ドラゴン目黒仮

13:タマゴン……!

これまでのDragon Eye

ーーーーーーーーーーー

少女が描くタマゴンの絵は完成を迎えようとしていた。残すところは仕上げだけと言える状態まできていた。

少女の住む家の扉が開く。中から少女が出てきた。扉を閉め施錠をし歩きはじめる。今日もタマゴンのいる洞窟へ向かうのかと思いきや少女が進む方向は山とは反対方向、そう村へ向かっていた。

月に一度の村への買い出しは少女にとって憂鬱以外の何ものでもなかったのだが、今の少女はまったくそんなことを感じていなかった。むしろ少し村にいくことが楽しみな様子だった。少女は手に持っている買い物かごを大きく振りながら元気よく村へと向かう。

「足が軽い……タマゴンのおかげかしら」

村へ向かう足取りの変化に少女自身も気が付いていた。何の根拠もないのだがドラゴン、そしてタマゴンとの出会いが自分を変えたのではないかと少女はそう感じていた。

そんなことを考えながら村へ向かっていると前から人が歩いてきた。前回村へ向かっていた時にもすれしがったおじいさんだった。

「こんにちは、おじいさん!」

少女は自分から挨拶をした。

「やあ、こんにちは!」

おじいさんは笑顔で少女に返事を返してくれた。

挨拶を交わしすれ違う。ただそれだけのこと、ただそれだけのことだけど少女はそれが嬉しくて嬉しくてたまらなかった。

少女は自分から他人に話かけた。その自分の変化がとても嬉しかったのだ。

「タマゴンとお話してたおかげだ!」

そう呟いて、少女は微笑んだ。自然と村へ向かう速度が速まった。

ーーーーーーーーーー

「こんにちは!」

店の中に少女の声が響いた。

店番をしていた店の奥さんが目を丸くして驚いていた。まさか少女から先に声を投げかけられるとは思っていなかったのだろう。しかし、すぐに奥さんは我に返った。そして嬉しそうに少女に話しかけてきた。

「こんにちは!どうしたんだい今日は元気だね」

少女は少し照れ臭くなってしまい。うまく言葉を返せなかったが、かろうじて「これをお願いします」と言いながら買い出しのリストを奥さんに手渡した。

「今日は何が必要なんだい?」

奥さんが少女の手からリストを受け取った。リストに軽く目を通して店の裏側に声をかける。

「ちょっと、表にきておくれ‼」

「なんだ~!」

めんどくさそうに声を出しながら裏から店主が現れる。

「また文句かい?」

奥さんの声が少し低くなる……。

「誰も文句なんていってね~よ」

苦笑いを浮かべる店主。そんな店主を奥さんが冷たい目で見ていた。

「まあいいや、あんたこのリストの品そろえて後ろから持って来ておくれ!」

言われるがままリストを受けとつて店主はまた店の裏へを姿を消した。

「まったく!すまないね、あんな店主で!」

「いえ、そんな!いつもお世話になってますので!」

ふふと奥さんが笑みを浮かべた。すると突然奥さんの顔色が変わり真面目な顔をしてあることを話し出した。

「あんた、知ってるかい?王国軍の話?」

「前回ここに来た時に店主さんが話してるのを聞きました」

「そうかい……。実はその王国軍が今この村の近くまで来ているそうなんだよ!」

「え!」

少女は驚いて言葉を返すことが出来なかった……。続けて奥さんが話す。

「ドラゴン狩りをしてるって話だよ!皆武装してる!あんたの家がある森や山に大国軍が来てドラゴン探しをするだろうね」

少女の顔はどんどん青くなっていく……。そんな少女の様子を見て奥さんがあることを少女に提案する。

「あんたも1人じゃ不安だろうから、もしよければ王国軍がこの村から離れるまでこの店にいてもいいんだよ……!」

かろうじて奥さんの声が耳に入ったようで、慌てて少女が返事を返した。

「大丈夫です!ありがとうございます!」

「本当に大丈夫なのかい?遠慮しなくてもいいんだよ?」

「大丈夫です!ありがとうございます!」

少女は同じ返事を繰り返した。今頭の中はタマゴンのことでいっぱいだったのだ……。

繰り返し少女に問いかける奥さんの声を遮って裏から店主が現れた!

「それぐらいにしておけ!彼女が困ってるじゃないか!」

「けど……」と言いながら奥さんはまだ諦められない様子だった。

「親切はいい!けど、強制は駄目だ!分かるよな!」

奥さんい対して少し力がこもった言葉を店主が発した。

「分かったよ!」

するとようやく奥さんが諦めたようだった。

「すまないね、うちのが……。こうとなると曲げれないし止まらなくなってしまうんだよw!」

少女は黙って店主の言葉を聞いていた。

「君が家に帰るのはいいんだけどね。一つだけおじさんと約束してほしいことがあるんだ……」

店主が少女の目を真っ直ぐに見ながらこういった。

「何か困ったことが起きたらすぐにこの店においで!いいね……」

少女は店主の言葉をしっかり受け取って一言だけ言葉を返した。

「はい」

話を終えると少女は店主にお金を払い。買ったものをカゴに詰めて、最後に店主を奥さんに深くお辞儀をし早々を店を後にした。

店に残った店主を奥さんは少女について話していた。

「本当に返してよかったのかい?」

奥さんが店主に問いかける!

「仕方ないだろ!彼女にも彼女の都合があるだろうに!」

「けど……」

奥さんはまだ納得していない様子だった。

「大丈夫!本当にヤバそうならオレが彼女の家まで尋ねに行くよ‼」

バン!と大きな音が店の中に鳴り響いた。どうやら奥さんが店主の背中を叩いた音のようだった!

「いっつぁ~~!なにすんだよ急に!」

店主が痛さを和らげるために自分で背中をさする。

「あんまりかっこつけんじゃないよ!」と言いながらハハハ!と奥さんが笑う!どうやらもう吹っ切れたようだ。奥さんはすでにいつもの調子を取り戻していた!

ーーーーーーーーーー

村を抜けた森へとつながる道の途中に一つのかごが転がっていた……。

少女は手に持っていたかごを放り投げて走り出していた。

勿論、向かう場所は一つ……タマゴンがいる洞窟だ!

「タマゴン……!」

少女の心の声が外に溢れていた。

少女はタマゴンのもとへと走った……。



読んでいただいてありがとうございます。面白い作品を作ってお返ししていきたいと考えています。それまで応援していただけると嬉しいです。