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東大推薦入試(面接:教育学部)関連情報

募集要項(2023年度 抜粋)


面接等試験日: 12月10日(土)

(1) 募集人員 5人程度
(2) 求める学生像
 自ら設定した課題を探究する卓越した資質・能力を有する 学生。これまでに取り組んだ探究学習は特に教育分野に限定 しないが、なぜ教育学部を志望するのかについて明確な考えをもっていることを求めます。

(4) 推薦要件
 ① 本学のカリキュラム履修に必要な、教科の基礎学力があ
ること。
 ② 探究学習の卓越した実績・能力を、論文、作品、発表等
を通じて示すことができること。

(5) 学部が求める書類・資料
各学部共通に求める調査書等のほか、上記推薦要件に該当
することを示す客観的根拠となる以下の資料の提出を求め
ます。
・ 在学中に作成した論文、作品、発表の内容を示す資料等
で志願者の卓越した探究能力を示すもの。
・ 上記に関して、国際的若しくは全国的なコンクールやコ
ンテストでの受賞歴、あるいは、学会の高校生セッション
等での発表経験などがある場合、それを証明する資料。

(6) 面接等の方法 発表と個別面接を行い、総合的に審査します。
発表は、出願時に提出した資料(論文、作品、発表等に関するもの)の
内容について行うものとします

※発表に続いて、他の受験者も参加して質疑応答を行うことがあります。個別面接では、面接官と「自ら設定した課題を探究する卓越した資質・
能力」、「教育学部を志望する理由」などについて質疑応答を
行います。

(募集要項)https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400166371.pdf


 教育学部は5分以内で自分のことをアピールする試験があったのですが、他の受験生もいる中で、先生が7人、そこで質問攻めにされました。“スタンフォードに認められた才媛”と呼ばれている鈴木光ちゃんが受けたスタンフォード大学の「スタンフォードe-ジャパンプログラム」に私も参加していて、光ちゃんは最優秀賞みたいなのを取ったんですけど、私はその一つ下の賞だったんです。それをネタに「自分はスタンフォードに認められかけた才媛です!」って言ってアピールしました。他の人も結構面白い話をしていて、普通にネタみたいなことをやった子がいて、先生たちも大爆笑で。その子も受かってたな。


東大の面接では、提出した論文についてポスター発表をします。この練習を永井先生にお願いしました。本番では面接会場に教授が6名もいたので、ポスター発表で手がプルプル震えてしまったことを覚えています。


――推薦入試には自己アピールが必要ですが、どこをアピールされましたか?
特にすごいイベントがあったわけではなくって、そこが不安でもあったんです。だから、なぜ自分が教育学部を志望したのかということをしっかり考えて、どうしても教育を学びたいっていう熱意が伝わるようにと考えました。それで、一番やるべきは研究論文だということになったんですけど。

――研究論文は、先ほどお話していたプログラムで書いたもの?
はい。あとはストーリーというか、高校生活を通じて、ずっとどういうことを考えていて、その中で研究論文とか、私が参加した教育プログラムがどういう位置付けにあって、これらが自分にとってどういう意味を持っているのかということを、しっかり考えるようにしました。実際、どこを評価してもらえたのかはわかりませんが…。

豊島さんはどういったきっかけで教育や貧困問題に対して問題意識を持つようになったんですか?」

豊島さん:「僕が通っていた公立の中高一貫校で、お金に不自由していた人が周りに結構いたように感じていたんです。ひとり親だったり、学校に通えなくなって通信制の学校に行ったりという人が身近にいました。10%ぐらいは、不登校やドロップアウトでいなくなったと思います。そのような環境にいたので、そこから貧困問題に関心を持ち始めました。」

筆者:「学校は進学校ではなかったんですか?」

豊島さん:「宮城県で開校10年目の公立進学校です。ただ、現役で東大に入るのは自分が初めてらしいです。」

筆者:「初ってすごいですね!じゃあ、周りに東大に行こうっていう人も全然いないんですね。」

豊島さん:「そうですね。」

筆者:「そんな環境で、どうして東大の推薦を受けることになったんですか?」

豊島さん:「さっき言ったことがきっかけで、高校時代に子どもの貧困について研究論文にまとめたんですよね。このテーマは普段から見ていたものの延長です。みんな当事者だったり、それになりうる感じでしたから。」

筆者:「高校時代から貧困について論文を書いていたんですか・・・すごい。」

豊島さん:「当初は地元の教員養成課程の学校に行こうと思っていたんですけど、研究論文が学校の中できちんと評価されて、それならもう少しやりたいと思いました。あと、一部の学校だけでなく、国全体の学校教育を良くしたいというのがあって、それならもっといい大学に入って、データなどが充実した環境で研究して道筋を開いた方がいいとも感じたんです。」


