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普通過ぎる「The 日産車」 日産 E12ノート(先代モデル) 試乗レビュー

今回は、かなり前にレビューしたE13ノートの前型に位置するE12ノートに試乗してきたので、レビューしていこうかと思う。
E13のノートepowerをレビューした際はこのガソリンモデルと比較して、よくここまで進化したなと感じたが、もちろんこのE12のガソリンモデルにしかないものもある。
今回は、そのよさを紐解いていこうかと思う。

内装は安っぽいの一言

提供:@BR06DET さん

正直、内装は安っぽい。極限まで質素に作ってあるという言い方の方が正しいかもしれない。一番下のグレードなので仕方ないが、エアコンパネルはフルでプラスチックだし、シフトレバーはゴルフボールのような質感で、触ってみるとざらざらしている。到底質感が高いとは言えない。ウインカーレバーの操作感も、ヤリスなどよりは多少マシ程度で、最新のものと比べるとだいぶ劣っている。かろうじてドアハンドルはメッキで、ここだけは質感高く見えるし、ドアハンドルの形状もおしゃれで、メダリストグレードの質感にはまだ多少の期待が持てる。
ドリンクホルダーが横並びなのもいいところで、車幅の割に内装は使いやすいし、収納もそれなりに多く、スマートキーの入れ場所に困るようなこともない。唯一財布をおくスペースがないのが気になる。

提供:@freed_carshare さん
上位グレードの内装。
提供:@KamenRingo さん

メーターに関してはなかなかかっこいい。上位グレードのメーターもかっこいいが、こちらもグレードの割に悪くない。こちらもメーターも、皮肉抜きで味があり、視認性も大変いい。水温計がついているのもこのグレードの魅力だろう。上位グレードだとマークのみになってしまう。

提供:@BR06DET さん

ステアリングに関しては、この世代の日産車のデザインではあるが、D型になっているのが特徴的である。個人的には違和感のある形ではあるが、ステアリング自体のデザインはかっこいい。上のグレードになればクルコンやボタン類が着くので、もっと印象は豪華になるだろう。

走りも「質素」

走りに関しても質素の一言が一番あっているような気がする。ただ、質素であるが故に親しみやすさもある。内装は質素ではあるが広くて使いやすかった。走りの方はどうなっているのだろうか。

CVTはクセもち

まず一番最初に思うことは、CVTに多少クセがあるということだろう。
発進はとんでもなく丁寧にアクセルを操作しないと必ず急発進になるので、渋滞時などはかなりストレスになる。丁寧に操作すれば答えてくれるのだが、このような質素さ全開の車ならCVTも、雑に扱ってもストレスないようにしていただきたいのが本音。

加速時もなかなか特徴的な挙動で、踏み込んでも2500回転くらいをキープして加速していく。体感だと街乗り領域では6割踏んでも3000回転弱ほどしか回らず、そこから踏み増していくと一気に吹けていくような印象。
ただ、3気筒の割に1200ccもあるトルク型のエンジンで、逆に高回転は力がないので、このセッティングでも不便はない。5000回転以降はただ回っているだけというような感じが強い。典型的な3気筒というような感じだが、街乗り領域ではこれが一番扱いやすい。
よって巡行もしやすく、低回転で快適に巡航できる。

全開加速時もCVTが特徴的な挙動をする。キックダウンは普通で、踏み込んで一息置いてから回転数がドカンと上がる。その後はまるで有段オートマかのように擬似変速する。加速してる感があるので自分は好き。

ステアリングは「ただ軽い」

ステアリングはただ軽いだけと言った印象で、現代のような軽いけど上質というようなステアリングとは程遠い。
軽いので確かに街乗り領域では運転しやすいが、カーブを曲がるときに頼りない感触がある。ステアリングの剛性が低いのか、常にブルブルと振動しているため、必要のない情報まで手に伝わってくる。
ボディの剛性も低いため、街乗り領域でのいなしといえば聞こえはいいが、一発カーブを曲がっただけでも不安感が強まり、「ただ無駄に広いだけの車」感が非常に強い。
もう少しステアリングを重くするだけでもだいぶ印象が変わるような気がするが、切り返しや微低速でのコントロールがしにくくなるため、ある意味このステアリングのセッティングは正解なのかもしれない。

