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焙煎機の技術的メモ5:温度センサの清掃(メンテしないとペケですよ)

業務用焙煎機には最低でも1個、多くの場合2個の温度センサが設置されています。
センサの種類は、温度がデジタル表示されるタイプのものは熱電対センサであることがほとんどだと思います。
熱電対センサはSUS(ステンレス)系金属の頑丈なシースに包まれており、高温に耐え、レスポンスもよく、そして大変堅牢とまさに焙煎機にうってつけのセンサです。

過酷な環境に耐える熱電対センサですが、定期的に清掃しないと不具合を発生します。

1.豆温度センサ:焙煎ドラム内にセンサが設置され、焙煎中の豆と直接接触することで豆の表面温度を測定するもの。

豆温度センサ

付記:温度センサが1個しかない焙煎機の場合はこの豆温度センサだけ。

2.排気温度センサ:焙煎ドラムの直上に設置され、焙煎ドラムから出て行く排気ガスの温度を測定するもの。

排気温度センサ

いずれの温度センサも使用とともに汚れが付着して行きます。

豆温度センサのほうが汚れが激しく、カーボンが被膜のように硬く付着します。

豆温度センサのシース(3ヶ月使用)

排気温度センサの汚れは、排気ガス中に浮遊する、油分を含む柔らかい粉がふわっと付着したような感じです。といってもサンドペーパで研かないとと落ちない程度にはしっかりと付着しています。

排気温度センサのシース(3ヶ月使用)

というわけで、当店では3ヶ月毎に温度センサの清掃を実施しています。

清掃するのに用いる道具は
①スクレーパ
②荒いサンドペーパ
です。
まずスクレーパで汚れをある程度削り落としてからサンドペーパで仕上げます。それだけです。
付記:最初からサンドペーパでもOKです。

荒いサンドペーパで仕上げる

そして清掃後の写真がこちら。

温度センサ(清掃後)

○清掃せずにおくと発生する不具合とは

①清掃するために焙煎機から抜き取ろうとしても、付着したカーボンが邪魔をして抜けなくなる。

②指示温度が徐々に変化する。

指示温度が徐々に変化することを知ってる人、どれだけいるだろうか?

具体的にどのように変化するかと言いますと、
1ハゼ開始温度くらいまでは、清掃直後と比べ豆温度計の指示温度に変化はありませんが、2ハゼ開始温度位の高温になると差が出てきます。具体的には、温度センサを清掃してからの期間が長くなるほど指示温度が上がって行きます。
例えば清掃直後は210℃で2ハゼが始まっていたのに、徐々に211℃、212℃と2ハゼが始まるときの指示温度が高くなって行きます。そして清掃すると最初の210℃に戻ります。

指示温度が徐々に変化する原因は、付着したカーボンが蓄熱するからではないのかな?と勝手に考えています。

参考:長期間使用した自動車用ガソリンエンジンに発生する不具合のひとつとして「プレイグニション(過早点火)」という現象があります。これは燃焼室内に堆積したカーボンが蓄熱して点火源となり、スパークプラグで点火するより前に混合気が燃焼してしまう現象のことを言います。プレイグニションが発生すると、圧縮上死点よりも前に最高燃焼圧力に達してしまい、エンジンはカリカリという音(ノッキング音)を発し、エンジン出力が大幅に低下します。
プレイグニションが、熱電対温度計の指示温度が徐々に変化する原因が、熱電対センサへのカーボンの付着と考えた根拠です。

正解をご存じの方がいらっしゃれば是非教えて下さい。

付記:いずれにせよ、熱電対温度計はそのときその条件下での正しい温度を指示しています。条件が変わるから指示温度が変わるのです。
指示された温度をどのように解釈し、補正し、焙煎の判断の要素として役立てるか、焙煎人の真価が問われるところです。

というわけで温度センサは定期的に清掃しましょう。



サポートは謹んで辞退させて頂きます。お気持ちだけで十分幸せです。