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古着・ヴィンテージショップ経営 川和田来夢さんにお聞きしました。

中学生の頃から古着が好きだった川和田来夢(かわわだ くるむ)さんは、現在 千代田線 千駄木駅から徒歩1分の場所で『 KILIG vintage(キリグヴインテージ)』という古着店を経営されています。元々はオンラインショップから始め、その後は会社を辞めて実店舗を持ち、約1年半後には新店舗に移転されました。お話を伺う中で、人がただひたすらに好きなものを追求する姿勢とその楽しさについて、改めて深く考えさせられました。

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ー 川和田さんは、いつから古着が好きだったんですか?

雑誌『Zipper』を中学生くらいからずっと読んでいて、高校生の頃は下北の古着屋にあるような、安くて他にない感じのちょっと個性的な服が大好きでした。そこから大学生や会社員になっても古着はやめられず、今に至ります。

ー 元々は会社員だった川和田さんですが、お店をやりたいと思ったのはいつ頃ですか?

会社員だった頃は、生まれ変わったら別の仕事したいな...と思っていたんですよね。大学時代の就職活動では、やはり友人たちもみんな就職して会社に入るのが普通という環境だったので、当時からフリーランスとか自営業という考え方は、自分とはまた違う道だなと思っていました。

会社に入って6年後くらいに、そういえばネットで古着を売ったりすることはできないのかなと思って、検索をしていたら、当時まだサービスが始まったばかりのBASEをたまたま知ったんですね。

BASEは無料でとても簡単にネットショップを開くことができてたので、2017年から会社員と並行して古着の販売を始めました。

ー そもそも古着ってどうやって仕入れるんですか?

最初は、日本の卸しさんに自分でアポイントをとって、そこから日本の70年代くらいの服を仕入れてBASEで販売していました。でも、販売を続けているうちに、やはり日本だけではなく海外の洋服を扱いたいと思うようになってきたんですね。

その時たまたま、大学時代にバイト先が同じだった女の子がロサンゼルスに住んでいたんです。私は、アメリカで古着と言えばなんとなくロサンゼルス、というイメージがあったので、彼女に相談してみたら、「古着マーケットたくさんありますよ、うちに泊まっていいのでぜひ来てください!」と言ってくれたんです。

それで、会社のほうは一週間ほど有給休暇を取ってロサンゼルスに行ったのが、海外の服を仕入れ始めたきっかけです。

服1

ー 今年になって、私もBASEを販売をする側でちょっと使ってみたのですが、なかなか難しいなと思いました。当時の売れ行きはどうでしたか?

私がBASEを始めたのは、BASEのサービスが始まってすぐぐらいだったんですね。今は、古着やビンテージのお店はBASEにもたくさんあるのですが、当時は少なかったので見てくれる人が結構いたんです。そのときから今でもずっと買ってくれている人もいます。

ー 当時BASEで古着が結構売れると分かって、実際にお店を出してみたいなと思ったんですか?

オンラインでネックだなと思っていたのが、お客さんの顔が見えないのと、試着してもらえない・触ってもらえないということだったんですね。だから、狭くてもいいから、BASEで買ってくれているお客さんが、商品を直接見られる場所があればいいなと思っていました。

ー なるほど。ところで、出店したい街って、意外に高校時代に好きだった下北沢とかではなかったんですね。

私は、出身は池袋の方なのですが、前の会社では転勤もあって、結婚して東京に戻ってきたタイミングで東東京に住み始めたんですね。それから谷根千(谷中・根津・千駄木)界隈がすごく好きになって、お店をやるならここかなと思っていました。

古着の街に出店したいというよりは、自分が知っている街で自分の店を知っている人が試着できる場所・ものを見られる場所として機能したらいいなと思っていました。

多くの人にたくさん売れればいいと言うよりは、丁寧にやりたいと思っていたので、最初のお店は3畳という狭さだったのですが、ここでもいけるかなと思いました。

ー 以前もお聞きしたことがあったのですが、そこはお店を初めてやるような人にやさしい物件だったんですよね?

そうです。谷根千は観光地なので家賃は結構高いのですが、そこは建物を3店舗に分割することで家賃を抑えめにした物件だったんです。

ー その場所を見つけて、「ここだ!」という感じでしたか?

やりたいという気持ちと、家賃が発生する不安が半分ずつありましたが、周りの人が「やりたいなら、やってみたら」と背中を押してくれたので、いちかばちかやってみました。

ー 結果的にすごくうまくいきましたね。

そうですね。ありがたいことに、結構な数の人に来てもらったし、移転した今も、お店を始めた当初からのお客さんが来てくれていたりするので、最初の店で営業していた一年半もすごく大事な時間だったと思います。

前の店

ー 今は人を雇っているんですか?

1年半ほど手伝ってくれているアルバイトの方が1人います。今はそこまで忙しいという感じではなく、BASEの梱包もそれなりにありますが、梱包も好きなので楽しくやっています。

ー 店を始めたばかりの頃は、BASEで知って実店舗に来てくれた人が多いんですか?

