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74.身元保証

少子高齢化によって高齢者の単身世帯が増加していることから、主に一人暮らしの高齢者を対象にした身元保証や日常生活支援、死後事務などに関するサービスを提供する事業が注目されています。

身元保証サポート事業者です。
 
認知症や知的障害の人の財産管理などを行う成年後見制度や心身的なものを支援する介護保険制度といった既存の制度では補い切れない部分のニーズを引き受ける形で身元保証サポート事業者は存在しています。
 
需要は、これからもっともっと高まっていくと思われます。

今の時代は、老後におこる諸問題を若い世代が解決してくれるからと言って、本人が直視しないでも済む時代ではありません。

できるだけ早い段階で自分で対処しておけるような仕組を作っておかないと、若い人たちがひたすら高齢者の問題解決に奔走するだけの社会になってしまうと考えられます。
 
身元保証は年齢関係なく、様々な場面で求められることがあります。
 
家を借りる時、就職する時、入院する時、高齢者施設に入居する時などです。
 
身元保証人には、広義の身元保証人(債務保証、緊急時や医療機関・施設との連絡・調整など)、身元保証法の身元保証人(雇用関係損害補償、身元の証明)、身元引受人(亡くなった時の御遺体の引き取りなど)、連帯保証人(民法の賃貸借契約等債務保証)などがありますが、明確な定義はありません。
 
契約する相手が求める役割によって、その意味は異なってきます。
 
高齢者施設などとの契約で身元引受人と記載されていても、その内容には連帯保証が含まれている場合もあります。
 
身元保証のルーツは、江戸時代に奉公人の逃亡防止や損害賠償の担保の為に身元保証人をつけたことが始まりと言われています。
 
その後は、明治、大正時代になると就職採用時の債務保証として身元保証を求めることが一般化しました。
 
連帯保証人は債務者と同等の責任を負うことになり、特にその責任が重く、連帯保証人が自己破産するケースも多くありました。
 
そこで2017年の民法改正で個人が連帯保証人になる場合は極度額(債務の合計額の限度)を定めることが義務化されました。
 
限度額の定めがない契約は無効になります。
 
なので、高齢者施設に入居する場合や身元保証人になる場合は、契約内容がどうなっているのか…極度額が幾らかなどの確認をすることが重要になります。
 
昨年の日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は29.1%で過去最高を更新しました。
 
今後も上昇し続けて、2040年には35.3%になると見込まれています。
 
2040年には高齢者世帯が総世帯の3割になり、高齢者世帯の半数が単身世帯になると予測されています。
 
今の段階で既に、一人暮らしの高齢者本人からは“入院手続きをしてくれる人がいない”、“入院中に必要な物などを持ってきてれる人がいない”、“何かあった時に助けてくれる人がいない”などの不安を抱えた相談が増えています。
 
それと同時に、ケアマネージャーやヘルパーの仕事をしている人も、利用者が緊急搬送された時の入院の書類手続きをせざるを得ない状況が多くなっています。
 
入院時や入居時に身元保証人を求める病院や高齢者施設は全体の90%以上あると言われています。
 
入院や入居に際して身元保証人がいないことのみを理由に拒否することに関しては厚生労働省から通達を出ているようですが、慣習として…、そして、入院や入居に関わる滞納、支払不能、本人の責任能力が衰えた場合における身元保護や財産管理に関するリスクを回避する上で身元保証人を求めるケースが多く存在しています。
 
高齢者などに身元保証などのサービスを提供するサポート事業は、単身の高齢者の増加で需要が高まる一方で直接監督する省庁や法律がなく、問題視され始めています。
 
民間の身元保証サポート事業は、身寄りのない高齢者などを対象に主に入院や入所時の債務保証や緊急時の連絡対応といった身元保証サービスの他、買い物支援や病院の付き添いといった日常生活支援サービス、それに亡くなった後の葬儀や遺品の処分などの死後事務サービスを行っています。
 
このような事業者は、現段階で400社以上あるようです。
 
成年後見制度や介護保険などで対応できないことを引き受けているのが現状です。
 
家族を頼れない人が増える中で広がっている“家族代行”のようなサービスですが、ルールや定義がないものを各事業者が独自にサービスを作り上げている段階です。
 
利用者側から見て複雑で選びにくいだけではなく、一部では金の流用など経営面の問題についての指摘もあり、これまでの医療や介護がそうだったように、事業者の善意頼みでは限界があります。
 
総務省は、厚生労働省や消費者庁、法務省に対して、ガイドラインの策定などの改善に向けたルール化を検討するように通知しました。

身元保証サポート事業は、身元保証人を代行するだけに思えますが、実際には身元保証人として名前を書くだけではなく、家族が行うような様々なサポートを生前から死後に渡って提供しています。

家族の規模が小さくなり、極端な場合は誰も頼る人がない場合が増えてきていることから需要はどんどん高まっています。

血縁や地縁のある人が少しずつ高齢者の活動を肩代わりできていた時代は既に終わりました。

心身的なケアなどは介護保険を利用して、金銭管理は成年後見制度の利用や委託契約などによって他者に支援を求めることは可能です。

それ以外に老後の生活に欠けているものを、最近になって有償で民間の身元保証サポート事業が行っています。

家族代わりの役割を果たす身元保証事業の内容は、そのまま、”現在の…そしてこれからの高齢者の老後に欠けているもの”と言うことができます。

生活する上でこれらのことを全て達成するのは、“誰に何をしてもらう必要があるのか”…を明確にした上で、契約締結や制度の利用申請を行って初めて可能になります。

これからの時代に高齢期の課題を解決する為には、手助けをしたり、精神的な支えになる…といった地域や身内の繋がりだけではなく、その人に関する情報を関係機関が正しく共有して、必要な時に必要なだけの支援を提供できるような仕組が求められます。


写真はいつの日か…中島公園で撮影したものです。


 
 

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