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資料(Esoteric & punk)

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主に(ポスト)パンク、ヨーロッパ的秘教音楽。忍冬資料室 https://atochietebura.com/DATA/esotericindex.html の転載。
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#フォーク

憑在論と幻想文学 アーサー・マッケン篇

憑在論と幻想文学 アーサー・マッケン篇


まえがき何度も当note/当資料室内で述べてきたことだが、日本の憑在論と音楽の接続は、ほぼすべてマーク・フィッシャーと彼がウォーリック大学在籍時代に所属したサイバネティック文化研究ユニット経由の資本主義リアリズムが入り口になっている。それは(生活圏内に大学、クラブ、程度の差はあれど文化的な施設があるような)都市生活者のサイクルが孕む矛盾を呪い、反面その永劫的な再生産から抜け出せないという前提を受

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英国幻想弾語事始 :デスディスク

英国幻想弾語事始 :デスディスク

上ページの転載です。

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 Fairport Conventionのフィドル奏者デイヴ・スウォーブリックは、1975年に出版された『The Electric Muse: The Story of Folk Into Rock』の中で自分たちのフォーク・ロックという様式、その特色である電気によって増幅された音の魅力を説明している。

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エルフの子供たち~サイケデリックとJ.R.R.トールキン

エルフの子供たち~サイケデリックとJ.R.R.トールキン

『ユリイカ』2023年11月臨時増刊号「総特集=J.R.R.トールキン」購入に伴い、同誌1992年7月号のトールキン特集号を棚から引っ張り出して併読している。前者は今日ならではの視点(木澤佐登志『トールキンを読むシリコンバレー』、井辻朱美『ファンタジーの祖型はなぜトールキンなのか』など)もあるが、新しい視点が得られるというよりは、見え方が変わるといった方が正しいか。古典だけに時代が持つモラルの変化

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Music Is Myth : The Incredible String BandとBoards Of Canada

Music Is Myth : The Incredible String BandとBoards Of Canada

来月発行予定の『MUSIC + GHOST』には、The Incredible String Bandによって分かれた二つの英国的ノスタルジアについて記述している。一つは将来のネオフォーク運動の呼び水となったCurrent 93のフォーク・ミュージック転向。もう一つがBoards of Canadaである。文章が長くなったせいで、当初の予定よりもチャプターを一つ増やすことにした。
今回は当該の文章

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『The Ballad of Shirley Collins』ブルースからアポカリプティック・フォークまで

『The Ballad of Shirley Collins』ブルースからアポカリプティック・フォークまで

米国民俗学史全体の功労者とも呼べるアラン・ローマックスのフィールドワーク-レコーダーによって対象となる歌い手たちとその空間を記録すること-は、父・ジョン・ローマックスの補佐をしていた30年代からはじまり、やがて50年代から60年代にかけてのフォーク・リバイバル運動にも多大な影響を与えた。彼は「民俗音楽学」を明確に定義することで、フォーク・ソング(またはトラッド・ソング)を一種の研究的行為にした。い

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