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エステバンの魚

やきもちは、嫉妬することを「妬く(やく)」と言うことから、「焼く」に掛けて、「餅」がそえられた言葉です。
「妬く」と「気持ち」から「妬く気持ち」となり、「焼きもち」になったともいわれる。

戦国時代、大友宗麟(おおともそうりん)は側室を7人持っていたといわれるほどの女好き。その行動に正室のイザベルもたいそう焼きもちを妬いていたとか・・・。

ある日イザベルが宗麟の侍従のエステバン少年を呼んだ。
イザベル:「最近のご主人は様子がどうもおかしい。どこに新しい女性が居るか知ってますか。何でも買ってあげるから言いなさい。」
エステバン:「それでは、つ〇やの甘酒まんじゅうを」
イザベル:「どちらなんだい」
エステバン:「この前を行って長浜神社(ながはまじんじゃ)へむかった所です。」
イザベル:「そんな近くに女が・・・。いくつなんだい?」
エステバン:「へえ、10個で390円です。めちゃくちゃおいしいのにお得なんですよ。」
イザベル:「なんの話をしているんだい。」
エステバン:「いえ、つる〇の甘酒まんじゅうが」。
 イザベル:「そうじゃなく、女の家だよ」
エステバン:「それは知んない。」
イザベル:「どうしてだい?いつも宗麟様のお出かけにはお供でついてるだろう?」
エステバン:「確かに宗麟様と出かけるのですが万寿寺(まんじゅじ)を通って長浜神社に抜けていくと宗麟様がまんじゅうかケーキが食べたいと言い出しますので、「今日は〇るやの甘酒まんじゅうにするか、それとも月〇瀬のケーキにするか」って言われて買い物に行ってると宗麟様が見えなくなっておりまして・・・。あんれ、また宗麟様きえたなあって思いながら長浜神社で買った月ヶ〇のケーキやつる〇の甘酒まんじゅうを食べて夕方、家に帰っています。」
イザベル:「まかれてるじゃないかい。何をしてんだい。」
エステバン:「おやつタイムだな。」
イザベル:「じゃあね。今日はあたしが500円あげますから、その甘酒まんじゅうでもケーキでも好きな方を食べなさい。」
エステバン:「えっ!いいの!ありがとう!」
イザベル:「ありがとうございます。と言いなさい。ただし、宗麟様の新しい女の家を突き止めてくるんだよ。できれば女の素性もわかるといいんだが。そこは成果次第でもう500円あげましょう。」
エステバン:「500円くれた上に宗麟様が通ってる女のことをお知らせしたらさらに500円くれるんですか!おら奥様が神様に見えてきた。おら奥様の下僕です。」
イザベル:「しっ!宗麟様がきた。裏に控えていなさい。」

