見出し画像

Good night ~9夜:噂の噂話~

これまでのGood night

ーーーーーーーーーーー

《昨晩のこと》

 全ては一つの曲から始まった……。曲の名は『Good night』。その曲を耳にしてから僕は一睡もできなくなってしまった。それと同時に不思議な力も手に入れた……。影が自我を持ち動き出したのだ。自分の体……そして影に起きている謎を解くために、僕は謎の曲『Good night』の噂の出所を調べることにした……

ーーーーーーーーーーー

 ガラガラガラ‼

 教室の扉を開く。一瞬教室の中に嫌な間が生まれた。しかし、その間はすぐに消えてなくなり、クラスメイト達は各人で会話の続きを再開した。

 (何で2,3日休んだだけでこうなるんだろ……?)と考えていると、カゲロウが(大丈夫ですか? 明様!?)と心の中ですぐに話しかけてきたがあえてそれは無視した。

 皆、経験したことがあると思う。インフルエンザなどで、一週間近く学校を休んだ後に登校すると生まれる謎のクラス内での空気……。特に今回、僕は病気で休んでいたわけじゃない……。つまり、余計にたちが悪い。

 僕の考え過ぎだな! と考えを改めて気にせず自分の席へと進んでいく。ガラリ! と椅子を引いて自分の席に着く。ふ~~と自然に溜息が漏れてきた。すると突然後ろの席から声が飛んできた。

「明! 久しぶりだな? テストの出来が悪すぎて寝込んでたのか?」

 後ろを振り返り声の主を確認する。ま、確認するまでもないのだがそこには幼馴染の伊達 健吾(ダテ ケンゴ)がいた。健吾とは小学生からの長い付き合いで、何と小学6年から今現在の高校1年生までクラスが一緒という少し気持ち悪いぐらいの腐れ縁だ。見た目はスポーツマンの様なさっぱりとした感じで、体格もしっかりしている。そして性格も見た通りさっぱりした感じで、いい意味で空気を読まないタイプだ。唯一見た目と違うのはスポーツをしないということだけ。そして根っからのゲーマーだった。

「バカ! 本当に体調崩してたんだよ!」と健吾に言葉を返す。すると健吾が僕の顔をじっと見つめ観察し始めた。

「あ~確かに顔色悪いな……。てか、今の状態見ても大丈夫そうじゃないぞ? 学校来てよかったのか?」

「大丈夫! 顔色はあれだけど体調はもうもどってるから」

「本当か? ヤバくなったらすぐ言えよ!」

(良いご友人ですね)とカゲロウが心の中で囁く。本当にそう思うよ……。

「ありがとう。」

 そして健吾は僕が休んでいる間に返ってきた自分のテストの点が散々だったことを話し始めた。その中で「せっかく徹夜までしたのに!」という単語が出たのでチャンスと思い探りを入れた。

「健吾も皆で噂してたあの曲! 『Good night』聴きながら勉強したのか?」と……。

 すると健吾は何のためらいもなくすんなりと答えた。「ああ、聴いてたよ! けど、まったく効かなかったぞ? 聴いてた日はむしろ子守唄がわりに寝ちまったぐらいだ!」と何とも健吾らしい返事だった。

(人によって効果があるかないか別れるようですね……)カゲロウがすかさず分析をいれる。そして僕も少し黙って考え込む……。

「どうした? 明?」と健吾が少し心配したような顔でこちらを覗き込んでいる。

「ごめん! 少し別のこと考えてたw!」と苦笑いしながら返事を返すと健吾も笑いながら「ホントに大丈夫なのか~w?」と心配しながらも2人で笑う。

 2人の笑いが静まり出した時に健吾が突然「あ!?」と声を出した。何かを思い出したようで、少し声のトーンを落としながら僕にそのことを話し始めた。

 健吾の思い出した話とはある噂ばなしだった。そう、例の曲……『Good night』のこと……。噂の曲の噂話……。つまり、噂の噂話だ。

 朝だというのに教室は生徒たちの声で溢れ。ともすれば自分たちの会話が周りの会話に邪魔されてしまうような状態だった。

 そんな中で話される。健吾の『Good night』についての新たな情報を僕は必至で聞き逃すまいと、健吾が話す噂の噂話に真剣に耳を傾けるのだった……!


【続く】

読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。