読書記録 村田沙耶香 コンビニ人間

村田沙耶香 コンビニ人間
芥川賞受賞
94224文字以下

この本も、作家も有名であったが、読書家でなかった私は通ってこなかった。私はこの本を読んで感服した。これを超えるものを書くのは困難であろうと思う。
普通とは何か、人間とは何か、その普遍的なテーマをコンビニという身近なもので、かつストーリーの面白さ、キャラクターを使って見事に描ききった最高傑作だった。
私はこれを読んでいて苦しくなった。もしかしたら、中村文則の銃よりも苦しかったかもしれない。そして、その苦しさという自分の感情に嫌悪感すら感じる。主人公の古倉は決して不幸せではないからだ。コンビニ店員として生きることをそれを心から求めている。それでも苦しいと感じたのは彼女を取り巻く環境は一貫して彼女を普通でないと認識していたからかもしれない。
白羽は自分を異物と認識している上で、古倉を異物とみなした。一方古倉は彼に怒りの感情も、普通ではないという感情も抱かなかった。2人にはすごく大きな差があったように思う。
人はそれぞれにコンビニ人間的な普通ではない要素があるのだと思う。それを普通になりたいだとか、普通になって欲しいとか思うことはすごく滑稽なようなものに思えた。
人間である前にコンビニ店員であるという強い意志はそういった人間の愚かさや悲しさを表現していると思う。

それぞれが自分らしく生きれていられることに意味がある。そういった世界をみんなが目指すためにもこの本はこの世に生まれた価値があると思う。

本を読むにつれて、本というものがとんでもないものだということに気付かされている。


調べた語彙
・トレースする…そっくりに写しとる
・揺蕩う…ゆらゆらふわふわと物理的、心理的に定まらない状態
・天啓…天の導き

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