宗麟:「イザベルや今から出かけてくるからね。」
イザベル:「どちらにですか?」
宗麟:「そりゃ、あちこちですよ。」
イザベル:「あちこちってどちらか言ってください。」
宗麟:「どうしたんだい。そりゃ真っ直ぐ行ったり、曲がって行ったりしますよ。」
イザベル:「どちらかにお出かけかわからないと困ります。今日もお供にエステバンを連れて行ってください。」
宗麟:「エステバン!」
宗麟がびっくりする。
宗麟:「エステバンはいけませんよ。あの子はね。口が悪いし、この前なんか裸足で外歩いてね、そのまま畳の上に上がったもんだから、畳の隙間に土が入って大変だったんですよ。」
イザベル:「最近はちゃんとしつけをしています。言葉使いも「ありがとうございます」と言えるようになったんですよ。所在不明だと不意の謀反でどこに行けばいいのか困ります。」
宗麟:「いつまでもその話はよしておくれよ。わかりました。わかりましたよ。エステバンにお供をしてもらいましょう。」
イザベル:「エステバンや。エステバン!」
エステバン:「あいよー。お待ち。」
エステバンが裏から現れた。
宗麟:「エステバン。今から万寿寺を通って王子神社(おおじじんじゃ)に行きますよ。島津様と会う予定だから失礼ないように頼みますよ。」
という事でエステバン、イザベルに500円貰って買収され、宗麟の後について、女の家を探る事になった。
宗麟:「なんだか今日はイヤにイザベルがしつこかったけど。まあ、エステバンなら、いつものようにまんじゅう買いにでもやってまけばいいか。」
屋敷を出た途端。
まるで餌を追いかける犬のようにエステバンがついてくる。
宗麟:「エステバン、ちょっと離れなさい。」
エステバン:「離さないよう。このスケベ。」
右に左にと歩いてもぴったりとマークしてついてくるエステバン。
さすがに宗麟もイザベルの指示だと気づく。
宗麟:「ははーん。エステバン。さてはイザベルに何か指示されたね?」
エステバン:「な、なんのことだか。おらしらねえな。」
あきらかに動揺するエステバン。
宗麟:「そんなに動揺するてことはお小遣いでも貰って、私の行動を調べなさい。とでも言ったかね。」
エステバン:「な、何をおっしゃるんだか。この500円で宗麟様の新しい女の家を突き止めてくるんだよ。女の素性もわかるとさらに500円あげようなんて話、してませんよう。」
宗麟:「話してるじゃないか。そうか500円で指示されてさらに500円の出来高せいですか・・・。安くみられたもんだね。」
エステバン:「ごめんなせえ。500円玉、返します。」
エステバン懐から貰った500円玉を返そうとする。
宗麟:「ああ、いいんだ。その金は取っておきな。それとね、エステバン。私からこの金をやろうじゃ無いか。」
そういうと宗麟が懐からお財布をだして千円札を渡した。
エステバン:「お札!!千円札だあ!こりゃあ、〇るやの甘酒まんじゅうだけじゃねえ。〇ヶ瀬のケーキも同時に買えちまう。宗麟様、私はあなたの下僕です。」
宗麟:「いや。下僕みたいなもんなんだよ。エステバン。これをやるからねちょいと協力をして貰おうか。いや、そんなに難しい話じゃ無いんだ。おまえは家に帰ったら『旦那さんは万寿寺の側で島津勝久(しまづ かつひさ)さん(当時:大友家に亡命中)にバッタリ会って、立ち話もなんだって都町の料理屋さんに上がって芸者さんを呼んでドンチャン騒いで、日和が良いので大野川に出て網打ちをした。すると今日は別府温泉にザビエルさまと行く約束してたなっと思い出して別府温泉に出かけていきました。というわけで旦那さんは明日の昼頃、別府温泉から帰ります。』と言い、帰りに網打ち魚でも買って、これがそのお土産だと言えばイザベルも納得するだろう。頼んだよ。」
エステバン:「おらがそれをいうんですかい?」
宗麟:「そうだよ。」
エステバン:「いやいやいや。ちょっと待ってくだせえ。「宗麟様、万寿寺を通っていると島津さまにお会いになりまして、立ち話じゃなんだって事で都町で料理屋にいって芸者さん呼んでドンチャン騒いで、日和がいいので大野川にて網打ちをして、そういや今日はザビエル様と約束があったなーと思い出しまして別府温泉に行かれまして、そちらに泊まるので帰りは明日の昼頃になります。」どう?」
宗麟:「エステバン!覚えてるじゃないか!すばらしいよ。」
エステバン:「お札の力はすげえな。おらに不思議な記憶力をくれる。」
宗麟:「適当に網打ちの土産をね、2匹ほど買って帰ればイザベルも納得するだろうよ。あ、これは魚を買うお金だよ。できれば珍しいのがいいね。鯛とか。おつりは成功報酬でおまえにあげるからね。頼んだよ。」
そう言って宗麟は千円札をエステバンに渡した。
エステバン:「お札!また増えた!宗麟様あんたは神様だ!髪ねえけど・・。」
宗麟:「あるわ。髪!剃ってるだけです。じゃあ頼んだよ。くれぐれも女のところに行ったなんて言うんじゃないよ。」
エステバン:「へえ。いってらっしゃい。今から目を10秒閉じてますから早く消えてくだせえ。見えてるとね、方角がわかっちまいますから。」
エステバンが両手で目を隠すと宗麟はウキウキしながら走り去っていく。
エステバン両手の中から宗麟をおいながら
エステバン:「旦那様走るとこけるだよ。あーうれしそうにスキップしちゃって。おらも大金もらえてありがたいです。」

