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応援してもらえる人してもらえない人

先日書いたように、私は推しへの失恋ホヤホヤ女である。当初は静かに現実を受け止めつつも、動揺を隠し切れないでいた。

それから1週間が経ち……自分の心情を観察し続けるうちに妙なことに気がついた。



…なんとあんなに想いを寄せていた彼への興味関心がほぼゼロになっているのだ。自分がいちばんびっくり。



私が失恋したのは彼に新たな恋人ができたからなのだが、こういった事例は今回で2度目。

1度目はまったくもって未練を断ち切ることなどできず、ちょこちょこ連絡を続けることでこの2年弱、今にも切れそうな細い線を保ってきた。


返信が来ないままでも。

作って渡すと言っていたはずのプレイリストが永遠に貰えなくても。

ごく稀に会えるとなると家まで迎えに行き極寒の中で待たされても。

立て替えた小銭を一向に返す気配がなくても。

すべては問題なく「かわいいから許す」に帰結してきた。


秋ごろに「彼女と別れた!!!」と連絡をもらってからも年上の友人として寄り添い、モテる彼にとってそう遠くないだろう新恋人の出現にハラハラしつつ…

「また彼女ができても変わらず可愛がろう。友人として付かず離れずで見守っていこう…!!」と固く決めていた。それなのに。



なぜ私の心は突然、大事な彼を見限ってしまったのだろう…そんなことをぼんやりと考え続けながら犬の散歩をするうち、ある仮説に思い当たった。

原因は、これまで積み上げてきた人間同士としての信頼関係が切れてしまったことなのではないか。



なんだか信用できない、の亀裂が入るとき

彼が恋人と別れたとき、私はなるべく普段通りに明るく冗談を言ったり、言葉の限りを尽くして彼を励ましたりした。

一応その気持ちに応えてくれたのだろうか。そのあと初めて旅先でお土産を買ったので渡したいと。向こうから誘ってくれるなんて…こんなんはじめて。

しかし疑り深い私は、これはなにかおかしいぞと怪しんだ。これまで土産を買ってきてくれても「買った」との報告のみで時間は流れていって、ついには貰えなかったことだってあったではないか。

それなのに、向こうから具体的な日程の打診があるとは、どういう風の吹き回し…。


嫌な予感とは当たるもので、その後すぐ新恋人登場。

私と会った時には「(彼女と別れて)辛い」「しばらく恋人は作らない」「マッチングアプリはもういいかな」なんて言っていたのに……

そのわずか2ヶ月後のことである。


いくらなんでも早すぎんか…!?

…というのはあくまでも私の感覚であって、時間感覚は人それぞれであるのは重々承知。

彼にとってのこの孤独の2〜3ヶ月は地獄のような長さだったかもしれない。

しかし何も相談されていなかった私としては、心を尽くして彼を励まし、つい先月『もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対〜』と口ずさむ彼を微笑ましく見守り「これからまた歩き出すんだね…」などと感慨深く思ったりしていた。


いや、ばっちり恋人探しとったんか〜い!!!と心の中で盛大にツッコミを入れてしまいたくなるほど、寝耳に水である。

だから早めに土産も渡しておきたかったのでは…なんて考えてしまう。前回の傾向から、彼女ができると女友達カテゴリにいる私との連絡も露骨に取らなくなる。いや彼女サイドには誠実だが。そして始めだけだが。

せいぜい500円程度の箱プリンふたつ入りが、まさか「これまでありがとう」の御礼……などと勘繰ってしまい、ますます萎えるばかり。

いや配慮なのか…いや結局は自己都合…うぅ〜ん、なんでもいいけどなんか嫌ァ!!!!!


そんなこんなでこれまでの諸々の不信ポイントが通算されたこともあり、積み重ねてきた私の勝手な献身は「なんだかバカらしい」と一瞬にしてオセロのようにひっくり返ってしまった。

失恋からの立ち直りがあまりにも早い、というのはあくまでも私の判断であり私の都合。立ち直ったのは喜ばしいことだし、彼が悪い訳ではない。ただ価値観が折り合っていないだけのこと。

私はペットを亡くしてすぐに次のペットを飼い始める人がなんとなく信用できない人間だ。呼び出されて散々愚痴を聞いたのにすぐケロッとして「そんなこと言ってたっけ?」と言い放つタイプの人にもモヤモヤを隠し切れない。

おそらく、ひとことでも「今また恋人を探し始めていて」などと報告や相談があれば私の心証は違ったのだと思う

すいません。前置きがスーパー長くなりましたが、こちらが本記事の主題です。



間違えないなんて無理だけど

先日Xで『会議は事前の根回しが肝心』とポストが流れてきたのを見かけたが、まさにそれだよそれ。

実際のところ、人間関係っていきなりではダメなんよ。心の準備もあるし。


彼にとっては沢山いる友人のうちのひとりでしかない私に、義理を通すほどの価値を感じていなかったせいなのかもしれないが…。

しかし、例えば職場などの組織でもこんなふうに亀裂が入ることはある。それぞれ考えや受け止め方の異なる人間たち一人一人に合わせて事前ケアをするのは不可能だし、必ず漏れは発生する。たいていだれかしらには不満を抱えさせてしまうことになる。

