マガジンのカバー画像

映画

1,619
映画コラム 某ブログでも書いています。
運営しているクリエイター

2022年10月の記事一覧

映画『アフター・ヤン』とコゴナダ監督

コゴナダ監督、待望の新作が公開! その『アフター・ヤン』が素晴らしかったです。 なかなか簡単に感想を言うのが難しいタイプの作品ではあるのですが、色々とポイントはありますので、note書いてみたいと思います。 監督二作目にしてこの安定感、出来上がってる感があるココナダ監督を掘り下げてみたいと思います。 『アフター・ヤン』<あらすじ> テクノと呼ばれるAIロボットが家族の一員となっている近未来。中国系の養女ミカは、ロボットのヤンを兄のように慕っていたがある日ヤンが故障で動かな

【パワフル&ハイテンション!!】映画『RRR』感想【インドパワーの凄まじさ】

これぞ圧倒的インドパワー…映画『RRR』は2022年に製作されたインド映画だ。イギリス統治下のインドを舞台に2人の男の宿命ともいえる出会いと闘いを描いている。 監督はインド出身のS.S.ラージャマウリ。監督名を聞いたことがない人でもあの『バーフバリ』の監督の新作と聞けば興味を持つのではなかろうか。 『バーフバリ』は筆者のインド映画に対する認識を改めただけじゃなく、これまで観てきた映画の中でも特に好きな作品だ。 本作も前評判が良かったので期待していたが、あのインド映画特有のパ

【豚からはじまる】映画『PIG/ピッグ』感想【奇妙な物語】

誰がこんな展開を予想できただろうか。盗まれた豚を追いかけた先には予想もできない世界が広がっていた。 映画『PIG/ピッグ』は2021年に製作されたアメリカ映画だ。孤独な老人のロブは、山奥でブタを使いトリュフを収穫することで生計を立てていた。そんなある日、謎の2人組に襲撃されたロブは相棒の豚を奪われてしまう。豚を取り返すためにロブは2人組の行方を追うのだが… 主演はニコラス・ケイジ。共演に『へレディタリー 継承』、『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』のアレックス・ウ

映画って、やっぱり・・・いいよね。

先日、京都国際映画祭があった。私は「登壇があるかも」という知らせからこの映画祭の存在を知った。 登壇させてもらったのはヒューリックホール京都という場所で、河原町の街中にある。すぐに想像できるあの京都の街並みが、映画を観終えて会場を出ると目の前に広がっている。京都の方には当たり前の景色かもしれない。でも映画祭のいいところは普段その「当たり前」がない人がそれを体感できることでもあると思った。 映画祭を通じてその街の周辺を知り、映画を通してその地域を知れる。そんな地域発信型映画が

All Steven Spielberg’s films – ranked!

スティーヴン・スピルバーグ監督新作『The Fabelmans』が2023年日本でも公開予定。 内容はスピルバーグが自身の子ども時代をパーソナルな視点で描く半自伝作品。 それを記念してなのか The Guardian が付けた、彼の作品ランキングは次の通り。 33. Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull (2008) 32. Hook (1991) 31. War Horse (2011) 30. Alw

【乾いた町】映画『渇きと偽り』感想【嘘にまみれた人々】

まさに良質なミステリー。評判の良さにつられて鑑賞したが大満足。 映画『渇きと偽り』は2020年に製作されたオーストラリア映画だ。干ばつに苦しむ田舎町を舞台に、一家心中事件の真相を追う警察官と彼自身が抱える過去の事件が交錯する物語が描かれる。 「キワエラでは324日間、雨が降っていない」 これは映画冒頭で流れるテロップだが、この時点でギョッとする。オーストラリアの水不足は深刻な社会問題だ。舞台になっているキワエラは架空の町だが、オーストラリアでは実際に1年近く雨が降っていな

【ある意味、願望を映像化してくれた】映画『黄龍の村』感想

キャンプ場へ向かう8人の若者たち。途中で車がパンクしてしまい携帯電話も通じない。困り果てた彼らは助けを求め歩いているうちに「龍切村」という村に入り込む。親切な村人たちによって、村で一泊することになったのだが… 映画『黄龍の村』は2021年に製作された邦画である。監督は『ベイビーわるきゅーれ』、『最強殺し屋伝説国岡 完全版』の阪元裕吾。出演はスーパー戦隊シリーズ『魔進戦隊キラメイジャー』の水石亜飛夢、『エンボク』の秋乃ゆに、『宮本から君へ』の一ノ瀬ワタルに『最強殺し屋伝説国岡

