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09.少子高齢化と地域共生社会

2023年4月1日時点で、日本の子どもの数は、前年より30万人少ない1435万人でした。
 
1982年から42年連続で減少して、過去最少を更新しています。
 
総人口に占める子ども(0~15歳)の比率は前年より0.2ポイント低い11.5%です。
 
国連のデータによると、人口が4000万人以上の36カ国中、日本の子どもの比率は最低でした。
 
今後もこの状況が続くと言うよりは、もっと深刻になると考えられており、社会保障制度の支え手が減り、労働力不足もどんどん深刻になります。
 
少ない人数で社会経済を回すには、生産性の向上が欠かせません。
 
子どもの男女別の内訳は男子が735万人、女子が700万人でした。
 
子どもの数を3歳ごとの区分で見ると年齢が低いほど少なく、中学生にあたる12〜14歳は321万人だったのに対して、0〜2歳は243万人でした。
 
総人口に占める子どもの比率は1975年から49年連続で縮小しています。
 
1950年には子どもは全人口の3分の1を占めていました。
 
それが今では総人口の11.5%です。
 
全ての都道府県で前年より子どもの数が減少しています。
 
都道府県別の子どもの比率(22年10月1日時点)は沖縄県が16.3%と最も高く、次いで滋賀県と佐賀県が同率で13.2%でした。
最も低いのは秋田県で9.3%です。
 
これに対して、高齢化率は上昇し続けていて今後もその傾向は続きます。

少子化も連動しているので、日本の高齢化は過激な勢いで進みます。
 
日本は世界的に見ても、非常に高い高齢化率です。
 
日本の人口は2022年10月時点で約1億2494万7千人ですが、そのうち65歳以上の人口は3623万6千人になっていて、高齢化率は29.1%です。
 
更に、75歳以上の人口は、総人口の15.5%に当たる1936万4千人です。
 
65歳以上の高齢者のうち、75歳以上が半分以上を占める計算です。
 
前年の2021年と比較すると、全体の人口は55万6千人ほど減少し、65歳以上の高齢者は2万2千人ほど増加していますから、全体として高齢者の割合が増えていることになります。
 
日本での高齢化率は約70年で大きく変化しました。
そして将来も更に増え続けます。
 
1950年の高齢化率は4.9%でした。
 
そこから少しずつ増加し、1970年に7.1%、1995年に14.6%、2005年に20.2%と勢いが加速していきました。
 
2020年に28.6%、そして、2022年に29.1%になり、2025年には30%になる見込みです。
 
その後もうなぎ上りで、2040年は35.3%、2055年に38.0%、2065年で38.4%とここまで上昇し続けると推測されています。
 
過去からの高齢化率の推移をみると、1950年の戦後復興期では、65歳以上の人は全人口の5%に満たない割合でした。
 
それが高度経済成長期にあたる1970年頃にはその割合は7.1%に、バブル崩壊後の1995年には14.6%と、徐々にその割合は上がっていきます。

そして2015年の時点で、遂に日本人の4人に1人以上が65歳以上になりました。
 
こうした高齢化率の上昇の原因は、若年層の減少による少子高齢化の問題に加えて、団塊の世代が65歳以上になった2015年に一気に高齢者の割合が増えたことも影響しています。
 