複雑な人間関係、ひとつも間違えないことなぞ不可避…そこで真に重要となってくるのがアフターフォローの大切さ

そんなこと知らなかった…と相手を憤らせてしまった場合でも、こんな事情がありました、大変だったんですよ、のような詳細を伝えてあげることで状況をほぐすことは十分可能なのだ。

それは言い訳ではない。相手のための説明だ。それすら行わないことで初めて、相手への怠りが確定してしまう。


人間関係を結び続ける上で大切なことは「あなたを尊重しています」という一貫性なのだから。



私もやってた、おんなじ失敗

こんな偉そうに書いている私も、かつて同じ過ちを冒したことがある。

結婚した時、式の余興を買って出てくれた後輩がいて、私の古い友人にお祝いメッセージの協力を求めて連絡を取る流れになった。

そのうちのひとり、大学のクラスメイトだった友人とは卒業後ほぼ連絡を取ることがなくなり、恋愛の進捗や結婚の報告までも気恥ずかしくてできないままでいた。

後輩伝いで初めて私の結婚を知った彼女は、他の同期とともに招集をかけられた当日にドタキャン。なんとそれっきりになってしまった。

尚、真面目な彼女はむやみにドタキャンをするような人間ではない…となると、おそらく私から直接の報告がなかったことにショックを受けたのだと思う。

彼女の年賀状には「またみんなで旅行に行きたいな」と書かれていたことなどを思い出し、いまだに胸がちくりとする。

逆パターンで、数年ぶりに連絡が来た友人から
のメールが一斉送信の結婚式の二次会への招待だったことに落胆したなんてこともあった。

どちらも相手への思いやりが欠けていたし、それでも後からのフォローができていれば関係は続いたかもしれない。

特に恋人ができたときや結婚したときなど、知らせを受けた人に大きな衝撃を与える節目での振る舞いにおけるミスは、関係に大きく響きがちなのだ。



相手との信頼関係を結び続けること

主題に戻るが、応援される人と応援されない人の違いとはなんだろう。以上の出来事をふまえて、その理由を考えてみたい。


人は、その人がどんな想いを持って生きているかを知ったとき「応援したい」といった情を抱くことがある。

そして、その一貫性のある物語が自分に向かって真摯に伝えられたとき、両者の間には絆が結ばれる。それは相手を蔑ろにしていない、という意思表示になるからだ。


一対一の人間関係に限らず、アイドルとファンの関係も似ているかもしれない。

先日熱愛報道のあったアイドルはファン想いなことで定評があったが、過去の発言に隠された実恋人への匂わせが多く判明したことでファンは傷つき、それを自分達への裏切りとみなした。

これまでの彼への信頼が、一気にひっくり返ってしまった例だ。


相談とまではいかずとも、ときおり近況報告するなど自己開示を続けていくことは人間同士の信頼を結び続けるのに必要である。

知らない(無関心)状態から、知っている(理解できる)に持っていくこと。それによって自然と信頼が築かれ、親しみへと連続していく。


たとえそこに真心がなかったとしても、相手への「あなた(達)のことを大切に思っています」という姿勢を続けること

それは相手の目にしっかりと自分へ向けられた誠意として映るし、結果的にそうなる。

その誠意が欠ける人間に対して、人は一貫性の糸が切れたように感じて関心を失ってしまう。さらには思い入れが強いほど、失望にまで発展する。

心が開くも閉じるも、案外伝え方ひとつ。
人間関係って、コミュニケーションって、本当に難しい。



冒頭の若い彼に対して「私を尊重しなかったからだ、バカめ!!」などと息巻くような醜く身勝手な振る舞いは死んでもしたくないし、もうそんなふうにも思っていない。

実はいちばん堪えたのは彼女ができたことよりも、それを知って連絡した時の返信にあった「ついに」の3文字だった。

ついに、なんていう言葉を使うほどの君の葛藤や行動、その過程を…私は何も知らない。私は君のことを、何も知らない。


これを機に離れることに決めたのは、あくまでも私側の都合だ。こんなふうにジャッジする自分が嫌になるし、感情の浮き沈みに疲れてしまった。

新しい恋人とつきあいたてハッピーな彼にとっては相関図の端っこにいるモブが一人減ることなど痛くも痒くもないだろう。


「おめでとう!末長くお幸せに!!」


そんな就活のお祈りメールのように味気なくつまらない言葉を最後に、本心は告げないまま。

そっと離れていくのみである。



 

※構成の都合で一方的に悪いみたいに書いてしまったけど私なんぞと友達してくれて本当ありがとうな!!すっごく感謝してる!!

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