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味覚過敏との付き合い方について考える。

 私の母は12年半前に脳の病気になりました。
 その病気を発症するにはずいぶんと若い年齢なのだそうです。
 現在は、後遺症である半身麻痺、失語、嚥下、味覚過敏と向き合いつつ暮らしています。

 今日は、その中のひとつ、味覚過敏についてのお話です。
 母は、甘味、酸味、塩味、辛味、うま味の五味の中でも、塩味を非常に強く感じます。

 おにぎりのお塩がしょっぱい。
 お味噌汁がしょっぱい。
 肉じゃがのお醤油がしょっぱい。

 どれだけ薄味に調理しても、とにかく何でもしょっぱく感じてしまいます。
 時には、何の味付けをしていない料理でさえも、しょっぱく感じるのだそうです。卵とか。

 そこで、私は比較的甘みを多く含んだ食材を選ぶことにしました。
 キャベツ、レタス、大根、白豆、豆腐、スイカ、りんご、いちごなど。
 白米も甘いのですが、普通に炊いたご飯は嚥下が難しく、お粥にすることが多いです。
 元々はご飯が大好きな母でしたが、現在ではやわらかく似たうどんやパンを好みます。今の季節だと、やわらかめの素麺がおいしいそうです。

 お塩やお醤油などの調味料も、「良いもの」だと舌に不快感はないようです。「ただのグルメかよ」と思ったりしますが、「良いもの」は体にとっても「良いもの」なのではないかと思います。
 母は本能的に「良いもの」を見分ける能力を持っているのかもしれません。

 今、一番好きな食べものはピザだそうです。
 いや……めっちゃ味濃くない? ピザぞ?
 本人いわく「おいしいお店のピザはおいしい」と。
 塩味がしっかりした食べものでも、「良いもの」なら受け付けるそうです。ただのグルメかよ(2回言った)。

 個人的に厄介なのは、母の味覚が「日替わり」であること。
 その日の体調によって、甘いものもしょっぱく感じる場合があります。
 本人の好みに合わせて料理を作ったつもりでも、その日の味覚に合わず、一口しか食べてもらえないことも。
 はじめの数年は心が折れそうになりましたが、10年も経てば慣れたもので「今日は味覚ガチャ失敗か」という気持ちで過ごしています。
 味覚ガチャでハズレを引いた日は、お豆腐を温めたもので済ませるなどしています。
「明日は美味しく食べられますように」と祈りながら。

 幸いにも、最近は食べられる食材が増えてきて、私も母も色々と模索しながら「今日はあれ試してみようか」と、食事を楽しんでいます。
 ちなみに今日の夕食は、やわらかく茹でた素麺に半額セールのお刺身を載せたものでした。デザートはカットのスイカ。

 明日も美味しく食べられますように。おやすみなさい。

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