全体的な人口減に反して、高齢者は増加し続けているので、今後も日本の高齢化率が上昇し続けていくことは確実な情勢です。
 
総務省の推計によると、2036年に高齢者の割合は33.3%を超えます。
 
これは日本人の3人に1人が65歳以上になるということです。
 
このような状況ですから、もはや社会保障や介護行政といった社会福祉分野の限定的な問題と割り切ってる場合ではなくなりました。
 
国そのものの運営をどうしていくのか…という国家レベルの課題なので、ようやく、ここ数年で政府も本腰を入れなければいけなくなってきたわけです。
 
次に、都道府県別の高齢化率ランキング…( )内は2045年の予測です。
 
1位 秋田県 38.6%(50.1%)
2位 高知県 36.1%(42.7%)
3位 山口県 35.2%(39.7%)
4位 徳島県 35.0%(41.5%)
5位 青森県 34.8%(46.8%)
5位 山形県 34.8%(43.0%)
7位 島根県 34.7%(39.5%)
8位 岩手県 34.6%(43.2%)
9位 和歌山県 34.0%(39.8%)
10位 愛媛県 33.9%(41.5%)
10位 長崎県 33.9%(40.6%)
10位 大分県 33.9%(39.3%)
13位 新潟県 33.5%(40.9%)
13位 鹿児島県 33.5%(40.8%)
15位 宮崎県 33.4%(40.0%)
16位 鳥取県 33.1%(38.7%)
17位 富山県 33.0%(40.3%)
18位 北海道 32.8%(42.8%)
19位 福島県 32.7%(44.2%)
20位 長野県 32.5%(41.7%)
21位 奈良県 32.4%(41.1%)
21位 香川県 32.4%(38.3%)
23位 熊本県 32.1%(37.1%)
24位 山梨県 31.5%(43.0%)
25位 佐賀県 31.4%(37.0%)
26位 福井県 31.2%(38.5%)
27位 岐阜県 31.0%(38.7%)
28位 群馬県 30.8%(39.4%)
28位 岡山県 30.8%(36.0%)
30位 静岡県 30.7%(38.9%)
31位 三重県 30.5%(38.3%)
32位 茨城県 30.4%(40.0%)
33位 石川県 30.3%(37.2%)
34位 栃木県 29.9%(37.3%)
34位 広島県 29.9%(35.2%)
36位 兵庫県 29.8%(38.9%)
37位 京都府 29.6%(37.8%)
38位 宮城県 28.9%(40.3%)
39位 福岡県 28.3%(35.2%)
40位 千葉県 28.0%(36.4%)
41位 大阪府 27.7%(36.2%)
42位 埼玉県 27.4%(35.8%)
43位 滋賀県 26.8%(34.3%)
44位 神奈川県 25.8%(35.2%)
45位 愛知県 25.6%(33.1%)
46位 沖縄県 23.5%(31.4%)
47位 東京都 22.8%(30.7%)
 
1位は秋田県で、2位以下の都道府県を大きく離しています。
 
2045年の予測も50.1%とダントツで高く、秋田県では2人に1人が高齢者になる見込みです。

2045年の予測では、秋田県50.1%、青森県46.8%、福島県44.2%、岩手県43.2%、山形県43.0%(同率で山梨県43.0%)と上位5県がすべて東北地方になっています。
 
今後、かなり深刻な状況になると考えられます。
 
都心部、大都市での高齢化の進行も見られます。
 
例えば、東京都での高齢化率の推移予測は2022年で22.8%ですが、2045年には30.7%に、大阪府27.7%でも2045年には36.2%に達すると予測されています。
 
このことからわかるのは、大都市圏でも高齢化が今後本格化するということです。
 
次に世界を見てみます。
日本は世界でもっとも高齢化率の高い国の1つですが、1位は35.97%のモナコです。
 
総務省によると、日本の高齢化率は29.1%です(GLOBAL NOTEによると2021年時点で29.79%)。
今は、モナコの方が日本を大きく上回っています。
 
世界のTOP10を見てみると、
 
1位 モナコ 35.97%
2位 日本 29.79%
3位 イタリア 23.68%
4位 フィンランド 22.89%
5位 ポルトガル 22.56%
6位 ギリシャ 22.51%
7位 ブルガリア 22.42%
8位 プエルトリコ 22.36%
9位 ドイツ 22.17%
10位 マン島 22.04%

