「こんなイメージで」「文字サイズはこのくらいで」などの要望は,依頼する側の編集者の仕事になります。

このような要望をまとめる作業を,【デザイン指定をする】【基本仕様書を作る】と言っています。

具体的に,どんな指定をするのか。

以下をご覧ください。
中学3年生用の英語の学参を想定したワード原稿(2ページ分)です。
B5判フルカラーです。

↑ワードで作成した原稿(左ページ)。漫画の部分はイラストレーターに発注するためのラフを手書きで描いて,スキャンしてワード内に貼っている。色文字にしたいところなどは,組版またはデザイナーが組むときにわかるように,なるべくワード原稿内で色文字にするが,それ以外の部分はできるだけベタ打ちで作成するのがよい。(ワードで見栄えよくしようとしてデザインしてしまうと情報が多すぎて,かえって組版しづらくなるため)
↑ワードで作成した原稿(右ページ)。練習問題のような構成のページは,使用するデザインが固まれば,余計な情報はワード上に必要ないので,できるだけシンプルな原稿で作成する。


このような感じでワード原稿を作成します。
これをデザイン依頼する場合に,どのようにデザイン指定するか。
やり方は編集者によって様々ですが,多くの場合はこのワード原稿の上に,赤字を入れるようにデザイン指定します。

以下がデザイン指定のサンプルです。

あれこれ赤ペンで書き込んでいますが,デザイン指定するべき最低限の要素は以下の点です。

① 判面サイズを指定する
 * 左右は〇mm(〇文字分)か,天地は〇mm(〇行分)にか
 * 基本となる文字の大きさやフォントを決める

② 余白(小口・喉)のサイズに要望があれば記載する
 * 判面が決まれば,あとの余白はデザイナーにバランスをとってもらってもよい

③ どの部分をデザインしてほしいのかを伝える
 * 見出しやヘッド,アイコン化してほしいところなど
 * 見出しやヘッドが数種類ある場合は,どの見出しをどれくらい目立たせたいかを他と比較して説明する

④ イラストなどが入る場合は,そのサイズを指定する
 * 可変サイズなのか,固定サイズなのか

⑤ そのほか,基本要素と異なる例外的な部分の指定をする  
 * 和訳部分は基本級数から2級下げる,など

上記の5点が,デザインを作成する作業者が知りたい主たる情報になるので,依頼する際にはなるべくこの5点を指定します。

時には指定せずにお任せで

具体的な指定をあえてしない場合には,「〇〇はお任せで」などと記載します。

デザイナーはプロなので,生半可に編集者が指定するよりも,「これは〇〇なイメージで,具体的なフォントやサイズはお任せします」と依頼したほうが,より見栄えの良いものが上がってくる場合があります。

例えば上のデザイン指定ですが,小口と喉の余白の指定まで具体的に記載しており,それぞれ13mmとあります。

ですが13mmの余白は,結構狭いです。

特に喉の余白は要注意です。
並製本である程度のページ数がある書籍になると,喉側の余白をしっかりとってあげないと,文字が見えなくなってしまうことがあります。

13mmの指定とありますが,もしこれをデザイナーにお任せで依頼した場合,おそらく20mmくらいは確保してくるかもしれません。(そうすると自動的に小口の余白は-7mmとなり,結果的に小口は6mmの余白となりますが,かなり狭くなってしまい,もし小口にツメを入れようものなら,非現実的なデザインとなってしまいます。よって,その場合は判面サイズを見直さなければなりません)

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回アップしているものはダミー原稿なので,実際にはデザインを作成していません。そのため,完成品(インデザインで組んだもの)がないのが残念なのですが,自分がデザイン指定したものがデザイナーによってクールに仕上がってきたときはテンション爆上がりです。

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