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実りの秋と、憧れのご夫婦【檜原村こよみだより9月】

私が檜原村に越してきて2ヶ月目となった、9月。村での生活にもだいぶ慣れ、クネクネした山道のコーナーを原付で曲がるのも、我ながら上達してきました。

気候については、8月の終わりから少しずつ涼しさを感じはじめ、9月に入る頃には、秋の訪れを感じる気温に。たまに真夏のような日差しが降り注ぐ日もありつつ、半袖だと少し肌寒いような日も増えてきました。

秋といえば、実りの季節。面積のほとんどを山林が占める檜原村は、他の地方と比べると農地面積は少ないものの、じゃがいもを筆頭に、様々な農作物を育てている人たちがいます。

先日は、村で農産加工品の生産・販売を行うTさんのもとで、「なつはぜ」という果実の収穫のお手伝いをしてきました。

若者が少ない檜原村では、村内で活動していると、「今度、手伝いにきてくれない?」というお声かけを各所からいただきます。その内容は、農作業やイベントのお手伝いから、物品販売のアルバイトまで多種多様。経験・未経験を問わずに色々なお声かけをもらうので、経験の幅が広がってとても楽しいです。

なつはぜの実。完熟した実は、「山の黒真珠」とも呼ばれているそう

なつはぜは、ブルーベリーのような実をつける、日本古来の樹木です。ブルーベリーより酸味が強く、そのぶん栄養も豊富ななつはぜの実を、Tさんはジャムに加工して、檜原村の特産品として販売しています。

Tさんはもともと、村役場に勤めていた方。退職後、農産物の生産~加工販売を行う会社をご夫婦で立ち上げ、なつはぜジャムをはじめ、イタヤカエデのメープルシロップや、ルバーブジャムなど、村の新たな特産品を生み出し続けています。

なつはぜを収穫するTさん

経験に裏打ちされた豊富な知識と、新たなことにもどんどん挑戦する姿勢を持つTさんは、本当にかっこいい大先輩。「体を動かしたあとは、お酒が旨いんだよ。だから私は、晩酌を楽しむために農業をしていると言っても過言じゃないね(笑)」と笑いながら語るところも含め、「自分も将来、こうなりたい……」としみじみ憧れてしまいます。

加えてTさんの奥さまも、とっても陽気で、話していると思わず笑顔になってしまうような方。収穫中も休憩中も楽しいやり取りを繰り広げるTさんと奥さまは、私にとってまさに理想のご夫婦です。

ナツハゼの名前の由来は、「夏にハゼのような紅葉を見せる」ことから。9月の下旬から、徐々に葉っぱが赤く色づき始めます

Tさんご夫婦をはじめ、退職後も元気に、日々を楽しんで暮らす方々が多い檜原村は、「自分も40年後、50年後はこんな風になりたい」と思えるロールモデルの宝庫。

そうやって生き生き暮らす方が多いのは、都会と違って娯楽が少ないからこそ、自分自身で生活のなかに楽しみを見出す力を持つ人が多いからなのかもしれない……と、帰宅後、Tさんからいただいたなつはぜジャムを美味しくいただきながら、しみじみと思いました。

そんな大先輩方の皆さまに習いながら、引き続き私も、檜原村での暮らしを満喫していきたいと思います。

text by 高野優海(檜原村地域おこし協力隊)