高齢化問題は先進国を中心に、欧米やアメリカでも大きな課題となっています。
 
平均寿命が延びたことや社会保障制度が整ってきたことにより、長寿の人々が増えているのは先進国共通です。
 
比較的人口バランスの取れているアメリカですら例外ではありません。
 
こうした国では高齢者を社会的な“戦力”にする為の仕組づくりに着手していますが、高齢者を支えるケアワーカーの不足など、課題はまだまだ多いのが実情です。
 
もともと日本の高齢化率は1980年代まで世界でも下位の方で、90年代もそれほど高くはありませんでした。
 
しかし、人口減と高齢者の死亡率低下という2つの要素の影響が大きくなった2000年代以降は急速に進み、それ以降は世界でも群を抜いた高齢化率になっています。
 
今後は日本の高齢化率が世界のトップを走り続ける見込みです。
 
予測では、2065年の日本の高齢化率は38.4%です。
 
しかし、それ以降はトップの座を譲る可能性があります。
 
その要因はアジア諸国の急激な高齢化率の上昇です。
 
世界的に先進国、途上国を問わず、高齢化は加速すると予想されています。
 
特に人口統制政策や日本を上回るペースの少子化などによって、かつての日本よりも急速に高齢化が進んでいる国があります。
 
それが中国、韓国、シンガポールといったアジアの国々です。
 
韓国は特にそのペースが顕著で、2000年からの18年間で高齢化率が7%から14%に上昇しています。
 
日本は同じ割合の増加に、24年を費やしていることからも、韓国の急速な高齢化の深刻度がわかります。

更に、人口規模からいっても将来の深刻な問題を予測できるのが中国です。

中国は2017年頃から急激に高齢化率が増大しています。
 
2018年の時点では中国の高齢化率は10.92%と世界65位だったのですが、この数値は今後10年間で25%前後まで上昇する見込みです。

2060年頃には37%台までに達し、その後は日本を抜くのではないかと予測されています。
 
経済規模の大きな中国の高齢化問題は、日本のみならず、世界的な経済問題、社会保障問題といった深刻な課題になると考えられています。
 
今後も日本の高齢化は世界トップの水準で推移していくので、これを社会的にどう乗り越えていくのかが、国としての喫緊の課題です。
 
世界的にも高齢化の進行は避けられず、高齢化問題の先進国ともいえる日本は、うまく乗り越えることができれば、世界的なロールモデルになれるかもしれません。
 
そんな少子高齢化が加速している日本では、現在、各自治体で、地域包括ケアシステムの構築が進められています。
 
地域包括ケアシステムの原点は、広島県御調町(現在は尾道市)にある国保病院(現在の公立みつぎ総合病院)にあります。
 
1970年代には、何らかの手術後にリハビリを受けて退院した患者が、在宅復帰後に寝たきり状態になるという実態がありました。
 
これを防ぐ為に、みつぎ病院では“出前医療”を行い、退院後のリハビリ等のフォローを始め、寝たきりを防止しようという取組のきっかけになりました。
これが1975年頃のことです。
 
1984年には、当時のみつぎ病院に健康管理センターを併設し、御調町の保健と福祉に関する行政部門を病院長の元で一元的に管理運営をするようになり、その後、更に介護施設、福祉施設等を順次病院に併設して、地域包括ケアの体制を作り、この体制を制度化したものが、地域包括ケアシステムです。

社会保険は医療保険、年金保険、労働者災害補償保険(労災)、雇用保険があり、介護保険は5つ目の社会保険として、2000年に始まりました。
 
介護保険が必要とされた背景には、介護が必要な高齢者の増加、介護する期間の長期化、核家族化による家族介護力の低下があります。
 
これらにより、これまで家族の中で行われていた介護が社会化される必要があり、介護保険ができる事になったのです。
 
当初、介護保険は増大した医療保険料の抑制への対処として見込まれており、慢性疾患者を在宅介護サービスで予防する、あるいは支えることで入院患者を減らすという、医療と介護への統合が目指されていました。
 
