ヤギになった

原動力は人それぞれ

「人間をお休みしてヤギになってみた結果」というエネルギー溢れる本を読んだ。

タイトル通り、著者のトーマス・トウェイツさんが、ヤギになろうとするのだけど、その悪戦苦闘っぷりが面白い。

彼のすごいところは、思いつきで始めたことを最後まで徹底的にやってしまうこと。

プロジェクトのはじめは、ゾウになることだったのだけど、これはそうそうに断念。ついで、ヤギになろうと決意して、彼は科学的方面からスピリチュアルな方面まで、様々なアプローチを試みる。

ヤギと人間の関係性を歴史を遡って調べたり、シャーマンに会いに行き、動物になりきるためのヒントをもらったり、本当にヤギになりきろうとする。そこに妥協はない。

さらに、専門家の力を借りながら、四足歩行を可能にする装具を開発し、自分の思考をヤギに近づけようとして、脳に刺激を送ってもらう危険な実験までやり遂げる。

やりすぎなくらい、彼はヤギになろうとする。

誰もやらないことをする

誰もやらないことをやるというのは、かなりのエネルギーを必要とする。

誰もやらないというか、こんなことを思いつき、かつ実行に移す人はそうそういない。

この本の中で、彼が「ヤギになる」というプロジェクトを話す場面があるのだけど、ほとんどの人の反応はポカーンといった感じ。もしくは反対、バカげていると一笑。

それでも、広い世の中、そのプロジェクトを面白いという人がいて、協力してくれる人がいる。誰も賛成する人がいないという状況は、意外に少ないのかもしれない。

つまり、協力者、賛同者はかならずいる。

まあ、それでもほとんど賛成する人がいないなかで、彼はプロジェクトを推し進める。

その熱意はどこから来るのか?

目標の立て方

彼がヤギになろうと思ったのは、「人間特有の悩みから解放されたいから」という壮大ではあるが、前向きなものではなかった。

そもそも動物になれば、将来の不安から解き放たれるかもという甘い考えから、このプロジェクトは動き出す。つまり、現実逃避に近い。

ヤギを研究して、その成果を何かに役立てたい(結果的にこの本はそうなったが)という高邁な志があるわけではない。あくまでヤギになるのは、自分から発した悩みからの解放。

そこに彼の熱意はある。

大きな目標を立てて、そこに突き進んでいくだけが目標ではないのだ。

人間特有の悩みから解放」というのは、一見弱いというか消極的に見える。けど、この消極的な目標は、自分により近いというか、実感がこもっている。

悩みは常に付きまとうし、そこから逃げたいという気持ちは、よりリアルな感情だ。だから、やらなくてはならない。

それに、悩みは解決しない限り、ずっとまとわりつく。

そう考えると、案外、理にかなった目標の立て方なのかもしれない。

本心に近いところから湧き出た人間くさい欲も、立派な目標になり得るのだ。

たとえば、「ひきこもりたい」という目標でもいいのだ(たぶん)。その実現のために、システムを構築し、やるべき課題をひとつずつクリアしていくのは、後ろ向きな目標を立てようが、前向きな目標を立てようが同じこと。

その人が頑張れるのであれば、どんな目標でも全然構わないのかもしれない。

原動力は人それぞれだ。


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