よく考えるとこのセッティング、先代のセレナによく似ている。軽いが上質さはない。セレナは全体の合わせこみが上手くされており、そもそも攻める気にならなかったが、ノートはシャシーの剛性が低い割に重心高が低い印象で、物理的には攻められそうな感触があるため気になるのかもしれない。

乗り心地に関しても正直よくない。コンパクトカーなので段差を超えるとバタバタしたような動きが出るほか、ボディの剛性が低いので、いい勢いでカーブに突っ込むと、走る場所がズレるくらいに跳ねてしまう。常にヒョコヒョコしたような動きが出るので、一見すると室内空間が広く全幅もそれに応じて広いように感じるが、所詮は5ナンバーサイズということを感じさせられてしまうような乗り味になってしまっている。ボディ剛性の低さから、入った衝撃をボディが受け止めることができず、足回りの仕事量がキャパシティ以上に多くなってしまっているような印象がある。

ブレーキタッチはそこそこ

ブレーキタッチに関しては、普通レベルの水準だろう。特にタッチが悪いとも、いいとも感じなかったが、現代の日産車のレベルから考えるとやはり劣る。
まず遊びがそこそこあって、踏んだ通りに効くわけでも、踏んだ瞬間からガッと効くわけでもない。
特に印象がないというのが正直な印象というか感想だが、唯一気になるのは最後ブレーキを抜いてもカックンブレーキになるということ。今の日産車では改良されている部分なので言ってもしょうがないが、中古で買う際にはそういうブレーキであることを考慮した方がいいのかもしれない。

謎に安定している高速域

高速域では謎の安定性を発揮する。
全体的にシャシーの剛性も低くステアリングの剛性も低く、アシの動きも到底いいとはいえないが、それはそれで全体的ない世界観として、限られたコストの中で合わせ込もうとした努力がみられる。

内装の質感からボディの作りからステアリングの質感から、何から何までが良くも悪くも、コンセプト的に車好きの触手が動くようなタイプのものではないが、統一されたものを感じるのだ。

つまり、一言でまとめると、全体的に質の低い緩んだ世界の中で、普通に高速域でも安定感がそこそこあるということである。何度も言っている通りそこまでボディの剛性も高くなければステアリングの剛性もアシの取り付け周りもよろしくはないので、もちろん直進安定性が高いとか高速域で上質な乗り心地というわけではない。

全体的に緩んでいるので、高速域はどちらかというと楽に運転できるという言い方の方が正しいのかもしれない。
その証拠に、120km/hで連続巡行しようとすると、エンジンの余力的にはギリギリ許容範囲だが、足回りがふわつくような動きが出るため、安心感を持って運転できるかと思うとまた違う。まあ高速道路で落ち着いて左車線を安全運転する分には充分と言えるだろう。

まとめ

このE12ノートのガソリンモデル、結構辛口にはなってしまったが、全体的に好きか嫌いかと言われれば決して嫌いではない。質素ながら親しみやすさがあり、E13現行型ノートのような高級、上質で、逆にいえば親しみやすさが消えたような印象で、このE12とは真逆な印象となっている。
決して上質で高級感があるとはいえないが、ある意味これはこれで「ハマる人にはハマる長く愛されるクルマ」なのかもしれない。
開発者がどの層を狙ってノートをこのように仕上げたのかはわからないが、技術力や時代云々というよりは間違いなくターゲットは違うはずだ。ただ、日産のエントリー車種というだけの立ち位置だったE12ノートにepowerが加わり、これからの日産を引っ張っていく大きな要因となり、E13ノートでは日産車の方向性と会社全体のクルマのコンセプトを大きく変化させ、決定させるものになったことは言うまでもないだろう。

E12のepowerにも少しだけ乗車したことがあり、そちらはE13やこのE12のガソリンモデルともまた違う世界を見せてくれたので、いずれしっかり乗る機会があればレビューしようかと思う。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。スキやフォローお待ちしております。 

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