これについては、前述したみつぎ病院での実践で目指された“退院後のフォローによる再入院の抑止、防止”、“高齢者の寝たきり防止”が制度として目指されていることも事実ですが、先ほど述べた“医療費を抑える”という目的の方が当時は大きかったようです。
 
2003年、厚生労働省の私的検討会である“2015年の高齢者介護(高齢者介護研究会)”で、医療と介護に加えて生活支援の必要性、医療、介護、生活支援の連携=地域包括ケアシステムの概念が提唱されています。
 
地域包括支援センターの前身である、在宅介護支援センターは、1989年の高齢者保健福祉推進十か年戦略(通称:ゴールドプラン)により、高齢者の在宅福祉や施設福祉の基盤整備の一環として、高齢者やその家族が身近なところで専門職による相談、援助が受けられるように全国的に整備されました。
 
その後、2005年の介護保険の見直しにより、地域包括ケアの体制を支える地域の中核機関として、新たに、地域包括支援センターの設置が定められました。
 
地域包括支援センターの設置主体は市町村ですが、在宅介護支援センターを運営していた社会福祉法人や医療法人等の市町村から委託を受けた法人も設置することが可能になっています。
 
このように、多くの市町村で整備が進んでいた在宅介護支援センターがそのまま地域包括支援センターへ移行、あるいは再編される形で整備が進む形になりました。

地域包括ケア研究会の第一回報告書(2009年)では、居住環境の重要性が指摘されていて、住宅サービスという言葉が出てきています。
 
第二回報告書(2010年)では、在宅サービスが優先であって、施設サービスは補完的なもので、在宅での生活の継続がどうしても困難な場合にはじめて施設を利用するという流れになっています。
 
そして、1982年にデンマークで提唱された高齢者ケアの3原則が、日本の3原則として挙げられています。
 
その3原則は、“本人の選択”、“住み慣れた地位や住宅での生活の継続”、“自己(残存能力)の活用”です。
 
第三回報告書(2013年)で、看護やリハビリ、福祉サービス、保健、住まいなどが加わって重層化した“植木鉢”が出てきます。
 
第四回報告書(2014年)では、地域ケア会議による規範的統合について書かれています。
規範的統合は、自治体が進める地域包括ケアの基本方針が、地域内の専門職や関係者に共有される状態のことです。
 
情報共有の重要性と自治体の保険者としてのリーダーシップについて書かれています。
 
第五回報告書(2016年)では、植木鉢で言うと、介護予防が“葉”から地域住民が主役になる“土”に移されました。
 
第四回報告書で盛り込んだ“自治体への期待”が、第五報告書では“地域マネジメント”という新たな言葉になりました。
 
地域マネジメントとは、自治体が課題を分析して目標を掲げ、具体的な計画を練り、評価と見直しを繰り返すことです。
 
第六回報告書(2017年)では、地域共生社会の実現についての考え方が出ています。
 
その為、従来の縦割り行政を改めて、年齢や高齢、生涯、貧困などの分野を問わずに誰もが“共生”を目指し、全体を見通しながら取り組むということが盛り込まれています。

これにより、高齢者に限定した地域包括ケアの考え方が変わり始めました。
 
このように、みつぎ病院での実践から始まった“地域包括ケア”ですが、当初は慢性疾患患者を病院から在宅でフォローすることで再入院を抑制し、寝たきりを防止することが目的でした。
 
この目的を達成する為に、医療と介護の連携が、高齢者が住んでいる地域の中でシステム化される必要があったということです。
 
これが地域包括ケアシステムの原点です。
 
これが1975年頃の話であり、地域包括ケアシステムという言葉が出てきたのは、2003年の高齢者介護検討会からです。
 
そして、2005年に介護保険法が見直されて、地域包括支援センターの設置が定められました。
 
それから10数年で、地域共生社会の実現という目標に変わり、“高齢者に限らない”という考えになっていきました。
 
地域包括ケアは、そもそもは“住み慣れた場所で…”ということもあるのは間違いないのですが、少なくても2016年までは、基本的には在宅での医療と介護の統合された提供体制を医療機関の状況に合わせて組み立て、医療が必要ないように地域の中で、各専門職が関わって予防していく…という考え方だったということです。
 
