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東洋医学講座 273

〇脾と胃

▽脾と胃の関係と働き

▼脾・胃に障害が起きたら…

胃には飲食物の栄養が、水が海に集まるような様から〝水穀の海〟といわれています。ここで胃気が生じ、この気に脾が働き、それが原気となって各器官・組織を営々します。したがって、脾は人体の母ともいえます。つまり、先天の腎精を育むのは、脾の司るところであります。脾の元気が各臓に配分され、そして各臓の精選された純気を腎に収め、それで、先天の腎気を育みます。したがって、脾・胃に障害が起こったとしたら、まず脾・胃を治さないと他のいかなる治療も困難といわざるを得ません。

つまり、脾・胃の働きの元となる飲食生活を正すことが何よりも大切であることを理解する必要があります。そのような訳なので、食生活がその人に相生となっているかどうかが問題になってきます。

食生活では、質・量・時間の三原則がありますが、個人の体質・体力・消費量・年齢などの条件をふまえた上での適・不適が、脾・胃を健全ならしめるか否かのカギを握っています。これは質の問題でありますが、春に辛い物を摂り過ぎたら、金剋木となり肝を剋します。

また量については、過不足を決めるのは難しく、個人個人で適量は異なりますが、一定の基準となるものは、本人の体力と消費量に見合った量ということが考えられます。体力と年齢には密接な関係がありますが、若者は脾化体なので少しくらい多く食べてもよく、年をとるにしたがって肺旺体となるので、大気中の五大栄養素をとるので、量的には少し控えたほうがよいと思われます。

さらに時間的には、脾旺期が食事の最適時間と思われますが、厳密にはそれよりもやや遅く、脾の余力が働く午後4時ごろが脾の力が十分に働けるときとされています。

今までは食事の三原則について簡単に述べただけですが、とにかく脾化作用がうまくいかないと人体の生成英々は成されず、成人後においても胃気が順調に働かなければ、人体という形を保つことが不可能となります。外の刺激(治療)だけでは、片手落ちといわざるを得ないのであります。

ところで、脾・胃をこわすと、全ての人が胃腸障害を起こすかといいますと、一概にそうとはいえません。心臓が弱い人は、心臓に影響が出ますし、相剋がめぐりめぐって体の欠点のあるところへ行き、先ずそこが最初にやられます。

さて、治療の段階になりますと鍼灸ばかりが治療ではありません、要はいかにして自然治癒力を発揮させるかにかかっているので、その上での鍼灸治療ということを頭に入れておくことが大切であります。

古典に「万病の本は胃腸にあり」といわれているように、治療の基本は、脾・胃を整えることにあります。その第一の方法として絶食があります。絶食というと嫌われがちでありますが、これは素晴らしい治療法の一つであります。体力が低下しているときはものを食べても消化力が十分ではありません。それなのに一般的には病気になるとかえって栄養分を余計にとる傾向がありますが、このような時こそ絶食をすれば、土の力は小さくすみ、腎の治癒力が十分に働けるようになります。

太極的に治療の根本となるものは、天食・人食・地食の三つであります。これらが調和されている限り、人体の健全を保てます。

天食とは、一口にいって大気を吸うことでありますが、良い大気を取り込むには、良い立地条件の地上に住み、かつ良い家相であることがより良い自然を吸収する必須条件となります。普通、天食である天気は、目に見えないのであまり気にとめませんが、本人が気がつかないうちに次第に侵されていることがあります。

さらに、地食における飲食の不摂生を重ねていけば、いずれ体力が弱って病気が発生します。病気はいきなり襲ってくるものではありません。

また、人食とは、肉体面よりも精神面の問題です。失恋や仕事上の失敗、人間関係などの精神的なショックを受けると、人食の調和を欠くことになります。

これら天食・人食・地食が調和されることによって、全体の調和が保たれるわけであります。

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