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この時代を生きて

林伸次さんが、「若い人がいくらでも情報は入手し放題なのに、全然、詳しくなろうとしない問題」について書かれていました。

そうか。無料、またはかなりの安価でなんでも手に入る今の時代に生きる子どもや学生って幸せだなあと思っていたけれど、私が思っているほどには、そういったものを活用していないのかもしれません。

いつでもどこでも好きなだけ手に入るとなると、そこまで深く何かを追求したいという思いも、なかなか生まれないのかもしれません。

以前私がインタビューした、パティシエでドラマーの前島さんも、学生時代は音楽の情報も少なければ教えてくれる人もいなかったので、自力でパーカッションを作ったり、ひたすら耳コピで好きな曲を覚えてギターを弾いたりしていたと言っていました。

「欲しいけどないから、どうにかして近いものを手に入れよう」「コツコツお金を貯めよう」というような気持ちがあるからこそ、手に入れたものがちゃんと自分の中に蓄積されていくという経験は、世代が上になればなるほど多くの人が持っていそうですね。

やはり人間は、できれば楽に生きたいという気持ちがベースにあると思うので、それに対する物理的障害が自分を高めてくれるんですよね。その障害を乗り越える力は「自分の意志の力」みたいなものよりずっと有効な気がします。

自分のことを振り返ってみると、便利なツールがないから仕方なく頑張ったことは、15年くらい前に自分でホームページを作っていたことですかね。それもソフトを使ってですけど、ソフトでさえ、ほんとうに面倒でしたね。今だと、簡単なものなら数分あればネット上で作れますよね。

あとは、高いデザインソフトを買えなくて、でもofficeでチラシっぽいものは結構作れるんだなと分かって、Excelやwordを駆使していろいろ作りました。

まあ、私にとっては残念なことに、それらに費やした時間って「あの時の苦労があってこそ、今こんなスキルが身についている」というようなものでもないんですけど。(もしかしたら日常生活の中で気づかないうちに、そこはかとなく生かされているのかもしれませんが。)

そして今私は、映画が見放題で音楽が聴き放題で、かつて知りたいけど知るすべがなかったことは、だいたい何でも調べられる中で、1日中それらに没頭しているかといったらそんなことはないですしね。いつでも見られるとなれば、気が向いたときにやろうと思う気持ちは、私も同じです。

林さん世代と、今の若い人たちと中間のようなところにいる感じですかね。

私がなんとなく思っていることです。今の30代後半~40代前半くらいの世代って、小さい頃からたぶんビデオはあって、小~中学くらいにCDが主流になって、中学~高校くらいにWindows95が出て、高校~大学くらいに携帯が登場して.......インターネットが浸透する前後の時代が繋がる期間に10代だったことで、昔に対しても未来に対しても、順応性が高い気がするんですよね。(昔からパソコンやいろいろな機械に明るかったもっと上の世代の人もそうだと思うのですが。)

だから、もし今突然30年前のような生活に戻ったとしても、なんだか楽しく生きていけそうな気がするんですよね。そうなっても、本を読んだり、料理を追求したり、野菜を作ったり、身体を鍛えたりするんじゃないかなあと思います。

5年後がどんな世の中になっているのか、現時点では考えられないようなものもきっと登場したりしていて、楽しみであるとともに、今ある便利さが突然何らかの理由で手に入らなくなったとしても、ネットを介さずとも楽しめそうな、まだやったことのないことがたくさんありそうです。

そう思えるようになったのも、一度便利さへ一直線に向かう時代を生きて、今の便利さにもどっぷりと浸かったからなんですよね。

いろいろなことが心配されてもいる未来ですが、私はどんな時代が来ても、なんとか楽しく生き抜けるような気がしています。

いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。