見出し画像

東洋医学講座 49

〇土の働きと五行の成立②

五行の成立を含め、土の働きをもう少し具体的に説明していきます。

1.万物は木火金水の四気と土気との交合によって形づくられるために、その内部に木火土金水からなる五系統の構造をもつ働きをもつことになります。五行の成立であります。

その際、土は母胎として統一体の全体にかかわっています。したがって、木火土金水の五系統はすべて土を素材として成り立ち、土でつくられた上で、それぞれ固有の組織と働きをもつということであります。木火土金水は、すべて土中の木火土金水として存在します。土は全体であるとともに、また五系統の一つとして存在します。

例えば、肝心脾肺腎の五臓は、人体(脾体)を場としてできています。したがって、五臓は土である脾体(肌肉)からつくられており、五臓とは木火土金水が間借りしているところの人体(脾体)の五つの貸間であるといえます。土は人体(脾体)全体であるとともに、また固有の一系統としての脾臓の消化器系統として存在しています。陰経において土穴が原穴である理由もそこにあります。

そのほか、人体の中で体液を場(母胎、素材)としているのが五液(涙・汗・涎・涕・唾)、心を場としているのが五志(怒・笑・思憂・悲・恐)、声を場としているのが五声(呼・言・歌・哭・呻)、そして五音(角・徴・宮・商・羽)、顔面の感覚器を場にしているのが五官(目・舌・口唇・鼻・耳)であります。

人体以外では、食物を場としているのが五穀(麦・黍(きび)・粟(あわ)・稲・豆)、五菜(韮(にら)・薤(らっきょう)・葵(あおい)・葱(ねぎ)・藿(まめのは))、五果(李(すもも)・杏(あんず)・棗(なつめ)・桃・栗)、色を場としているのが五色(青・赤・黄・白・黒)、動物では五畜(鶏・羊・牛・馬・豚)などであります。

なお、土は木火土金水を一つの統一体として統括しているところから、土には、平衡作用、中和作用、中庸作用があるとします。しかし、この平衡中和作用は、決して静態的なものではなく、あとでみるように土の変化作用の中での平衡中和作用であり、動的なものであります。統一体は「生成・・・消滅」の変化運動をしながら、その中で統一性をいつも保っているのであります。

土は、このように、変化作用と平衡作用の二重の働きを同時に行っているのであります。

2.万物は木火土金水の五系統からなりますが、そのうち木気の働きを強くうけているもの、火気の働きを強くうけているもの、土気の働きを強くうけているもの、金気の働きを強くうけているもの、水気の働きを強くうけているものの五種類の系統に分類することができます。

このように分類してその具体例をあげたのが、今後掲載する「社会における五気の働き」であります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?