目的のない旅と文と僕vol.2いーはとーぼ
新宿行き小田急線に揺られながら、新百合ヶ丘あたりで、ふと下北沢で降りようと思った。
サブカル色の強い、この下北沢でぶらぶらと散歩する。古着屋がたくさんあるこの街で服のひとつでも買おうかと思ったが、古着屋に入るとセンター分け、柄シャツの男達が多くて、ギャ、俺は下北沢に溶け込む男ではない。寧ろ苦手だ、そう思った。
すると珈琲、音楽の店いーはとーぼと書かれた看板が目に入り、入ってみることにした。
入ると足もとがおぼつかないマスターが迎えてくれた。
いくつだろう70、80はいっていると思われる。
店内はしっとりとジャズが流れていて、古本やCDが積まれている。
ジャズは普段聴かないけど、とても心地が良かった。心がすっと落ち着くのを全身で感じた。
古くて良いものばかりが残されてるのかと思いきや、本棚には又吉直樹の火花が積まれていたりする。どの時代でもいいものはいいものとして受け入れてるお店な気がして勝手に嬉しかった。
ふと一冊の本が目に止まり、手に取る。
「喫茶人かく語りき」
手書きのPOPで店主の名言がフューチャーされていますと、書かれていた。喫茶店と、店主の言葉が特集された一冊の本だった。
はぐれてるやつとはまさに僕だ。
そうだよ、僕みたいなやつには心を整える場所が必要なんだ。ひとりになる時間が必要なんだ。きっと喫茶店はいつの時代も誰かの居場所になるんだろう。そしてマスターの今沢裕さんはこの場所をずっと守ってきたんだろう。ヨボヨボになるまで、素敵な音楽を流し続けて。
すごいよマスター。ありがとうマスター。
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