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軽としてのベストバイと軽の役割の違い 日産 サクラ 試乗レビュー

今回は、1日試乗にて日産のサクラをお借りすることができたのでレビューしていこうと思う。
かつてこのクルマに乗った際は軽としてはありえないと言えるほどの圧倒的な実力の高さを感じたが、去年、今年と色々なクルマに乗ってきて、改めてどう感じるのかも含めてレビューしていきたいと思う。
EV、しかも1日試乗で所有的な使い方もできたので、大人気軽EVの実態も可能な限りレビューしていこうと思う。

内装は質感高い

内装のぱっと見の質感は高いと感じる。とくに助手席の部分の布なんて軽では見たことがない。財布などの小物も置きやすい。収納に関しても問題なく、この辺りは標準のデイズの優秀さを引き継いでいる。相変わらずのピアノブラック多用で指紋は気になるが、プレミアム感があるという点で所有感は間違いなく満たされるだろう。

鍵も大きくなり、以前の米粒みたいな形から少しカクカクしたデザインに変更となった。軽から高級車まで共通(になるはず)の鍵だけあって質感は高い。

かなり布が多用されており、ぱっと見の質感は高いように感じるが、標準車のデイズと同じく布の手触りはザラザラしており、触った時の質感が高いとは到底言い難い。先代のeKが低予算ながらよく作られていただけに、サクラのようなプレミアムを狙ったクルマであればもう少し柔らかく、手触りがいいものだといいのかなと感じる。

また、標準のデイズと比べると若干サイドが内装デザインのためか高くなっており、見切りはデイズと比べるとよろしくない。誤差ではあるが、軽としては高いし、自信ない人はアラウンドビューモニターを選びましょう。このクルマに関しては傷ついちゃうとかなりショックだろうし。
ていうことは、もしかして窓ガラスはサクラ専用品…?

カッパーの差し色が各所に入っておりオシャレである。外装でもカッパー色が使われているものがあり、他車種にも採用されている色なので、これからの日産のひとつのアイデンティティになるのだろう。

ステアリングは2本スポークになり、これは質感というよりは未来感が高まったように感じる。デイズは3本スポークで、あれはあれでかっこいいのだが、こちらは未来感が高く、新しい日産ロゴもバッチリ似合ってる。
ただステアリングで気になるのは、ピアノブラック部分である。手で触る部分までピアノブラックが伸びており、手の感触がその部分だけ変わるので個人的には好きになれない。また、手が触れる部分なので指紋も気になる。
また、過去に上位グレードにも触れたが、本革ハンドルの質感がザラザラで、最近のクルマによくあるスベスベ本革ではない。後述するが見積もり出してもらうとオプション込みで300万ほどする。となるとこの質感はいただけない。

エアコンパネルやシフトレバーはデイズから大きな変更がかけられている。エアコンパネルは、相変わらずのタッチパネル式だが、サクラのキャラを考えるとむしろこの方があっていると感じる。シフトレバーはストレート式から電子タイプに変わり、シフトミスのリスクがなくなった。これもいずれ番外編記事にしようとしているが、個人的にはこれが事故の原因にはなりえないだろう。
システムオフするとエアコンパネルの文字が見えなくなるのもカッコイイ。

反射しているのはルームランプです。ここもLEDなら…

エアコンパネルには見慣れないHEATの文字が。今回の試乗ではイマイチ役割が伝わらなかったが、HEATするのだろう。

そういえば、貧弱なルームランプとは対照的に、ナンバー灯はLED、しかも2灯だった。こういう細かい部分にもおカネがかけられている。
また、ウインカー音やその他警告音がノートより大きく、このあたりも聞こえやすく親しみやすさを感じる。おそらく意図的なものだろう。

走りは軽らしさがないものに

走りに関しては軽らしさがないものになっていた。それは色々なところに散りばめられている。一方で、ここまでやるならあと一歩ここも…というところもあった。もちろんそれらは重箱の隅のような話であり、日常で不満が出ることはないだろうが、その訳をひとつひとつ解説していこうかと思う。

加速は軽とは思えないものに

加速感に関しては軽とは思えないものだった。特に街中。軽ターボの約倍のトルク数値を見れば当たり前ではあるが、街中がものすごく走りやすくなっている。スッと加速したい時に加速でき、発進では交通の流れをリードすることができるほどの性能は持ち合わせている。
例えば道路工事していて車線変更しなければならない時。入れてもらったあと流れに乗らなければいけない時、ただアクセルを踏みますだけで自分の思った通りの加速ができる。ホンダのCVTも滑らかではあるが、EVと比べれば当たり前だが段違いでEVの方が滑らかである。

高速域では流石に軽なみかなという感じはあり、伸び感は出足ほど良くはない。速度の伸びに関わる最高出力は64psで、軽としては重量もおそらく最も重いので、トルクで引っ張っている感がある。しかし巡航では余裕があり、100km/hでの巡航も余裕。まるでディーゼル車のような特性とも言える。つまり、街中メインの軽自動車においてベストすぎるパワートレインとトルク特性になっている。
音もなく加速するので速度感もなく、気づいたら速度が出ているなんてことも何回もあった。