「社会問題にかかわる活動から深めたマイノリティへの関心。多様な子どもたちがいきいきできる社会をつくりたい」

――2021推薦生インタビュー 教育学部

――高校までに様々な活動をしてきたそうですね。どういった活動してきたのでしょうか?
私は特に外国にルーツを持つ子どもたちの教育に関心を持って活動をしてきました。これまでは、外国にルーツを持つ子どもたちの学習支援をするボランティアや子ども食堂、難民の子どもたちの引っ越し支援に参加したり、フィリピンのスタディーツアーに参加して、スラム街やストリートチルドレンの子どもたちを保護する施設、性的虐待を受けた女の子たちを保護する施設を実際に訪問したりしました。他にも、阪神淡路大震災の語り継ぎを考えるプロジェクトや西日本豪雨の復興支援ボランティアにも参加しました。様々な現状を目の当たりにし、これらの活動で出会った子どもたちとの交流がきっかけとなって、多様性を尊重する教育について深く考えるようになりました。




「探究学習を通じて出会った現象学。『語り』が人格形成につながるのではと感じ、教育学部を志望」――2020推薦生インタビュー 教育学部


――教育学部を志望することになった経緯を教えてください。
教育学部を志望するまでの経緯には少し長い説明が必要なのですが、最初のきっかけとなったのは、中等教育学校の探究学習で論文を執筆したことでした。その理論的枠組みとして現象学を学んだことが、大学での学びを考えるきっかけになりました。

――どのような論文を書いたのですか?
テーマは、英語学習における辞書使用でした。辞書の使い方って人それぞれ違うんだなと気付いたことが、この研究のきっかけです。使い方の多様性の背景には、英語学習に対する各学習者の価値観に違いがあるのではと感じるとともに、その多様性を調べるには数値的な方法では限界があるなと感じていました。辞書使用について、調査者が数値化して議論するのではなく、学習者自身に振り返って言葉にしてもらいそれを分析しようと考え、現象学の枠組みを学びました。

――現象学のどのようなところに惹かれたのですか?
自分の頭の中にあることを一旦保留して、他者の「語り」に耳を傾ける姿勢に意義を感じました。

――その後、丹原さんの探究はどのように進んでいくのでしょうか?
「語り」に関する書籍を探し、東大教育学部の牧野篤先生が書かれた『認められたい欲望と過剰な自分語り』という本に出会いました。この本の、「語る」ことによって自己を「生成」していくという考え方は、現象学を学び始めた私にとって、すごく新鮮な視点でした。現象学では他者の「語り」がその聞き手(私)に「学び」をもたらすということを経験したのですが、「語り」が生み出す「学び」とは、聞き手だけのためのものではないかもしれない、そう気付かせてくれたのがこの読書経験でした。
ひとりの人間の、とある経験に関して、その語り手と聞き手が相互に新たな理解を深められること、それは人間ならではの学び方であり、人格形成ではないかと感じました。このテーマについて深く考えるため、教育学部を志望しました。

――推薦入試を考え始めてから、どのように準備を進めましたか?
夏の模試までは一般入試の対策に集中し、そこから、以前書いた論文の加筆を行いました。修正したいところが多く苦しい時間ではありましたが、自分の研究の課題点を見つめ直す良い期間になったと思います。それを踏まえて、秋頃に志望理由書を書き始めました。
人は、自らの経験を「語る」ことによって自分を生み出していく、それが「学び」なのではないか。これは私が志望理由書を書いていくなかで身をもって感じたことです。こうした「学び」は、推薦入試に挑戦したからこそ得られたものだと思います。

――東大の推薦を受けようと思った理由を教えてください。
高校の先生と進路相談をするなかで、「あなたが活動してきたことを活かせる入試が東大でもはじまっているから、ぜひ受けてみたら」と先生から紹介されたのがきっかけです。私は中学まで盲学校に通っていて、高校から普通科の高校に通いました。その経験を通して、教育支援やその基盤となる制度に関心をもって、高校生活を通して自分で調べたり、インタビュー調査を行ったり、そこで学んだことを発信するといった活動をしていました。
大学進学を考えたときに、教育を学びたいという気持ちが強かったのですが、自分は教員養成系の教育学部に行きたいのではなく、実践とか教育政策について深く学べるところに行きたいと。それでいろいろ調べた中で、東大の教育学部っていいなと思いました。
――留学経験があるとのことですが、どちらに行きましたか?
短期ですけどイギリス、カナダ、フランスの3カ国です。特にイギリスでは現地の視覚障害児教育、インクルーシブ教育についていろいろと学ぶためにスタディーツアーに参加しました。
まず、現地の盲学校で学んでいる学生さんや、一般の学校に通っている学生さんに現状の話を聞きました。それから、大使館や英国盲人協会というところで支援に携わっている人たちや、制度面やIT技術の開発から携わる人たち、音楽分野から携わっている人たちという、いろいろな立場から教育支援に関わっている人にも話を聞いて、自分の知っている現状と比較をしたりしました。