半分くらいがBASEで知ってくれた人でした。店舗があった谷中銀座は人が多いので、ビンテージという看板を見て、興味を持って2階に上がってきてくれた人がもう半分ですね。

ー 一年半続けて、これは手狭だなという感じになったんですね。

そうですね。ただ、今店は広くなって路面店にもなったけど、思想的なところは最初と同じで、ネット販売もおろそかにしたくないと思っています。ずっとネット販売で支えてもらっていたので、オンラインで見た人が来れる場所だったらいいなというのは今も同じです。

ー もっと広い店舗にしようと思ったときに、物件はいつから探し始めたんですか?

去年の秋頃からです。ずっと狭いなとは思っていたので、店を始めて一年後くらいから移転してもいいかなと思って探していたところ、今年の1月に物件を紹介してもらって、2月29日に移転してオープンしました。

ー お店はどのくらいの広さになったんですか?

9坪で、前の店舗のだいたい6倍程の広さになったと思います。以前がとても狭かったので、今はちょうどいいなと思っています。

今の店

ー 今考えると、世の中が結構大変な時期の移転でしたね。

移転したばかりの3月中は、お祝いという感じでお客さんもまだ結構来てくれていて嬉しかったのですが、3月末くらいからだいぶ動きが変わってきました。4月の中旬からは店の近くでも新型コロナウイルスの感染者が出たりということもあったので、店を一度閉じようと思って、そこから5月末までクローズしていました。こればっかりはな、というかんじで。

ー 当時は、オンラインと実店舗の売上の比率はどのくらいだったんですか?

オンラインと店舗がだいたい、2.5 : 7.5くらいだったのですが、お店を閉めたら店舗分が結構オンラインに流れたというか。全体の売上は減ってはいましたが、家賃はなんとか払えるくらいの売上はありました。

ー みんなオンラインでいろいろ買いたい時期でしたよね。オンラインを大事にしてきてよかったですね。

そのときは本当に感動しました。店を立ち上げる前から買ってくれている方もいて、そういう方の注文とか、知っている方のお名前を見るとすごく嬉しかったです。

ー ところで、ポップアップもいろいろな場所でやっていたと思うのですが、あれってどうやったらできるんですか?(※ポップアップ:ポップアップストア。期間限定の店舗。)

お誘いいただくパターンと、自分から申し込むパターンがあります。街で行われているビンテージのイベントは、申込みフォームがあって、採用されると参加できます。あとは、BASEが主催でポップアップしたい人を募集していて、応募して採用してもらい、渋谷のマルイと福岡の天神コアというところでやりました。

また、もともとお客さんだった方に誘っていただいて、合同のポップアップをしたこともあります。

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ー このあいだ、雑誌に自分の店の服が載ったと書いてありましたよね。ああいうのも、電話がかかってきたりするんですか?

あれは、突然インスタに「雑誌で使いたいのでレンタルさせていただけませんか」というDMが来て、こんなふうに見ていてくれるんだ!と思って驚きました。私はそのスタイリストの方の作品が好きで、インスタもフォローしていて、実際に連絡が来たのはアシスタントの方からだったので、ご本人が見ていたのかは分かりませんが、すごく嬉しかったです!

ー 川和田さんは、実店舗をオープンしたと思ったらすぐ広い所に移転して、ルミネやマルイなどにも期間出店をしていたり、ただすごいなと思って観ていましたが、ひとつひとつお話を聞いていくと、着実に進まれて来たんだなと思います。

すごくないですよ。周りに助けてくれる人がいたからで、自分の力ではないという気がします。

ー それはたとえばどんな人ですか?

ロサンゼルスの友人と、さらにその友人2人にはとてもお世話になりました。1人はビンテージの仕事を30年以上している方で、私にアメリカでの仕入れ方を教えてくれた上に、一緒にロサンゼルスからポートランド、シアトルまで車で連れて行ってくれました。

もう1人は、アメリカのビンテージショップでお手伝いをしていて、その方にもいろいろ助けてもらいました。この3人がいてくれたから私は今店ができているので、とても感謝しています。

ー 仕入れで初めてロサンゼルスに行った後にも、いろいろな国に行っていましたよね?

仕入れの中心はアメリカなのですが、元々海外に行くのが好きで、ヨーロッパも国によってはすごくおもしろい服がたくさんあるので、毎年1,2箇所は行きたいと思っているんです。

ー これまで仕入れでどんな国に行ったんですか?

アメリカに4回、デンマーク・スイス・ドイツは一度に、あとはスウェーデン、ポルトガル、ニュージーランドにも行きました。 

ー アメリカで車の運転もしていましたよね!

日本では、車は今も月に1回くらいしか乗らないし、初めてアメリカで運転したときはペーパードライバーだったんですね。最初は運転が怖くてタクシーで回っていたのですが、お金もかかるし荷物も多いので、これはもう自分で運転するしかないと思ってぶっつけ本番で。最初は怖かったです。

ー そうですよね。ちなみに英語はご堪能なんですか?

