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わたしの映画日記(2023年6月26日〜6月28日)

6/26

『兰心大剧院』監督:ロウ・イエ 2019年

1941年の上海。租界地に一人の女優が帰ってくる。表向きは元恋人の演出する舞台に出演するため。彼女は連合軍・中国・日本のスパイ合戦入り乱れる中で翻弄される。繰り返す稽古シーンが次第に本筋の物語とシンクロする。中島歩のヒール役が見事だった。

ロウ・イエが検閲のある中でも素晴らしい映画を作れることが完全に証明された。おそらくノーカット版も存在するのではないだろうか。終盤での巩俐とオダギリジョーの一騎打ちは西部劇のような見事なアクション。今回こそは誰か幸せになれるのか?と期待したのが馬鹿だった(褒め言葉)

6/27

『全身小説家』監督:原一男 1994年

作家・井上光晴と彼を取り巻く人々を映したドキュメンタリー。人たらしでありながら時に激しい感情を爆発させる。私塾を通して知り合った妙齢の女性たちに片っ端から惚れ込まれる。途中からは本人が語る経歴の真偽に迫る。身体を蝕む癌だけが確かな存在。彼のことを知らなくても十分に面白い。

『Exhibition』監督:ジョアンナ・ホッグ 2014年

ロンドンのモダニズム建築に住むアーティスト夫婦の日常生活を描く。親密なようにも見えるが小さなすれ違いが緊張感をもたらす。次第に夫婦は家を売却する計画を立て始める。単調な性生活を描くと同時に互いの欲求不満がどのように解消されるのか。前向きなエンディングを迎えられるのかハラハラさせられる。物語自体はミニマルでありながら綿密な人物描写に惹きつけられた。


『リアリズムの宿』監督:山下敦弘 2003年

駆け出しの映画製作者の青年たちが鳥取の温泉宿を転々とする。旅の途中で出会うのは海辺の半裸の女性、怪しい外国人風の宿屋の主人、気前は良いが胡散臭い男などオフビートながら強烈な個性が登場する。つげ義春の世界観の映像化を試みた作品。尾野真千子がふわっと消えるのも良い。淡々とした旅路に奇妙な出来事が続くストーリーに、韓国映画『昼間から飲む』やホン・サンスの過去作をいろいろ連想した。


『ねじ式』監督:石井輝男 1998年

売れない貸本漫画家の主人公は妻が住み込みで働き始めたことをきっかけに別居する。久しぶりの再会で妻の不貞・妊娠が発覚。男は各地を放浪する。旅先で経験する不思議な体験が自分の存在をも揺るがす出来事につながる。マジックリアリズムとシュルレアリスムの入り乱れる見事な幻想世界。テカテカしたいやらしい杉作J太郎も登場する。

『完全なる飼育 女理髪師の恋』監督:小林政広 2003年

片思いの人妻を2年かけて探し当てた男が主人公。北海道で理容室を営む彼女を男は誘拐・監禁する。ストックホルム症候群的な流れになることはわかりきっているが、誘拐犯と夫が対峙するに至ってサプライズが仕込まれている。シンプルな展開ながらも疾走感と厚みのある物語。70年代のフランス映画でも見ているかのような作品だった。

6/28

『スライドショーがやって来る!「レジェンド仲良し」の秘密』
監督:伏原正康 2017年

みうらじゅん&いとうせいこうトークショーの歴史を本人たちの証言を交えながら振り返る映画。MJ氏の部屋でスクラップブックを見せられる体験を大きな会場で再現。バカバカしいことをかっこよくする二人の才能に感心した。東京の笑いを事務所の看板ではなくあくまでも個人名義で引っ張るトップランナーの背中が眩しい。

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