【ナメて掛かると痛い目みるよ】映画『処刑山 デッド・スノウ』感想

SNSをしてると、たまに自分の知らない作品で盛り上がってる場面を見かける。この作品の存在を知ったのもTwitterだった。何でも絶版になっていたソフトの再発売が決まったらしく、ファンが喜んでいるツイートをいくつも流れてきたのだ その喜び方が本当嬉しそうで「こんなに熱狂的なファンがついてるのは、きっと面白い作品に違いない」と気になったのが鑑賞のキッカケだった。 映画『処刑山 デッド・スノウ』は2009年に製作されたノルウェーの映画だ。監督は同じくノルウェー出身のトミー・ウィ

【若いうちにこそ観て欲しい】映画『いまを生きる』紹介

映画を観てると、たまにタイミングを考える作品に出会うことがある。物語や演出などに対し「この作品は自分にはまだ早かったかな」と感じたり「若いうちにこの作品に出会いたかった…」と思ったり。映画を観るタイミングは作品選びと同じくらい大切なのかもしれない。 今回紹介する映画も自分にとってはもっと早く出会いたかった作品、それが『いまを生きる』だ。 『いまを生きる』は30年以上も前の作品だが今なお色褪せない名作だ。監督は『刑事ジョン・ブック 目撃者』、『トゥルーマン・ショー』のピータ

2022年の東京から、香港を想う

私は学生時代、たびたび海外旅行に行っていた。 コツコツと旅行のために貯金し、出発の2ヶ月ほど前から鬼のようにバイトのシフトを入れて怒涛の追い込みを仕掛け、十分に楽しめるだけのお金を握りしめて海外に行く。必死にバイトに明け暮れる日々も、異国の地へ行ける喜びを想像すれば、なかなかに楽しかった。 社会人となったいま。あらためて考えれば、お金のない学生時代に頑張って行かずとも、社会人になって安定して稼げるようになってから行く、という選択肢もあったのかもしれない。そのほうが、経済的

メリーバッドエンドの物語「星の子」を観て、映画を観る意味を考えた。

映画『星の子』を観た。 2020年に大森立嗣監督によって映画化された、芦田愛菜主演・今村夏子原作の、宗教二世のお話である。 『もし、自分が物心ついた時に、両親が宗教信者だと分かったら』 この映画を観るまで、私は、この状況を想定したことが一度もなかった。宗教二世問題が、旧統一協会の騒動で明るみになる前の鑑賞だった。自分の周りにも、親が宗教に熱心だと漏らす友人はいなかった。 もし、映画・星の子を、あの騒動の後に知って観ていたら、得た感想は、異なっていたのだろうか。ネットの

【これは現代の新たな民話か】映画『LAMB ラム』感想

アイスランドの田舎町で羊飼いを営む夫婦。ある日飼育している羊が「羊ではない何か」を生む。夫婦は「その羊ではない何か」を自分の子供として育て始めるが… 映画『LAMB ラム』は2021年に製作されたアイスランド・スウェーデン・ポーランド合作の映画だ。監督はアイスランド出身のバルディミール・ヨハンソン。これまでに『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』などで特殊効果を担当しており、長編作品は今作が初となる。 主人公のマリアをつとめるのは『プロメテウス』、『ミレニアム』シ

【最高しかない】映画『みんなのヴァカンス』感想【この多幸感よ】

南フランスの避暑地を舞台にひと夏のヴァカンスを謳歌する若者たちの姿を描いた映画『みんなのヴァカンス』。 これ滅茶苦茶良かった…。多分、今年1,2を争うレベルで好きな作品。 こういう出会いがあるから映画を観るんだと思わせてくれる。 愛知では9月17日から名古屋シネマテークで上映されており、9月29日の12時5分の回で鑑賞。サービスデイということもあってお客さんは30人近くと8~9割ほどの入りだった。 ギヨーム・ブラック監督の作品はこれまで何作か観てきたが、ここまで刺さった