見出し画像

文化と遺伝子の共進化

個人的に、今、関心を持っている分野の一つが、文化と遺伝子の共進化です。
通常、生物がそれまで生きてきた環境と異なる環境に進出するときは、遺伝子の変化によって、新しい環境に適応する必要があります。このために、もともと同じ種の生物でも、異なる環境に適応したことによって別種になってしまうことも多いです。しかも、遺伝子の変化は時間がかかるので、異なる環境への進出には時間がかかります。
 
一方で、人間は、たった1種で温かいところから寒いところまで幅広い環境に進出しています。これを可能にしているのが、服を着たり、家を建てたり、食物を調理したりといった「文化」の力。そして、その文化を一代限りではなく、伝達したり蓄積したりする能力も手に入れたことによって、遺伝子の変化を待つことなく、新しい環境に適応することができるようになりました。
 
遺伝子と文化というと、一見全く関係のないもののようにも見えます。しかし、このように見ていくと、遺伝子と文化は、ともに環境に適応するための手段という点で、連続性が見いだせます。そして、文化が創り出した社会環境により、今度は人間の遺伝子の方が影響を受けて変化していきます(例えば土器を発明して煮炊きができるようになると、以前よりは噛む力が必要でなくなって顎が小さくなるなど)。
 
そんな文化と遺伝子の共進化という現象は、過去に起こった出来事というだけでなく、今の文化によって私たち自身も影響を受けて、まさに今も進行中というわけです。