焙煎機の技術的メモ2:焙煎機の照明、LEDで本当にいいの?
結論:私はまだ当分、白熱式レフランプを使い続けます。
焙煎機にはテストスプーンや冷却槽を照らす位置にスポット照明が設置されています。また、装備されていない焙煎機であっても、ご自身で設置する方が大変多いと思います。
この場所に用いる照明器具は、以前でしたら「白熱電球(白熱式のレフランプ)」一択でした。
しかし、ご存じの通り、近年のLEDの急速な普及により、身の回りの至る所の照明がLEDに置き換えられています。
焙煎機のスポット照明もその例に漏れず、メーカー自らがLEDを標準装備化したり、焙煎人の判断であとからLEDに交換する例が増えているように思えます。
確かにLEDには白熱電球にはないメリットがあります。
同程度の明るさならば消費電力が白熱電球の約1/10、さらに寿命は4万時間、これは白熱電球の20倍と圧倒的です。
付記:LEDの種類、製造メーカーの技術力、価格帯などにより消費電力や寿命には幅があります。例に挙げた数値は、有名メーカーが公表している数値を参考にしています。
これからの脱炭素社会を実現する上でも、個人的な支出の上でもこの魅力は捨てがたいものがあります。
しかし、焙煎をする上でもっと大切にしなければならないことがあります。
それは「自然な色味」を表現できるかどうかです。
では平均演色評価数(Ra)に目を移します。
この評価指数が100に近いほど太陽光で照らされたときの色味に近いことを意味します。
家庭用として販売されているLEDランプのRaは、パナソニック電工のLEDレフランプで84、先日私が購入したオーム電機のもので83です。どちらも現行のLED照明の中では優れた数値です。
一方白熱電球(白熱式レフランプ)のRaはといいますと
白熱電球のRaは100、つまり太陽光と同じ色味が表現できるという意味です。
付記:ややオレンジ掛かって見えるのは白熱電球の色温度が2,500Kほどと朝日や夕日の色温度に近いからです。
先日、ものは試しとオーム電機製のLEDレフランプ(100W相当、Ra83)を購入して取り付けて見え方を比較してみました。
上が白熱式のレフランプ(パ ナソニック電工)、斜め下がLEDレフランプ(オーム電機)です。
同じような色味に見えますが、よく見るとLEDレフランプの方が光源そのものの発色ではなく着色されたような色味に感じます。
また、LEDレフランプは多数の小さな光源で構成されていることが判ります。
次に照らされた面の状態です。
よく見るとLEDレフランプで照らされた面は青みがかって見えます。
これでは焙煎中や焙煎後の豆の色の正しい評価は出来ません。
またLEDレフランプは多数の小さな光源で構成されているため、投影面にくっきりとした影が出来ず、豆表面のしわや凹凸などのテクスチャの確認もしにくくなります。
この点においてもLEDレフランプは白熱式のレフランプに及びません。
平均演色評価数(Ra)100と83の差は歴然です。
焙煎機のスポットランプも、ハンドソーティング用のアームライトも、まだしばらくは白熱式レフランプのお世話になると思います。
○私のLEDレフランプへの入れ替えの条件
Ra98以上、そして点滅(フリッカー)しない、5,000円以下。
これらが実現したら喜んで宗旨替えします。
付記:LED(蛍光灯も含む)は、西日本では1秒間に120回、東日本では1秒間に100回点滅しています。肉眼で認識できないだけです。しかし眼精疲労の原因になります。
2024/03/21追記:実は白熱電球もフリッカー(チラつき)はあるのですが、交流電流の周期(関東50Hz、関西60Hz)にフィラメントの点滅が追いつかず、完全に消えてしまう瞬間が無いため、明るさの変化が穏やかなものになり、結果眼球への刺激が少なくなるものと思います。
サポートは謹んで辞退させて頂きます。お気持ちだけで十分幸せです。