見出し画像

ミニバンだって進化してる! トヨタ ノア(90型) 試乗レビュー

今回は、トヨタの代表的なミニバンであるノアに乗ってきた。実はこのクルマ、僕のミニバンへの価値観を一蹴してしまうほどの実力を備えたほどのクルマだった。なのでまずは僕のミニバンへの価値観の部分から説明していこうと思う。
ちなみに今回乗った車両はハイブリッドモデルになる。


自分のこのクルマに乗る前のミニバンのイメージ

自分が持っていたミニバンのイメージ。まず結論から言うならば、「すべてが曖昧である。」というもの。
例えばハンドリングにしても、遊びがありすぎて情報量も少なくどれだけ曲がっているのかわからない。
加速ももっさりで、ブレーキにも剛性感があるわけではない。
それにトヨタの走りの根本の思想である「四輪の接地感がもたらす乗員への安心感、安定感(ry)」を合わせたら、乗り味は究極に無難で、降りたら3秒で忘れるようなものだろう(トヨタ車の走りの思想の分析については以前書いてるのでそれを見てね。)。

もちろん今回乗った90ノアがこれを覆すほどの走りの完成度かといわれるとまた違ってくるが、少なくとも予想を超えるくらいの乗り味を魅せてくれたし、実は主は以前に80型、つまりは先代型にも乗車したことがあり、それを考えると隔世の感があるほどに良くなっていた。前置きが想像以上に長くなってしまったが、そんな90型ノアの魅力が少しでも伝わると嬉しい。

内装は直線的

90型の内装。

まず内装だが、ずいぶん直線的だなという感じ。ハンドルはクラクションの部分がヤリスなどより大きくなり、よりどっしり感が出ている。そのほかは本当に直線的でスッキリしている。

先代(80型)の内装。

先代の内装をみると、ずいぶん曲線を多用しまくっていることがわかる。これだけ曲げに曲げまくって最終的に上手くまとめてるのがすごいところではあるが、これから比べると90型の内装はずいぶん路線変更されている。

まず90型のノアの内装に関して思うことは、とてつもなく広く感じるということである。フロントスクリーンはミニバンとして考えてもデカく、このクラスではあるが運転手感すらある。先代でこの運転手感を感じることはあまりなかった。
助手席側についている物入れが非常に巨大で深く、なんでも入るどころか入れたものが奥に行ってて忘れ物するレベル。主は一度財布を忘れて焦った経験がある。
そのほかエアコンパネルが横長になったおかげで小物入れを追加でき、でかいナビをつけることができるようになった。ただ、これは新しい車あるあるなのだが、ユーザーの選択肢の幅が広いのは先代型かなと感じる。もちろんオーナーカー的な使い方はカーシェアでは出来ないので検証できたわけではないが、ナビを自分好みに変えたり、何か追加で装着したり、オーナーが自由にカスタムできるのは先代かもしれない。

ただ、90型のスッキリかつ実用的な内装は非常に的を得ていて素晴らしいと感じる。個人的にも90型の内装は好印象。

走りはミニバンとは思えないものに

個人的には先代から比較して進化したと感じるのは走りである。もちろん装備関連も進化し、トランクに任意で開けられる角度が変えられるギミックに関しては感心した。しかし、走りに関しては現代のミニバンの進化を感じるようなものであった。

まさに箱が移動している感じ

90型のノアの乗り味を一言でまとめるとしたら、箱が移動している感じ。というのがピッタリだろう。
もちろん事実としてどの車も箱が移動しているのだが、そういうことではない。このノアに関しては、でっかい箱があるとして、その箱が、何の凹みも衝撃もうけることなくスーーッと走っていくかのような感覚があるのだ。
この感覚になったのはノアが初めてで、他のミニバンでは感じたことがなかった。乗車順がノア→新型シエンタだったので、ノアが一番最初ということになる。新型シエンタにもこの感覚はわずかにあったが、ノアになるとその感覚はより強くなる。アルファードも新型が出たが、ノアのような箱が移動している感は果たしてあるのか(そもそも乗るときはあるのか)、いまから非常に楽しみである