そのことは現在も地域包括支援センターを中心に展開されています。

そして、今はその視野を拡大し、社会全体に目を向けて、地域共生社会の実現が求められています。
 
地域共生社会の実現が最初に示されたのは、2016年の内閣による“ニッポン一億総活躍プラン”でした。

“ニッポン一億総活躍プラン”は、日本の経済成長を鈍らせる…社会問題の根底にある少子高齢化の問題に真正面から取り組もうとするもので、しばらく停滞している日本の経済の好循環を形成する為に、それまでのアベノミクスの“三本の矢(大胆な金融政策、機動的な財政政策、投資を喚起する成長戦略)”の経済政策を、より強化することと、広い意味での経済政策として、子育て支援や社会保障の基盤を強化し、それが経済を強くする…、そのような新たな経済社会システム作りに挑戦するものでした。

総活躍プランでは、働き方改革、希望出生率1.8の実現、介護離職ゼロの実現、名目GDP600兆円の実現などが盛り込まれました。
 
この総活躍プランの中でも、介護離職ゼロの実現に向けた取組の中で、更に、“介護環境の整備”、“健康寿命の延伸と介護負担の軽減”、“障がい者、難病患者、がん患者などの活躍支援”に続き、4つ目に“地域共生社会の実現”が挙げられています。
 
ここで、“地域共生社会の実現”のベースが作られた流れを見てみます。
 
2013年の社会保障制度改革国民会議報告書で、“地域づくりとしての医療、介護、福祉、子育て”が掲げられました。
 
この報告書は、高度経済成長期に確立した“1970年モデル”の社会保障を、その後の超高齢化の進行、家族や地域の変容、非正規雇用労働者の増加などに対応した、全世代型の“21世紀(2025年)モデル”の制度に改革することが喫緊の課題であると指摘したものです。
 
社会保障制度を形作る“医療、介護、福祉、子育て”という、それまでは国民からすれば少し遠く感じられた福祉的要素が、ずっと身近な目の前にある“地域づくり”において、重要な起点になるということです。
 
簡単に言うと、介護が必要な人や障害があって支援が必要な人の生活は、当然のことですが、社会が…国が保障しますが、施設などの一律の生活を押し付けるのではなく、その人が“住みたい地域”やその人が求める“生活様式”を大切にするという考え方です。
 
これには、社会保障(制度施策)と、地域の中で包摂されること(ソーシャルサポート)が必要になります。
 
そして、2014年に、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(医療介護総合促進法)の中で、社会保障制度改革国民会議報告書の内容の、地域の医療と介護連携を強化、地域包括ケアシステムの法的定義がされました。
 
医療介護総合促進法の第2条では、“地域包括ケアシステムとは、「地域の実情に応じて、高齢者が可能な限り、住み慣れた地域で、その有する能力に応じて自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制”と規定されています。

2015年の、新たな福祉サービスのシステム等のあり方検討プロジェクトチーム会議の報告書である“誰もが支えあう地域の構築に向けた福祉サービスの実現…新たな時代に対応した福祉提供ビジョンがあります。
 
その中の“2.様々なニーズに対応する新しい地位包括支援体制の構築”では、地域包括ケアシステムの対象拡大と、福祉領域そのものの拡大として、“全世代型・全対象型地域包括支援”、“高齢者に対応する地域包括ケアシステムや生活困窮者に対する自立支援制度といった包括的な支援システムを、制度ごとではなく、地域というフィールド上に、高齢者や生活困窮者以外に広げる”、“新しい連携の形は、福祉や医療分野だけにではなく、それ以外の社会を構築するすべての分野に拡大しなければならない”としています。
 