――そのスタディーツアーでは、どのようなサポートや指導を受けたのですか?
障害のある人たちの留学を支援している基金の奨学生として参加したのですが、スタディーツアーでは、4人が1つのグループとなって、それぞれの興味関心に沿ってリサーチすることができました。大きいテーマは現地の視覚障害者について学ぶというものだったんですが、私はインクルーシブ教育や音楽教育に興味があったので、それを調べていく中で、自分の意見に対するフィードバックをいただくこともできました。

――その経験からどんなことを学んだのでしょうか?
イギリスは福祉先進国といわれるけど、資料を読むだけでは分からない面もあって。実際にはまだまだ格差があったり、課題もあったりする。一概には比較できない部分もあったりすることを、イギリスでのリサーチによって知ることができたり、学べたりできました。その経験が、教育実践分野にフォーカスしていきたいと思うきっかけになりました。

――推薦入試では志望動機書を提出しますが、菅田さんは最初からやりたいことが明確だったのですね。
自分では志望理由をはっきり持っているつもりだったのですが、さらに人に伝わるように、「なぜ自分はこういう思いを持って行動をしてきて、なぜここにいきたいのか」を伝えるプロセスを試行錯誤するなかで、本当に東大の教育学部で学びたいという気持ちが強く、深くなりました。

――面接はいかがでしたか?
先生方との個人面接では、志望理由に基づいてもっと深い思いを引き出していただけたので、すごく和やかな雰囲気で自分の意見をストレートに話すことができました。こんな人たちと学生生活をともにできたら幸せだなと思いました。


「小さい頃から関心を寄せてきた人権問題。多様な人がともに生きる社会の実現に向けて、自分に何ができるかを考えたい」――2022推薦生インタビュー 教育学部

――大学では何を学びたいと思って、学校推薦型選抜に挑戦しましたか?
私は、将来的にいろんな人が共に生きる社会の実現に貢献していきたいという気持ちがあって、ハンセン病について研究活動をしてきました。また、インクルーシブ教育にも関心があるので、そうしたことを学んだり、研究したりできたらいいなと思って志願しました。

――いつ頃からそうしたテーマに関心を持たれたのですか?
小学生の頃に『ガオ村ぐるぐる。』というベトナムの小学校を支援する内容の本を読んだのが人権問題に関心をもったきっかけかなと思います。あと、テレビでフィリピンの小学生の話を聞いた時に、何で自分と同じ子どもなのに、私は満足に教育を受けられていて、彼らは勉強する環境が整っていないんだろうと疑問に思ったことがあって、その頃から教育や人権に関心を持つようになりました。

――人権問題の中でも、特にハンセン病に関わる活動をされてきたんですね。きっかけは何だったんですか?
中学校の図書室の先生に、ハンセン病回復者であり詩人の塔和子さんの詩集を勧められて、それを読んですごく心を揺さぶられたことがあったんです。「この詩がどうやって生まれたんだろう」とか、「もっと知りたい」と思ったことがきっかけで、中学3年の時に自分が住んでいる高松市にあるハンセン病療養所に行きました。それからハンセン病について調べ始め、自分でもできることはないだろうかと考えるようになりました。

――そうした活動が、どのように推薦入試につながったのでしょうか?
高校2年の時に総合的な探究の時間で、SDGsの観点から香川県が抱える課題を解決するための政策提言をする授業があって、私はハンセン病の記憶継承の在り方をテーマに発表をしました。それがクラスの代表に選ばれて、実際に県の職員の方の前で発表することができたんですけど、その発表を聞いていた在校生や先生方からも終わった後に褒めてもらえたのがとても嬉しくて、自分のやってきた活動に自信がつきました。
それまでは、東大に推薦があるのは知っていたものの、海外で活躍している人とかばかりなのかなというイメージで、自分には関係ないと思っていましたが、そこで挑戦したいという気持ちが湧きました。