加速感は鋭め

加速感に関しては、モーターがかなり主張してくるなといった感じ。
スタートはたとえ暖気でエンジンがかかっていたとしてもモーターを優先的に使うようになっているようで、ミニバンではあるがスタートがものすごくスムーズである。普通にアクセルを踏んで加速していくと20km/h以上でパワーメーターの針がPWR領域に入り、エンジンがかかる。ほかのトヨタのハイブリッドより早めにエンジンがかかるようになっているようで、モーターで粘ると周りの交通にはなかなかついていけない。
アクセルの早開き感があり、エンジンがすぐかかる割にモーターの加速は鋭い。ミニバンの重量級を動かすにはバッテリーの大きさが足りないとも言えるが、高速域でも充分な加速で、これで充分だろう。

100km/h巡行でも1.8Lハイブリッドながら余裕があり、ミニバンとして家族をのせての遠出も疲れないだろう。60km/h巡行ではもちろん、80km/hでも稀にEV走行になるので、モーターのトルクはかなり力強くなったといえる。

0発進から全開にすると普通にドライでもホイールスピンするほどモーターは力強く、それが逆にウェットや雪上だとモータートルクを完全に管理できていない感、もちろんトラクションコントロールは入るが時すでにお寿司感が出てしまっているのだが、それくらいにこのノアのハイブリッドは「速い」といえる。

ブレーキタッチも鋭め

おそらくこのノアのハイブリッドに乗車すると、その加速にも驚くだろうが、それ以上にブレーキタッチに驚くだろう。
というのも、トヨタのハイブリッドにしてはかなりいいものを持っているのである。

まず、初期からかなり効くブレーキで、マツダのような踏んだら踏んだ分だけ効く、というようなものではない。しかし、ブレーキを踏んでシステムスタートするだけでもブレーキペダルの剛性感を感じる。

これはよさそうなブレーキだなと思いながら左右確認でブレーキを踏んでみると、かなり初期からガッと効く。スイッチ的に効くので最初は少し戸惑うがすぐに慣れる。初期でガッと効くが、後は踏んだら踏んだだけ効くし、止まる時にカックンと止まる感じも非常に少なくなっており、止まる時のコントロール性もヤリスやアクアよりダンチでいい。
プリウスでもこの進化は感じたが、ノアのような重い車でもこのようなブレーキタッチの進化が見られるというのは非常に喜ばしいことである。これから出てくるトヨタ車たちもこのブレーキタッチになると考えると非常に楽しみである。

乗り心地は少し硬めか?

乗り心地に関しては、少し硬めというかしっかり感のあるものだなと言った感じ。硬いか柔らかいかでいうと硬い部類に入るだろう。
もちろん不快であるとは言わないし、このクラスにもなると車両重量もそれなりにあり、1630kg。これだけあればダンっと跳ねるような動きも出づらく、実は結構な頻度で乗っていて長距離から街乗りまでオーナーカー的な使い方をさせていただいているのだが、そういう跳ねるような、ボディに響くような動きが出た場面って実は片手で数えるほどしかない。

路面から突き上げがあったことは乗員に伝わるが、アシがまずしっかりと動いている感じがあり、ボディもその衝撃をしっかり受け止めるが、後腐れなく一発で収めてくれる。
アシが動いていれば乗り心地は柔らか系なのかと言われるとまた違って、ある程度突き上げを乗員に伝えはするが不快なブルブルとした振動は伝えないようにアシでおさめ、乗員には必要な振動だけを伝える。これは、ある程度の情報を伝えることで運転手が運転しやすいようにしたり、同乗者を酔わせないためだったりと言う意味ですごくよく出来ていると感じる。アルファードがこれなら文句を言いたいところだが、ショーファーというよりも、家族や友人と出かける車であり、同乗者をエスコートする車ではないという性質上、ノアがこれ以上乗り心地を良くして行ってもしょうがないし、運転技能がそこまで高くない人が乗る(特になんでかノア、ヴォクシーは…)ことも考えると、あまりに乗り心地を柔らかくしすぎると逆に危ないだろう。