さて、エステバン。網打ちの魚をっていうことで魚屋に行ってみる。しかしながらエステバン少年。山育ちなので網打ち魚の意味がわからない。
魚屋の大将:「へい!らっしゃい!」
エステバン:「網打ち魚ってありますか?」
魚屋の大将:「えっ??魚を網で捕らねえでどうやって捕るんだい。冷やかしなら帰ってくんな。」
エステバン。魚屋を出て考えた。
エステバン:「網打ち魚がわからない。どうしよう?そういえばタイでもいいと言っていたな。」
エステバンお目当てのお店に行く。
エステバン:「すいません。2匹ください!」

エステバン:「ただいま戻りました。」
イザベル:「どうだった?女の家を突き止めたのかい?」
エステバン、宗麟様との打ち合わせ通りにしゃべり出す。
エステバン:「宗麟様、万寿寺を通っていると島津さまにお会いになりまして、立ち話じゃなんだって事で都町で料理屋にいって芸者さん呼んでドンチャン騒いで、日和がいいので大野川にて網打ちをして、そういや今日はザビエル様と約束があったなーと思い出しまして別府温泉に行かれまして、そちらに泊まるので帰りは明日の昼頃になります。ですので。新しい女はいなかったのでございます。あ、ちなみにこちらが宗麟様がとられた網打ち魚です。」
神妙に語るエステバン。めちゃくちゃ嘘くさい。
イザベル:「エステバンや。おまえが持って帰った魚。たい焼きじゃないか。どこで取れたっていうんだい。」
エステバン:「奥様。この鯛はそこいらの鯛とは違うのでございます。毎日鉄板の上で焼かれるのがイヤになって、店のおじさんと喧嘩して海に飛び込んだ奴なのでございます。」
イザベル:「「泳げたい焼きくん」かあっ!そもそもたい焼きは海にはいないんですよ。」
エステバン:「へえ、だから鉄板の上から飛び込んだんで網焼き魚っていうんですよ。」
イザベル:「なに言ってんだい。網打ちと網焼きを間違えてるじゃないか。」あきれるイザベル。
イザベル:「エステバン。じゃあ今何時ですか?」
エステバン:「奥様、おら馬鹿だ馬鹿だと言われますが、時計くらいよめますから。今昼の3時です。」
イザベル:「さあ問題です。宗麟様とおまえが出かけた時間が昼の2時。おまえが帰った時間が昼の3時です。どうすればおまえが言う「宗麟様、万寿寺を通っていると島津さまにお会いになりまして、立ち話じゃなんだって事で都町で料理屋にいって芸者さん呼んでドンチャン騒いで、日和がいいので大野川にて網打ちをして、たい焼きを買って帰れるかい?」
エステバン:「しまった。おやつの時間でうっかり帰っちまった。やっぱり長浜さまでつる〇の酒まんじゅうと月ヶ〇のケーキを食って帰ればよかった。」


イザベル:「祈祷師をよびなさい!宗麟様の「浮気の虫」を駆除しますよ。」
この日から三日三晩、祈祷(きとう)をおこなったイザベルなのでした。

ちなみにこの程度の祈祷では宗麟の「浮気の虫」は治まらなかった。

この後、イザベルは豊後領内の修験者(しゅげんしゃ)が集まる山という山に宗麟の「浮気の虫」駆除の祈祷指令をだし、宗麟の行動を見張る間者までつけた。この異常な「焼きもち」は巷(ちまた)でも有名になり、宗麟がイザベルと離婚への道を考えるきっかけになった。

エステバンの魚でした。








 

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