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抽出温度は本当に「気にしなくても良いし、気にしても良い」のか検証してみた

以前僕が書いたnote『抽出温度は気にしなくても良いし、気にしても良い』は、ご覧頂いただろうか。もしご覧頂いていない方は、先に目を通してこのnoteを読み進めて頂くことをお勧めする。

何事もそうだが、情報を字面だけさらった上で物事の是々非々を論ずるのは見当違いだと思っている。したがって、気になった論文で再現可能そうな論文があれば実際に試してみることを是としているので、今回も検証してみた。もちろんn数や抽出条件等も異なるので、できる限り条件を近づける程度のことしかできないが…

こちらがネタ元の論文で、直訳すると「固定された濃度と収率において、抽出温度はドリップコーヒーの味覚にそこまで影響を与えない」となる。即ちこの検証では、実際にTDSと収率を固定して抽出した場合、抽出温度による味覚的差異は明確に存在しないのか、否か?が問いとなる。

念のためー 論点は抽出温度が味わいに影響を与えるのか、否かではない。当たり前だが、抽出温度のみ変えた場合、味わいに影響を与える。論点は、TDSと収率を固定する、という特異な条件下において抽出温度の味わいへの影響があるか否かであるので要注意。

抽出器具はV60のプラスチックを使用し、87℃、90℃、93℃の3つの温度でできるだけ一貫性を持って抽出した。可能な限りTDSと収率を揃えた上で、完全なるブラインドでテイスティングを行い、それぞれ有意差が存在するか確認する。

下記がTDS並びに収率が比較的揃った数値である。この数値を元にテイスティングをすることにした。ちなみに番外編として、論文には比較対象として出てこなかった80℃も検証することにした。収率に若干の開きがあるが、TDSが比較的揃っているので、こちらも同時に官能評価する。

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結論から言うと、80℃で僅かに有意差が見られた(その他サンプルと比較して収率に幅があるので温度による影響か断定はできない)93℃はごく僅かに酸が明るく出ていたので、味わいが異なると辛うじて認識できた程度だった。正直に言うと、87℃と90℃の差は分からなかった。

ブラインドでテイスティングした結果、温度別に辛うじて分類できたのは80℃と93℃だったが、「異なる」とある程度確信を持って言えたのは80℃のみだった。

この検証からの学びは、TDSと収率が同条件である場合、87℃から90℃の差異はほぼ認識不可能、93℃であれば僅かに異なる程度、80℃まで下がれば判別は比較的可能ということだ。

温度が味わいに与える影響は、間違いなくあるだろうが、それは粒度を変えたり、抽出比率を変えたりする影響に比べて軽微であるだろうとこの検証を通して思った。よって僕は引き続き温度を基準にレシピを構築することはない。温度は味の微調整を目的に、調整の最終フェーズで変える方が理に適っていると思うからだ。

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