つまり多少硬めでも全く問題ないということで、実際にノアの乗り心地は好印象である。

乗り心地と関連してもうひとつ。ハンドリングについて。これに関しては特にミニバンについての僕の偏見を覆すようなものとなった。
ミニバンというものはそもそも重心が高く、街中の右左折でも横転しそうになる車もある。最近でこそそういう車はかなり減ってきたが、重心が高くてユラユラする感じは否めない。
もちろんノアの重心が低いわけではなく、普通に重心は高いのだろうが、コーナーでの安定感がダンチでいい。
やはり、ボディーの剛性が先代から格段に上がり、足回りのセッティングの自由度もそれに従って上がっていったのだろう。
ミニバンではあるが、コーナーでの一連の動作はスムーズに行え、カーブを曲がっている時も不安感はない。

「ミニバンに走りを求めるな」という人はかなり多いような気がするが、個人的にはミニバンこそ走りを求めるべきだと考えている。スポーツカーで走りがいいのは当たり前だし、スポーツカーはこれからも走りの良さを突き詰めていってほしい。しかし、個人的な意見にはなるが安全性という観点においてミニバンにも走りを求めて欲しいと考える。例えば走りを求めているクルマ、60プリウスで感じたのだが、止まりたいところで止まる、アクセルを踏んだ分だけ加速する、曲がりたいだけ曲がれる。つまり、人間の意志とクルマの動きが一致している。もちろんミニバンで60プリのようなセッティングにして欲しいというわけではなく、不安感なく加速でき、ブレーキも緩みなくコントロール性もよく、コーナーでも不安定な動きは極力減らす。そういうセッティングはミニバンにおいて大事であると考える。

つまり、このノアは、トヨタというブランド、しかもTNGAというベースの信頼性を最大限活かして、お客が安心、安全に乗れるミニバンを作ってきたということである。

運転支援は大進化

運転支援に関しては大きく進化した。
ヤリスやアクアでは車線の認識頻度や速度自体は早いが、いかんせん支援力が絶望的に弱く、疲労軽減にはなるが、プロパイロットやホンダセンシングに勝つのは100年先の話だった。
しかし、巷で言われている通り、ノアでは大きな進化を遂げた。上位グレードではレベル2の運転支援もつくようで、それのベースであることを考えると今ひとつではあるが、これがついていれば不便はないというようなものにまで成長した。

発進とブレーキ。これに関しては旧世代のものでも特段不満はなかったが、RESのボタンを押すと発進するし、前走車に追いつくと停止までコントロールする。ノアはブレーキホールドもついているので、停止の保持もしてくれる。

ちなみにブレーキホールドの制御はいいとは言えず、楽なので使うには使うが、 もっと制御がうまいクルマは五万とある。

大きく進化したのはハンドルの支援。かなり手前からゆっくりハンドルが切れるし、戻しは若干遅いような気がしないでもないが、しっかり任せられる支援力だと言える。
例えば人間で言えば目線が遠い人。近くばっかり見ている人は、全体が見えておらず、無駄なハンドル操作をしがちであったり、急な操作になったりするだろう。遠くまでしっかり見ている人は、全体をしっかり見ることができており、行きたい方向をしっかり見てハンドルを切ることができている。
どちらの人間の運転が快適かはいうまでもないが、ノアはその後者の制御がしっかりできていると感じた。

ボディがしっかりしていて、それによりステアリングの設定や足回りの設定が、人間だけではなく、機械でも制御しやすいものになっているため、このような制御ができるようになったのだろう。

まとめ

このノア、かなり総合商品力が上がったように感じる。こういうクルマで軽視されがちな走りの部分をしっかり磨き上げてきて、真の意味で安全なクルマになってきた。
もちろん車好きが好むクルマではないが、しっかりと荷重移動を意識すれば、クルマの限界は掴みやすく、そこそこなペースで走ることができる。

ただ、同価格帯の他のどのボディタイプにもない「箱が移動する感」がとにかくとにかく新鮮で、「トヨタだからノア」ではなく、「あの乗り味だからノア」になりうるだけの走りを身につけてきた。

個人的にはこのノア、欲しいとは思わないが、ミニバンが必要な人にとっては「誰にでもおすすめできるクルマ」に成長したなと感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?