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元作詞家の見解「作るということ」

時代の変化と共に

便利な世の中

 ガラケーがスマホに姿を変え、これまでPCでしか出来なかったことが、今やほんの手元で完結する時代です。そう考えるといちいち公衆電話を車から探した時代がむしろ懐かしく感じられます。駅の待ち合わせも掲示板が頼りでした。当初は仕事の受注を決して逃せない理由(駆け出し作家の迅速対応)で、出始めの携帯…ドコモのPとか言ってた物を持ちましたが、それだけでも「何者? 何様?」みたいな顔をされて、隠れて電話をすることもありました。可笑しな話です。

制作事情

 最近の作家さんの仕事の仕方等詳しくは分かりませんが、間違いなく音源は瞬時にネットを通じて送られて来ますし、打ち合わせにはLINEも使えるでしょうし、それこそ極論、スマホ一台で作業が賄えてしまう訳ですね。まずないとは思いますが、もしかすると、一度もスタッフ関係者や唄い手さんに会うこともなく作業終了なんてこともあるのでしょうか? まあ効率的と言われればそれまでですが。
 その昔は最初に案件を頂くと、メーカーのディレクター やら事務所のマネージャー、時には社長さんとも綿密に打ち合わせがあり、唄い手さんご本人にも色々インタビュー出来るプロセスがありました。流石に若い駆け出しに於いては、取り敢えず銀座で一杯やってから…といったことは勿論ありませんでしたが、そういった一つ一つ積み上げてゆく“もの作りの過程”が、大切であり又楽しかったと記憶しています。音源のカセットテープを受け取るのは無論手渡しでしたし、そんな際に喫茶店(カフェではなく喫茶店です)でスタッフさん等とする音楽談義等四方山話から学ぶことも数多くありました。極めてアナログな時代でしたが、内容は濃く、レコードと一緒で何処か対人間という暖かみもあったような感じがします。

アナログであることの大切さ

 未だに私は、打ち合わせ等に於いてはLINEやメールよりも電話、電話よりも直接会うということを心がけています。と言うよりもそうでないと、意思疎通に乱れが生じ易く、「そういうつもりでは…  」のような誤解を招く恐れが多々あるからです。特に文字だけに頼る際には、相手の心情も読み取り辛く、それについては単純な事務的やり取りの時だけとしています。相手の表情や声色から受け取れる情報は貴重ですし、逆にこちらの思いも汲んで頂き易い。
 スタジオワークに集まった面々との切磋琢磨が、良い作品を産んで来たのも事実と確信しています。物作りにも多くのジャンルがありますから、中には自己完結可能で、返ってそれがベストな仕事もあろうかとは思いますが、音楽のようなある程度登場人物を要する世界では、一見非効率に思えても、生身の人同士が直にエネルギーを通わせ合いながらといった工程が大切ではないでしょうか。スタジオ作業もほぼほぼ自宅PCで出来る昨今、時勢が故の要オンラインとは言えども、再度あの“不便”だったアナログな世界観を見直す意味は大きいと思います。最小限でも協力体制の下であれば、物作りとはそういうことではないでしょうか。あくまで…スマホ機能の20%も使いこなせていないオヤジの自論です。

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