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【エッセイ】10年ぶりくらいにゲイバーに行った話

私はゲイバーというものが好きではない。

だって別にわざわざ知らない人と
お酒を飲んで話したくない。

というかそもそも「ゲイ」と名の付く
場所やイベント等に行くことに抵抗がある。

自分をゲイだと
認めてしまうことになるから。

いい加減諦めろよと自分でも思うが
未だにゲイである自分を好きになれない。

最後にゲイバーに行ったのは10年ほど前。

知り合った人に連れて行ってもらった時と
別の知り合いから
行ってみたいと言われたので
付き添いで行った時。

あんまり記憶がないので
楽しくもつまらなくも無かったのだと思う。

これまで何度か一人で
ゲイバーチャレンジをしてみようかと
血迷って考えたこともあったが
やっぱりためらってしまって行かなかった。

そんな私が先日久しぶりにゲイバーに行った。

理由は以前のように

行ってみたいと言う人が居たのでその付き添いで

である。

一緒に行ったお相手は結構な若者。

知り合った経緯は置いておくが
別に変な下心は無い。

普通に話していて楽しい相手だ。

当初若い人が集まるという所へ
行こうと思っていたのだが
どうやら臨時休業らしく
しばらく途方に暮れた。

「こっちの店も休みだわ、」
「ドラァグクイーンの店行ってみる?」
「焼肉でも食べて帰るか、、、。」

行先はなかなか決まらず。

しかしせっかくわざわざ平日の
遅い時間に繁華街までやってきたので
どうにかしてゲイバーに行きたい。

結局何とか見つけた
老舗っぽい所に行ってみることにした。

その店はメインの通りから
少し離れた場所にひっそりとあった。

入り口にはしっかりとレインボーフラッグが。

「どうしよう。」
「人の気配はするね。」
「緊張する。」
「せっかくだから入ってみるか、、!」

店の前でああだこうだ
言い合った後、何とか店の扉を開けた。

アジアンテイストな雰囲気のお店には
カウンター席だけがいくつかあった。

既に二人のお客さんがいたが
年齢は年配と言っても良い。

だ、大丈夫かな、、。

と思ったが、扉を開けてしまったので
後戻りは出来ない。

とりあえず招かれた席へ二人で座った。

ママ(と言えば良いのかな)は
普通のおじいちゃんて感じの人。

とりあえず注文を聞かれたので私はビール
若者はカシオレを頼んだ。

せっかくこういう場に来たので
二人で話していてもどうしようもない。

ママと隣にいた別のお客さんと何となく話をした。

聞くとこのゲイバーは
昭和62年にオープンしたらしい。

私よりも年上。

そりゃお客さんの年齢層も高いわな、と納得。

「いつもは結構幅広い年齢層が来るのよ!」

とママ。

申し訳ないけれど
ちょっと信じられない。(小声)

話の内容は当たり障りの無い事だ。

この街でのゲイバーの歴史。

ゲイパレードの話。

英語が大事だよみたいな話。

ゲイには優秀な人が多いという話。

私は普段営業職で
初対面の人と話すのは得意なので

「へーそうなんですね!」

「それってこういうことですよね?
 分かります!」

「そろそろ新しいゲイバー
 とかできても良いですよね。」

などと途切れさせること無く会話を続けていた。

若者もおじさんに

「僕いくつに見える?」

みたいな感じで若さゆえの
愛想を振りまいていたので

それなりに楽しんでいたのだろう。(たぶん)

しばらく話していると
新しくお客さんが入ってきた。

どうやらこの店には
何度か来たことがあるらしい。

よくよく聞くと北海道から
旅行でやってきたのだとか。

わざわざこんな所まで旅行で来て
ゲイバーに寄る人も居るのだなと
何だか新鮮に感じた。

私はちょうど愛想を振りまいて話すことに
疲れて来た頃だったので

「そろそろ、帰ろっか。」

と若者に耳打ちをして店を出ることにした。

本当は羽振りのよさそうな若者好きのおじさんに
若者分をおごってもらおうと企んでいたのだが
狙っていた店にいけなかったので仕方がない。

しゃーなしで若者におごってやった。

(1500円くらいだけど)

「あら、おごってもらった分、
 身体で返さなきゃね!」

とママさん。

えぇ、さっきまでそんな
下世話な話ほぼしてなかったやん、、。

と驚く私。

結局この業界、下ネタへのノリが良くないと
全力では楽しめないのかもしれない。

適当にその言葉をスルーして店を出た。

私は下ネタ耐性がかなり低い。

どうリアクションして良いのか分からない。

まぁ別に良いのだが。

私は徒歩で、若者は自転車で来ていたので

自転車は押して歩いて一緒に帰った。

「身体で返さんで良いの笑?」と若者。

やめろばか。

ちょっと前にこういうことで
大失敗を犯しているので
軽々しくそういうことをしたくない。
※気になる人は☟をご覧ください。

1時間近くしゃべりっぱなしで歩き続ける。

何だか話すのが楽しくて
あっという間に自宅に着いた。

どうやら気の合う相手らしい。

トイレを貸してくれというので自宅に上げた。

でもさっきのおごった分を
身体で返してもらったりはしていません。

神に誓います。

嘘じゃありません。

ここまで言うと逆に怪しい?

いや本当に。

仲良くなったらそういうことしたくない。

もう性欲だけの関係で人と繋がるのは辞めたい。

一緒にいて話していて
こんなに楽しいのだからそれで良いじゃないか。

これは恋なんかじゃない。

例えば母性本能みたいなもの。

おまえの将来を遠くで見守っていたい。

ただそれだけだ。

私は若者の名前すら知らない。

知らないというか
聞いている名前が本名なのかどうか分からない。

この業界ではよくある話だ。

でも知らなくて良い。

もう誰かと近付き過ぎて苦しむのは嫌だ。

適度な距離で笑っていられたらそれでいい。





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