全然喋れません!ちょっとした日常会話ができるくらいです。笑

ー それでもレンタカーを借りて、乗って、すごいですね。でも大好きな服のためですもんね。

なんとかなるもんです。なるべくその場所にあるものをと、お宝探しみたいに思っています。現地で服を見られるのは生きているって感じがしますね。生きがい。だから今は海外に行けなくて残念です。

ー 買った服はどうやって送るんですか?

お世話になっている運送会社さんがあって、そこまで車に全部に乗せていって、そこでパッキングをして送ります。税関の関係で何を何枚と表記しなければいけないので、1日かかったりします。

ー 仕入れた古着は、店頭に出すまでにメンテナンスなどをしているんですか?

基本的には一度洗って、アイロンを掛けたり、ボタンやほつれも直せるところは直しています。

ー 一度に何着ほど買付けるんですか?

私は少ない方だと思いますが、300~400着を4~5日くらいかけて買付けています。

ー その量はレンタカーで運ぶしかないですね。そういう仕入れの手順はどうやって学んだんですか?

これも、ロサンゼルスの恩師に教えてもらいました。一人じゃ全然できなかったと思います。最後の買付けで、やっと運転も含めて一人でもできるようになって、次も早く行きたいいと思っていたのに、コロナの影響で行かれなくなってしまいました。

買付

ー コロナ禍でいちばん大変だったことはなんですか?

いろいろありましたが、いちばん大きいのは、やはり買付けに行けないことです。一応アメリカにつてがあるので、向こうの古着を送ってもらったり、国内で仕入れたりもしていますが、やはり自分が行って自分で手にとって見つけることを一番大事にしていたので、そこは悲しいですね。

ー いつもどんな観点で仕入れる服を選んでいるんですか?

こんな人が着たらかわいいだろうなとか、似合う人がいるだろうなというものだけを集めています。その上で、更にお客さんに共感していただけると、嬉しい、よかったなと思います。

ー そういえば、お店にバーを併設したいとも言ってましたよね。

お酒と服が好きなので、いつかできたらいいなと思っています。今はちょっと微妙ですけど、土日だけ露天とか出せたら楽しいなとか思います。もう少し先になると思いますが、野望ですね。

あと、以前から絨毯も取り扱いたいと思っていて、最近やっと販売することができました。今は第一段階です。

ー 絨毯も海外から仕入れているんですか?

今はトルコから仕入れています。昔のラグを綺麗にしたり、クッションにリメイクしたりしているところがあって、そこから選ばせてもらっています。

キリム

ー 最近デザイナーの方とコラボして、絨毯をリメイクした服を作られていましたよね?かわいかったです。すぐ売れていましたね。

リメイクアウター

はい。そして今はパキスタンの方と日本の仲介をしてくれている方とで、来年の春を目指してまた新たに服を作っています。

ー 私はKILIG vintageさんのセレクトがすごくツボで、3日に一度くらいサイトを見ています。見ているだけで楽しい!

嬉しい!はげみになります!私は洋服の写真を撮るのも好きで、このかわいさがちゃんと伝わるように撮りたいと思っています。一日に何枚も撮れないのですが、観るのも楽しんでもらえると嬉しいです。

ー こういう、一点ものを扱う方に対して以前から思っていたのですが、全部とっておきたい!みたいな気持ちにはならないんですか?

その気持ちが原因で出せていない服もあります。気持ちの整理がついたら出すという感じです。観ていてかわいいという観賞用みたいな感覚ですよね。でも、着てもらわないとな、という気持ちになったら店に出します。

洋服は賞味期限がなく、ビンテージや古着は流行り廃りもないから、自分のところで温めておけるのもいいところだと思っています。全部かわいいと思って買っているので。

もう、全員本当にかわいいけど、決断をしたあとは、よかったねっていう気持ちでこころよく送り出します。

ー 楽しいですね。私もKILIG vintageさんのBASEを観ていて、「あーあの服売れちゃった...」と思うけど、また観たことのない素敵なものが入って来るはずと思ったりしています。

その信頼してくれている感じが嬉しいです!

ー これからについて、思っていることを教えて下さい。

コロナになって、多くの人は出かけることが減ったので、「服を買っても着ていく場所が無い」とよく聞いて、家で着てテンションが上がる服ということを考えていました。

テレワークをしている方も増えて、以前ほど着飾らなくなったとも聞きますが、私は家で化粧をして洋服を着替えると気持ちが変わる感じがあるから、そういうときに「これを着たい」と思ってもらえる服について考えていました。今売っているものが、誰かのテンションが上がる服になればと思います。

やりたいことはいろいろあるのですが、自分の手からあふれないようにしていきたいです。ゆっくりでいいから、一個ずつ丁寧にちゃんといいものを集めて、届くべき人に届くようにしていきたい。本当にいいって信じられるものを、届けたいと思います。

-終-

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KILIG vintage
・web site
https://www.kilig.jp/
・instagram
https://www.instagram.com/kilig_vintage/
・twitter
https://twitter.com/kilig_vintage

・実店舗
東京都文京区千駄木2丁目34-5

いろいろな方にインタビューをして、それをフリーマガジンにまとめて自費で発行しています。サポートをいただけたら、次回の取材とマガジン作成の費用に使わせていただきます。