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この夏、島根でインターンをするまで

大学4年の夏。留学のために卒業を遅らせるとはいえ、必ず聞かれるのが就活の話。業界とか分野を聞かれると、今の私はこう答える。

「将来は、地元の島根に帰るのが目標です。」


生まれも育ちも島根県。公務員の両親のもと、大学進学までずっと島根で過ごしてきた。
他人よりちょっぴり長い受験生活を経験し、念願かなって大阪の大学に進学。

「早くこの田舎を抜け出したい」と思っていた私は、大阪で関西色の強い友達に囲まれて過ごすうちに、心の奥底にあった地元への愛着に気づき始める。
「人口がワースト2位」「鳥取と間違えられる」「スタバがない」(今はもうできたけど)なんて自虐を交えながら、それでも地元の島根県を友だちに知ってもらう時間が大好きだった。

大学で、自分の意志を持った人に数多く出会い、「じゃあ私のやりたいことってなんだろう」と考え始める。
そのときぼんやりと浮かんできたのは、「地元で活躍したい」という願望だった。日本の人口1億2千万人分の1ではなく、大阪800万人分の1でもなく、島根の70万人分の1として認められたい。お世話になった人がいる場所で、私も何か地元のためになることをしたい、という思いだった。


一つのきっかけになったのは、島根県出身のローカルジャーナリスト田中輝美さんの存在を知ったこと。地域との関わりをキャリアにする、地域にいながら自分の名前で活躍する、という発想がなかった私にとって、輝美さんの働き方は目から鱗だった。それ以来、輝美さんの活躍は一つのロールモデルとしていつも注目するようになった。
人口の少ない都道府県あるあるで、都会で地元出身者に会うと、どんなに立場が違う人でも一気に親近感を覚えることがある。私の場合、興味分野が近かったこともあり、輝美さんの存在によってぐっと「自身のキャリア×地域」の現実味が増した感覚があった。

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しかし、将来はローカルで働きたいと同時に、人生のうちでグローバルな環境に出てみたいという思いもあった。
幼い頃から英語が好きで、大学在学中の留学を目標にしていた私は、入学後からこつこつと準備を進め、大学3年次から一年間のオランダ留学を経験する。

「将来地元に帰るなら、なんで留学するの?」と聞かれることもあるが、だからこそ今留学するんだよ、と思っている。ローカルとグローバルは必ずしも相反するものではないし、将来はローカルに身を置きたいからこそ今海外に出ておきたかった。というのも、日本より早く社会が成熟した欧州では、高齢化や少子化が早くに問題となっている。日本で起こっている問題の解決策やヒントを、海外の例から得られることだってある。
留学を終えて帰国した今、もちろん私は「行ってよかった」と言う。行かなかった選択について知ることはできないし、選択を自分にとって正しいものにするしかない。正直、留学の意味なんて後付けでもいいと思う。(大学の偉い人たちに怒られそうだけど)

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10ヶ月半、遠く離れた欧州で英語と奮闘しながら大学に通い、異文化の中で生活するたくましさを身につけた。
生活を楽しむコツだったり、全く異なるバックグラウンドを持つ人と暮らしをともにするスキルだったり…英語力だけでなく今までの自分にはなかった力がついたと思う。

海外生活の経験を経て、以前よりも自分の意志に敏感になっていた。
というのも、海外にいる間は日本の活動に関わろうとすると余分なエネルギーがいる。時差のために早起きしたり、同じ空間にいられない分オンラインのチャットで意識的にコミュニケーションを取るようにしたり…。だからこそ自然と「そこまでしてもやりたいこと」が見えてくるようになったのだ。

地元・島根に関わる活動は、「そこまでしてもやりたいこと」の一つだった。


留学中に、島根の若者コミュニティルーツしまねに関わり始めた。

ルーツしまねとは、島根をルーツに持つ若者の世代を超えた、遊び・学び・挑戦が生まれるプラットフォーム・コミュニティです。
きっと帰るだけが島根の関わり方じゃない。島根を離れても島根との関わり方は、人の数ほどある。
そんな振れ幅があって、 島根になにかしらのルーツあるひとが、 自分なりの島根との関わりしろを見つけて行ける場所。 それが、ルーツしまねです。 

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島根と関わりを持つために何か活動したい、でも何から始めたらいいか/どんな人と繋がるべきかわからなかった私にとって、島根の意志ある若者が集まるコミュニティは魅力的だった。
帰国までの数ヶ月はリモートで参加しますと言う私を、ルーツしまねのみんなは温かく迎えてくれた。時差があるためにミーティングの時間を変更したり、帰国後には歓迎会を開いてくれたり。ずっと思い描いていた島根との関わり方において、ようやく入り口を見つけられたような気がした。

刺激たっぷりの留学を終えて、一年ぶりに日本に帰国したのは7月のこと。
夏休みのうち1ヶ月を島根の実家で過ごすことにして、最初の数日は友人に再会したり親戚に顔を出したりして忙しく過ごしていた。しかし、予定を消化して何も用事がない一日を過ごしたある日、私は気づいてしまった。

「どうしよう、実家暇すぎる…」

忙しくするのが好きな性分なので、実家で時間を持て余している現状に耐えられなかった。
そこで、ルーツしまねで知り合った社会人の方に連絡をしてみた。「明日暇なら事務所おいでよ!」とメッセージをもらい、急遽初めての職場にお邪魔することに。

そこには、私の知っている"島根"とは違う世界が広がっていた。


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