演劇は脳を育み、創造の世界を作る。ー「脳科学から見た演劇活動」〜何故子どもたちに演劇活動が必要か?〜
こちらの講演会に参加してきました!
オンライン・オフライン両方で開催され、折角なのでととしま区民センターまで足を運んできました。今年初めて山手線乗った気がします。
この記事では、工学博士・医学博士/玉川大学名誉教授の塚田稔先生がお話してくださった「脳科学から見た演劇活動」〜何故子どもたちに演劇活動が必要か?〜の内容についてまとめます!
人間の神経回路のは、他の動物と異なる特徴を持っている
私が理解できた範囲での解説になってしまうので、「ここ間違ってるぞ!」というのがあればコメントなりで教えてください!
人間の脳は、美しいものを見ると活性化する部位があるそうです。
前頭葉の中の扁桃体(情動的な意味を司る)、帯状回(情動を制御する)、線条体(情報を受けた報酬としてドーパミンという快楽物質を出す)が、美しいものをみている脳のMRI画像で活性化するそうなのです。
人間がお母さんのお腹の中で体を作るとき、脳内では神経回路が作られて行きます。神経の最小単位は「ニューロン」と呼ばれるもので、これが割とランダムにくっついている状態で生まれてくるのです。
しかし、生まれてくると幼児期に「刈り込み」という作業が行われて不要なニューロンのくっつきが切り落とされます。
「小さい時にいろんな経験をさせてるのが大切!」というのは、この刈り込みが行われてしまうので必要ないと判断されたものは切られてしまうからみたいです。
人間として生きているとあまり感じないかもしれませんが、人間の視覚や聴覚・嗅覚は他の動物に比べてかなりお粗末に作られています。
このため、一つの情報(視覚だけなど)からではなく複数の情報を掛け合わせて推理することが必要になってるんですね。これって超すごいことみたいです。
例えば、チンパンジーと人間の赤ちゃんに、サルの輪郭のみ描かれた紙とサルの人形を見せてデッサンさせたら、人間は描かれていない目や鼻を描くのに対し、チンパンジーは輪郭にもある毛を描くそうなのです。
「ない」ものを補える人間と「ある」ものを付け足すチンパンジー。これはかなり大きな違いです。
チンパンジーはいわばリアリティに満ちた世界に生きていて、人間は経験や予測・イマジネーションがあり色々な世界が作れるということだそう。
この「経験や予測・イマジネーションから新しいもの(描かれていないもの)を生み出す」というのが人間の特徴、ということです。
AIと人間は思考の仕方が違う?
昨今、AIによって様々なことができるようになっていますよね。「いつか人間の仕事が全て奪われてしまうのではないか」という不安がある方もいるでしょう。
AIが仮想現実の世界を作っていますが、人間にも仮想現実が作れると塚田先生はおっしゃいます。
例えば夢の中。誰しも夢で空を飛んだりゾンビに追いかけられたりしたことはあると思います。(この前私は夢で本を読んでいたら挿絵からお化けが飛び出して肝が冷えて起きました。)現実でできないことができる空間というのが仮想現実、ということらしいです。
クリエイティブと呼ばれる、絵を描いたり歌を歌ったり芝居をしたりすることは、現実世界の対応を考えながら行います。しかし、クリエイティブの全てが現実に起こり得ることではないですよね?ゾンビが本当にいたら怖いです。現実世界との対応を考えながらクリエイティブなものを作るというのが芸術、ということになるのかしら。
塚田先生は「芸術(音楽・美術・演劇など)が脳をトレーニングする」とおっしゃっていました。
ニューロンやシナプス(脳の神経回路)をたくさんくっつけて創造することは、人間にしかできない「ないものを作る」ことになります。
「演劇は脳を育む」と言ってもいいのかもしれません。
新しい情報を生み出す脳
人間の脳は、既存の情報から新しい情報を生み出すことができます。「ないものを作る」に関連しますね。
今までの情報をつなぎ合わせたり、もともとある情報に全く異質のものを組み合わせたり、考えに行き詰まると全く違う価値を生み出したり。
1+1=2ではなく、もっと大きな情報をとったり作ったりできる脳が人間が持っているものです。
演劇をしても、特に脚本家さんなどは既存の情報に全く違う要素を取り込んで大きな創造の世界を作っているのではと思います。
人間の脳は「産み出す力」がとても強いということが言えます。
この産み出す力というのが芸術に密接に関わっているのではないでしょうか。
既存の考えに行き詰まると、人間の脳はパラダイムシフトを起こします。その分野で当然と思われていたことに全く違う価値観を提示し、劇的に変化させることができるのです。
塚田先生は、演劇はパラダイムシフトを自然に行なっているのではないかと。
既存の物語に新しい解釈を加えて上演したりって結構ありますもんね。
役者さんが脚本を読む時にだってパラダイムシフトは起こっていると思います。
パラダイムシフトをしながらクリエイティブな世界を作る。
これが人間の本質なのです。
演劇活動(表現・鑑賞)はどのように脳を育てるの?
演劇の特徴として、全ての感覚を使って人間や空間とコミュニケーションが取れることが挙げられます。「生の魅力」というやつですね。
ラジオやテレビ・本では全ての感覚を使うことができません。情報が欠けてしまいます。人間の五感はお粗末なものですから、なるべく多くの情報を手に入れたほうが良い。”場の情報”を脳内に育める芸術は演劇なのです。
また、演じることで出てくる場の雰囲気を演劇は感じることができます。
音と痛みが連結して感じることができたり、観客と舞台でコミュニケーションができたり。
塚田先生「演劇がすごいのは、自分じゃないものを演じなくてはならないこと。演劇をしている人の脳をMRIで撮影すると、自分を主張する脳の部位が非活性化する。他人の情報が自分の中に入って新たな自分を見つけることができる」
自己進化の原理という、自分にないものを取り込んでもともとある情報を統合することによって新たなものを作り出せる、という考え方があります。
演劇はこれを自然に行うことができるのです。
演劇とは、人間は何かを知ること
演劇は、仮想現実の世界で遊ぶことを教えてくれます。これによって、人間が持つ自分の経験と外部の情報を組み合わせて新しいものを創造したりする力を存分に発揮することができるのです。
ということは、演劇活動は人間が生存のために獲得した「情報の結合」と「創造の世界」を使うかなり本能的な欲求に近いものなのか……?と思いました。
ヘブの法則という、現在のAIの元になる原理があります。
これは、物事の共通のものを探して学習するというのが基本的な考え方です。エリートを育成して代表にするという考え方ですね。
塚田先生は「時空間学習即」を提唱しています。
これは。違いを見つけて脳に記憶として埋め込んで、違いを認め個性を大切にするというものです。
今のところ、違いを見つけるAIは開発できていないらしいです。
演劇は、人間だからできることなのではないか。
様々な情報を組み合わせて、創造的な世界を作って。
人間らしい脳を育むのに演劇はとても有効手段であると思いました。
いただいたお金は!!!全て舞台裏のためのお金にします!!!!殺人鬼もびっくり☆真っ赤っかな帳簿からの脱却を目指して……!!!