ドラゴン目黒仮

10:影

これまでのDragon Eye

ーーーーーーーーーーー

「…………………………」

少女の視線は空を切る……。

そこに視線を交わしあったドラゴンの姿はなかった。

少しの間思考が停止していた少女だったが、すぐに考えを改め次の行動に移っていた。

視点を少し下げる。

そこにはドラゴンが空から落ちてきたときに出来たクレーターのような窪んだ穴が出来ていた。

少女はドラゴンの痕跡をたどり始める。

穴は確かにある。自分が見たドラゴンは決して幻覚などではなく、実際に目撃した事実だということを確認する。

少しずつ視野を広げて周りを確認していく少女……。

するとあることに気が付く!

「足跡だ……!」

少女は自分が立っている反対側、穴の向こう側にドラゴンの足跡を発見した。少女は穴の周りを走り、反対側にある足跡へと向かう。

「続いてる……」

近づいて確認することでドラゴンの足跡であることを確信した。そして、その足跡が続いている事にも気が付いた。あと、足跡と一緒に固まったドラゴンの血も地面に発見していた……。

少女はその足跡を辿りはじめる。

一度緩んでしまった緊張感を取り戻しながら、慎重に……慎重にその足跡を辿る。

少女が住む家とは逆の方向へと足跡は続いていた。

足跡を辿ることで少女の緊張感がまた高まり始める。同時に周りの静けさが少女を覆い始める。

少女の足が止まる。

足跡を辿ると岩肌がむき出しになった道に続いていた。

そこで足跡が途絶えていたのだ……。

しかし、少女は焦ることなくもう一つの痕跡……ドラゴンの血を探した。

足跡は無いが……血はその道の先に続いていた。

少女はまた追跡を始める。先へと続くドラゴンの血を辿る。

足場の悪さが影響し少女の歩く速度が落ちて行く。ペースが落ちるもう一つ理由が存在した。

少女はこの道をあまり知らなかったのだ!

山のことなら大抵のことは知っているのだが、その唯一知らない部分がこの道だった。理由は単純で……母からの言いつけだった。

「危険だから近づいちゃダメよ!」その言葉を……その約束を守っていたのだった。

冷静な状態の少女ならその約束を思い出していたと思うが、今の少女はその冷静さを欠いていた!

少女はただ目の前に続く……ドラゴンの血を追い続けた!

辿り続けた先で少女はあるものを発見した。

それは……大きな、大きな、大穴だった‼

まるでドラゴンが大きな口を開けて待ち構えているような……とても大きな穴だった。

「こんなものがあったんだ……」

自分が知らないものがこの山にもまだ存在していた事への驚きと大穴の異様な雰囲気に少女は驚いていた!

血は穴の中へと続いていた。

穴の中を確認しようとするが暗闇が支配するその空間の先を覗くことは出来ない。かなり先まで続いているようだった。中は洞窟になっているのだろう……。

長考が続いた……。

そして少女は大穴へと歩み出す!

今の少女にここで引き返すという選択肢は存在しなかった。

外から見ると暗闇にしか見えなかったが、実際に入るとうっすらと光が差し込んでいることに気が付いた。

大穴の中はとても広かった。ドラゴンが入り込むことも可能なほどに……。

中は一本道で奥へ、奥へと続いていた。

慎重に、慎重に歩を進める少女。可能な範囲で目を凝らし先を確認しながら進んで行く。

進み続けると、少し開けた空間が道の先に見えてきた……。

少女はその場で足を止めて目を凝らして確認する。

何も……いない……。

空間へと足を踏み入れた……。

そこはちょうどドラゴンの落下によってできたクレーターと同じぐらいの広さの空間だった。

空間の真ん中で少女は足を止めた……。

いや、足だけではない……呼吸も同時に止める‼

この時には少女の目は暗闇になれていた……。

少女はあることに気が付いたのだった。

自分の影の上に大きな影が重なっていることに……‼

少女はその場で凍りついた。

緊張と恐怖によって、一瞬で凍りついてしまった……‼

読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。