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少しでも「まし」な選択肢を選び続けるしかない恐怖(海辺の彼女たち)

藤元明緒監督「海辺の彼女たち」を観た。

ストーリー

技能実習生として、来日した3人のベトナム人女性。搾取されていた職場から抜け出し、違法な手段、ブローカーの紹介で、新たな職に就く。しかし、新たな職場・居住場所も劣悪な環境だった。そんな中、3人の女性のうち一人が体調を崩す。彼女は、日本に入国前に妊娠をしていたことが発覚した。

今、日本社会に存在する課題

88分の短い映画なのに、ずっしりと重たい作品だった。

恵まれない母国の経済環境、家族と離れ離れになる寂しさや不安、頼れる人がほとんどいない心細さ、想定外で稼げない状況への焦り、少しでもましな選択肢を選び続けるしかない恐怖、頼れるセーフティーネットが無い絶望感。

彼女たちがいるのは、どこか遠くの国でも、すごく昔のことでもなくて、今、自分が生きている日本の社会だと思うと、とてもしんどくて、申し訳ない気持ちになった。

妊娠と出産の環境

来日する実習生は、20代から30代前半が多いという。ちょうど妊娠・出産を迎える時期なのに、彼ら彼女らが、安心して妊娠・出産できる環境は整っていない。

元の実習先を脱走してしまったため、医療にアクセスできないし、仮に病院に通えるようになったとしても仕事を休んでしまったらお金が稼げない。

えり好んで進む道が無い中で、少しでもマシな選択をし続ければ、子どもを産むという選択は出来ないだろう。

技能実習制度について

そもそも技能実習制度とは、途上国の人材に日本で働きながら「技能」を身につけて、母国の経済発展に活かしてもらうための制度である。人手不足を解消するための安価な労働力として、技能実習生を受け入れることは禁止されている。

また、すべての技能実習生が彼女たちのように、過酷な状況で働いているわけでもないという。

受入れ企業である実習実施者、実習生受入れの監督管理を行う管理団体の担当者、人材の募集や送出しや事前教育を行う送り出し機関。それぞれの団体の善し悪し、また担当者の善し悪しで、運が良ければ問題なく技能実習生として働けるし、運が悪いと過酷な環境で働かざるを得なくなる。

技能実習生全員が過酷な状況で働いているわけではないといっても、技能実習生受入れの仕組みには課題がまだまだ沢山ありそうだ。

わたしができること

今、起きている課題。身近なところで起きている課題。映画を観て、自分に何かできることが無いかを考えてみた。しかし、考えてみても何が出来るのか、なかなか思い浮かばなかった。

微力だが出来ることといえば、技能実習生や日本で働いている外国人に興味関心を持つこと。彼ら彼女らと、一人の人間として向き合うこと。課題や優れた事例を発信していくこと。

まずは小さなことだけれども、自分に出来ることからやってみようと思う。

参考記事

The Asahi Shinbun GLOBE+「技能実習生が迫られる辛い選択、日本の女性にも通じる 映画『海辺の彼女たち』の世界」

Global HR Magazine「外国人技能実習制度とは?技能実習生を受け入れる際の基礎知識」