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小説サンプルテキスト

【作品概要】

・対象性別や年代を問わない
・1,000文字以内
・少し切ない物語

【サンプルテキスト】

「新世界よりの傷跡」

目を開けると、空は夕日に染まり始めていた。校庭には、ドヴォルザークの『新世界より』が流れている。そうだ、早く家に帰らなければならない。だが、身体を動かそうとすると脚が痛む。視線を向けると、ガラスの破片が太ももに刺さっているのが分かった。

駆けつけた村上先生によると、私は三階の図書室から窓枠ごと落ちたらしい。そういえば、委員会の仕事中に慎二と喧嘩をした。国語の時間に音読した『ごんぎつね』の解釈で、口論になったのだった。肩を突き飛ばした彼の手は思いの外力強かった。すべてが他人事のようで、次第に目がかすんでいく。救急車のサイレンが遠くで響いていた。

慎二とは、地元を離れた今でも連絡を取っている。電話はいつも向こうからかかってきた。

「なあ、元気にしてる?」

彼が言いたいことは別にあるんだろう。だけど、一生切り出すことはないような気がする。こちらだって、核心には触れてやらない。太ももには、あの日に彼がくれたギフトがある。指先でそっと撫でると、痛むのは胸の方だ。

【プロフィール】

花見田ひかる(ハナミダヒカル)
2014年 シナリオライターとして活動開始。
ゲームのシナリオ・キャラ設定・プロット等の執筆を中心にお引き受けしてまいりました。
男性向け・女性向け・全年齢向け、いずれも執筆可能です。
大学では小説・脚本の創作手法を学んだため、ゲームのシナリオ以外でも幅広い物語作りのお手伝いが可能です。近年は小説やドラマCD脚本・音声作品の台本を書く機会も多くなっております。
また、別名義にて企業のプレスリリース、WEBメディアのコラム記事・インタビュー記事の執筆も行っているため、エンタメ系から真面目な文章まで対応できます

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シナリオライターの花見田ひかるです。主に自作小説を綴ります。サポートしていただけると嬉しいです!