――推薦入試の準備はどのように進めていましたか?
高校1年の夏頃には東大の教育学部にいきたいと決めていて、一般入試の準備をしていたので、それと並行して推薦の準備もするような感じでした。その期間もハンセン病の活動は続けていたんですけど、高校3年の時に東大の研究室訪問っていうオンラインのイベントに参加して、そこで情報学環の渡邉英徳先生と知り合って、一緒にハンセン病のデジタルアーカイブを企画して作る活動もしていました。

――最後に、受験生や、様々な活動をしている高校生にメッセージはありますか。
高校生の間にしかできないこともあると思うので、いろんなことに積極的にチャレンジして、その瞬間を楽しんでほしいですね。あとは、新型コロナウイルス禍で難しい面はありますが、会いたい人のところに行って、その人と関わることはすごく大切かなと思います。私もハンセン病の回復者の方と実際にお話しできたことは刺激的だったし心を強く揺さぶられたので、行きたい場所に行って、いろんな人に出会って、たくさん経験をすることが大切なんじゃないかなと思います。

「推薦入試を受けてみよう」と決心したのはいいものの、どうやって対策を立てればいいのかは全くわかっていませんでした。このとき既に3年の4月。周りの友人たちの中にはすでに志望校対策に取り組んでいる人もいる中、私はまず、東大推薦入試についての情報を集めることにしました。

調べて分かったのは東大推薦入試には(1)1次審査(2)センター試験(3)2次試験という3ステップあるということです。1次審査は志望理由書や提出資料による書類審査。2次試験ではセンター試験の点数と、面接、小論文、ポスター発表などの結果で審査されます。センター試験は他の国公立大学文系と同じように900点満点で、「おおむね8割程度」の点数が必要とされています。1次審査の締切が10月末だったこともあり、私は東大の一般入試対策の勉強と並行して推薦入試の準備をしていました。

準備の中で最も厄介だったのが、私が志望していた教育学部の募集条件が「卓越した探求能力を持っていること」という非常に抽象的なものだったということです。東大の一般入試は「文科一類」「理科三類」のように科類で大まかに分けられていますが、筆記試験の問題は共通です。しかし、推薦入試は学部によって条件が異なります。

工学系や文学系の募集要項にある「高い数学の能力」や「英語能力」なら数学オリンピックや英検等のスコアで示すことができますが、「探求能力」のような抽象的なものを示すにはどうすればいいのでしょう。探求能力というものに明確な基準などあるわけがなく、私が持っているものといえば、自己流でインタビュー調査をしてきたという事実だけでした。学会発表を行ったわけでもなく、論文を書いたわけでもありません。この抽象的な条件に私はひどく悩まされてしまいました。

高校の担任に相談をしてみたのですが、初めて行われる入試とあって情報はゼロ。募集要項を見ても、周りに相談してみても何も情報が得られなかったので、私はついに開き直ることにしました。これまで自分がやってきたこと、自分が持っていることを総動員してできるところまでやってやる!と決心しました。

抽象度を逆手にとって

開き直ったところで、自分が何を持っているのか、これまでのことを見つめ直してみることにしました。前回の記事にも書きましたが、私はカンボジアでの体験をきっかけにしたエッセーで全国規模のコンテストでの受賞歴があり、その後も自己流ではありましたが、カンボジアで抱いた疑問を解明しようと外国人へのインタビューや考察などを繰り返してきました。

これまでは、自分のノートや頭の中だけにこれらのインタビュー結果や考察を蓄積してきました。もしかすると、これらを改めて文章化しまとめれば「探求力」を示す材料になるかもしれない。入試の条件が抽象的であるということは、自己流の資料であっても正当に評価してもらえるということではないか? この「自己流」が認められるのであれば、これほど自分に合っているものはないのではないかとすら思えてきました。

この頃既に季節は3年の夏になっていました。募集要項に悩まされた半年間でしたが、結果的に今後すべきことが明確になり、前に進むことができるようになりました。


推薦入試のために、「私はなぜ東大で学ぶ必要があるのか」という問いに向き合い、自分自身や他者と対話を重ねた時間や、自分の言葉で表現した経験を得たことは、12月の推薦の二次試験以降、一般入試に向けた勉強に集中するうえで、大きな支えとなりました。

推薦で合格できた要因だと思うことは?
 わからないというのが正直な答えですが、あえて挙げるとすれば、「迷う力」が私を合格に導いてくれたのではないかと思います。

  専門的な知識や、学術的に価値のある発見をした経験はなくても、自分の中で生まれた問いを持ち、人と関わりながら、その問いに対する答えを常に変化させること(=考え続けること)を苦と感じない、探究的に学ぶ姿勢を評価していただけたのかなと思っています。

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