これは、高齢者分野で進められてきた地域包括ケアの対象を拡大するということになりますが、その意図は、“地域の中での社会保障”が制度施策とソーシャルサポートの連動によって支えられるという前提で、制度自体も縦割りではなく、地域というフィールド上で、横軸の連携を行うことや、一体的に提供される必要があるということです。
 
簡単に言うと、すべての支援を必要とする人の“住み慣れた地域、生活様式”を大切にする為には、様々なサポートが一体的に行われる必要があるということです。
 
このような流れで、地域共生社会という概念が生まれました。
 
地域共生社会では、どんな人でも“住み慣れた地域、生活様式”が実現できる(自己実現)ことを目指しています。
 
地域共生社会の対象は全世代であり、すべての人です。
 
その地域に住むすべての人…それは、様々な国から来た人、様々な性認識をしている人、刑務所から出てきて生活を立て直そうとしている人、年齢や世代、障害のあるなし、支援が必要かどうかなど、そんなことは関係ありません。
 
お互いを尊重し、排除しないということです。
 
ノーマライゼーション、インクルージョンです。
 
“住みたい場所”は、自宅でも、施設でも、その人が望む場所ということです。

誰にも強制されない…措置されない…ということです。
 
“生活様式”は、誰かに迷惑をかけたり、犯罪を犯すことはいけませんが、自分をないがしろにしないなど…、地域の中での協調性を大切にできる限りにおいて、一人暮らし、家族生活をするなども良いことですし、働きたい、遊びたい…誰にも強制されない…ということです。
 
これらのことが“当たり前”になることが、地域共生社会の始まりだと思います。
 
介護を必要とする人や、障害があって支援を必要とする人にとって、“医療、介護、福祉、子育て”などの社会保障が機能することは基本です。
 
施設などの一律の生活を押し付けるのではなく、その人が“住みたい地域、生活様式”を大切にできる社会保障になる必要があります。
 
制度が成り立つ為には、ある程度は画一的な状態になると思いますが、その中でも、ひとりひとりが望む生活を送る為のサポートができる仕組を内包する必要があります。
 
地域の中で包摂されることがソーシャルサポート、包摂的支援体制です。
 
“住みたい地域”、“生活様式”を大切にする為には、地域社会の中で包摂される必要があります。
 
包摂は、“排除しない”ということですが、それだけではなく、“役割を持つ”、“社会に関わる(社会参加)”ということも含まれます。
 
“支え手側と支えられる側の垣根を越えて”という地域共生社会の基本的な考えです。
 
老い、障害の有無、困窮などの様々な問題と対峙している人は、“自己責任ではない”場合がほとんどだと思います。
 
社会との折り合いがうまくつかなかったことから、それらのことが問題…障害として立ち塞がっていると考えられます。
 
例えば、犯罪をした過去があることから、社会に戻ってもまともに就労できずに困窮した場合や、離婚して困窮した場合など、貧困にも様々な原因があります。
一昔前なら、自己責任論で片付けられたかもしれません。

社会通念、社会システムが影響して、その構造上で“他に選択肢がなかった”場合を考えなければならず、そうなると、社会通念や、システムの在り方の中にある障害を消化していく必要が出てきます。
 
個人の問題は、社会の問題です。

何度も書きますが、地域共生社会では、どんな人でも“住み慣れた地域、生活様式”が実現できる(自己実現)ことを目指しています。
 
地域共生社会の対象は全世代であり、すべての人です。

その地域に住むすべての人…それは、様々な国から来た人、様々な性認識をしている人、刑務所から出てきて生活を立て直そうとしている人、年齢や世代、障害のあるなし、支援が必要かどうかなど、そんなことは関係ありません。
 
お互いを尊重し、排除しないということです。
 
ノーマライゼーション、インクルージョンです。
 
写真はいつの日か…札幌市の旭山公園で撮影したものです。

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