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基準をクリアしても良くならない時

私は、作品を作るときも仕事をするときも、自分の中で基準を決めて、このすべてのチェックリストをクリアすれば良いものが出来る、という風に考えることが多いです。

例えば、海外の映画祭をターゲットにした作品を作るときには、こんなチェックリストをチェックしています。

セリフ無しにしても話が分かるか?

ワンカットを抜き出した時に力があるか?

未知の国で同じ作品が作られたとして共感できるか?

などなど。こんなリストが大体20個ぐらいあります。これらのリストは企画から意識しないと意味が無い事ばかりなので、新しい企画を考える時に、これらのリストと照らし合わせながら考えていきます。

これらのリストは、私の経験の中から気づいたものがベースですが、本当にそれが正しいのか、自分の中でまだ検証されてないリストも入っています。

絶対に守らなければならないメインの基準が20個ぐらいあって、その下にサブのリストが20個ぐらいあります。と言っても、これらは全部私の「仮説」であり「思い込み」なんですけど。まあ「作戦」というのはすべて「仮説」ということでもあると思いますが。

そして、これらの基準を念頭に置きながら考えるわけですが、20個〜40個もの基準をクリアできる企画が出来ることはありません。禅問答みたいなもので、一生考えてもそんな企画は出来ない気がします。「大きなオチが必要」というリストの隣に「オチの無いキレ味」みたいなことも書いてありますので。

それでも可能な限り、その基準をクリアする様に企画を考えていきます。

そしてここからが大問題なのですが、「今回はかなりの数の基準をクリアしたな」という企画が、面白くない事が往々にしてあるんです。

たぶん「そんな傾向と対策みたいな作り方してるから面白く無いんだ。」と思われるかもしれませんが、私のチェックリストはあんまり傾向と対策ではないんです。

例えばサッカーの試合に勝つために、

10番の選手は後半バテるから、前半から徹底的にマークして疲れさせろ。

このチームは右からの攻めが弱いから、そっちを攻めろ。

4番の選手は代表から落ちて、モチベーション落ちてるぞ。

とか、そういうのは「傾向と対策」だと思うんですけど、私のリストでは、サッカーの試合に勝つために、

持久力を付けるために、心肺機能を鍛えろ。

常に客観的に、周りの状況を把握するように意識しろ。

内臓を壊すとメンタルも壊れるから、食べすぎに注意しろ。

みたいな感じなんです。たぶん私がこのリストを全部公表したとしても、全然面白くないと思います。「そんなこと言われなくても分かってますよ」みたいな事ばかりなので。このリストの内容については、またどこかで書いてみたいと思います。

話を戻しますと、「基準をクリアしても良くならない問題」があるんです。私だけじゃなく、多くの人がその壁にぶつかっているはずです。大成功した前作の成功の要因を抽出してリスト化して、次の作品のクリアすべきリストにして、それ通りに作ったのに、全然面白くならないという経験をしている人たちはいっぱいいるはずです。いるはずです、というか、いて欲しい!

いやいや。で、私は「基準をクリアしても良くならない問題」を、最近気づいたのではなく、だいぶ前から気づいていました。そして、何が間違っているのか考え続けたんです。

考えて気づいたのは、そのリストを100%クリアしたとしても、それがその作品のアウトプットに影響するのは30%ぐらい、という事でした。それまでは、その基準が作品の100%に影響すると思っていましたが、そういう事でも無いんだと思いました。思い上がりも甚だしいですね。理屈っぽいと言いますか。

結局、「分析」には限界があるんだと思います。すべて「認可」された成分だけで作っても、新しいものや驚きのあるものは作れないんだと思います。怖いけど「エイッ!」とジャンプする勇気が必要なんだと思います。

そこに気づいた私は、たぶん認可されてない成分を85%ぐらい入れてしまって、見てもよくわからない作品を作ってしまうでしょう。「でしょう」じゃなくて作ってきましたよ。はいはい!作ってきましたって!トイレ行かせて下さい!

いやいや。なんて言いますか、「何でこんな強い作品になったの?」「わかんない。」という作品には、かなわないですね。そういう作品が作れたらいいなあと思ってます。偶然すごい作品が出来ちゃった感じと言いますか。そういうのに憧れます。再現不可能なやつ。

どうしても、「これはすべて計算です。」と言うことが、カッコいいと思ってしまいがちなんです。「言うこと」というか「思われること」ですかね。「すべて計算で、すべて狙い通り。」と思われないと恥ずかしい、と思ってしまう人もたくさんいる気がします。特に中年以降のオジサンはその傾向が強くなる気がします。でも、案外その「計算通りに思われないと恥ずかしい」がバレちゃったりしてて、そこがまたチャーミングだったりもするんですけど。

結論としては、強い作品を作りたければ、もがき苦しみ、のたうち回り、身をよじりながら作品を作る事が、最短で最適な方法なのかもしれません。

(おいっ!学びも気づきも無い記事じゃないか!)

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