隠れ🌸

乗り心地は感動レベル

EVになったことで乗り心地は軽自動車としては感動レベルまで良くなった。標準のデイズでも乗り心地は軽としてはかなり良かったが、フロアのプルプル感と重心の高さがネックとなっていた。結論から言うと、今考えればやはりデイズはEVありきのクルマだったのかな、企画段階からサクラのことを考えて作られていたクルマだったのかなと感じる。
つまり、デイズの良くないところがサクラでバッチリ帳尻が合っていると言うことである。
まずディーラーから出てちょっと走った時点ですごく乗り心地がしっとりしていることに気づく。標準のデイズでも足はしなやかに動いており、重心の高さが悪さしてか若干ヒョコヒョコするような動きはありつつも突き上げ自体は優しかった。それが重心がバッテリーによって下がり、重量も重くなったことによって乗り心地はすごく良くなった。
フロアのプルプル感も少なくなり、どちらかと言うと補強をしたと言うより、バッテリーが入るべき場所に入ったことで出したい剛性がばっちり狙い通り出ているといった感じ。スタッドレスタイヤではあるが充分いい乗り心地になっている。

日産のEV車にはこれがついてる。外からでもわかりやすい。

ハンドリングは普通に乗用車を食ってる

ハンドリングに関しては乗用車顔負けである。もちろん絶対的なサイズこそ小さいので踏ん張り感や安定感こそ普通車ほどではないが、「EVじゃないとできないこと」がしっかりと詰まっている。
いつも見てくださっている人ならわかるかもしれないが、乗り心地とハンドリングを同じ見出しで書いてしまうことが多い。今回から分けたのは、それほどこのサクラのハンドリングがスゴイからである。

まず、標準のデイズと比べると重心がかなり低い。デイズだと重心が高く、コーナリングで若干頼りない感じがあったが、サクラはどっしりしている。もちろん重量もあるだろうが、床下にバッテリーを積み、前の高い位置にエンジンという重量物を置かなくて済むだけでここまで差が出るのか。
ボディ剛性はそこまでかなと感じるが、重心が低いことによる安定感と電気モーターの加速感で、普通車を食っていくだけの性能を身につけてしまった。ワンペダルモードを使ってアクセルだけでコーナーに入る時に前荷重をかけ、徐々にアクセルを踏んでいって速度をキープ、カーブ出口でアクセルをふむという一連の動作がスムーズにできる。ただトルク感が非常に強く、コーナー出口でアクセルを全開にすることは中の人の腕の問題でほぼ不可能。ガソリン車の軽であれば普通に全開にできる場所だが、エンジンとモーターのトルクの違いが如実に出ている。
タイヤがスタッドレスなので攻めすぎはよくないが、是非とも夏タイヤでもう一度乗ってみたい。

バッテリーEVありきの設計のプラットフォームをつかい、前に重量物をおいて、床面にバッテリーは積んでないので何もない空箱、補強もコストの関係で特に入ってない。こうなるとデイズの重心の高さは必然のものとして説明がつく。

もうひとつサクラで驚くべきこと。それはハンドルの滑らかさ。エンジンがないことで、もちろん振動を発生させるものはクルマの中には何もない。また、標準のデイズもそうだったがステアリングにはしっかりとした剛性感があり、振動がなくなったことでその剛性感がより全面に出ている。路面の状況は雑味なくしっかり伝わってくる。実はこの試乗の後に現行のノートにのったのだが、静かだといってもエンジンは確かにあるので振動は出る。ハンドルに若干ブルブルが伝わってくるし、エンジンのゴーーという音もしているにはしている。正直「こんなにうるさくて振動してたっけ?」とがっかりしてしまうほどにサクラのステアリングの質感と「EVであることのメリット」は大きい。

ブレーキタッチは今ひとつか?

ブレーキタッチに関しては回生協調ブレーキであるが故にあまりよくない感じがした。標準のデイズでは初期からしっかり効き、踏力に応じてリニアに制動力が変わるような、軽としては異例にいいセッティングで、先日のレビューでも絶賛した記憶がある。
サクラにはワンペダルモードがあるので単純比較はできないが、ブレーキタッチは若干クセ持ちかなと感じる。

ワンペダルモード、EVではe-pedalは、慣れを多少要するかもしれない。
ワンペダルモードにすると、アクセルを離すだけで減速するのだが、アクセルを完全に離してしまうとギュッと一気に減速してしまう。そこのあたりの調整が最初は難しいかも知れない。サクラではわかりやすい位置にワンペダルモードのオンオフスイッチがあるので、色々な人が乗る軽自動車においてこのセッティングはかなり評価できる。ノートやオーラではドライブモードに応じて制動力が変わるが、それよりもサクラの方が断然わかりやすい。

ワンペダルモードは慣れを要する一方で、慣れてしまえば非常に運転が楽になる。例えば右左折で減速して曲がる時。わざわざブレーキを踏まなくてもアクセルだけで加減速の調整ができてしまう。カーブでもわざわざブレーキを踏まずに対応できる。停止までワンペダルモードで行けない(クリープが出る)のが玉に瑕と行ったところではあるが、停止まで行けなくとも非常に運転が楽になる。

停止までアクセルのみで行けないと言うことは、ブレーキペダルに踏み替える必要があると言うことである。ブレーキの初期のタッチは大変よく、トヨタのハイブリッドのような突然効きだす感じはない。踏力に対してリニアに効く感じがあり、現行のノートのようなスカスカで踏んだら怖い、というようなものでもない。正直ブレーキを踏んだ時の感触はノートより断然いい。自分はよくブレーキを蟹🦀に例えるのだが、ノートはスカスカで身が詰まってない、サクラはしっかり身が詰まっている「高い蟹」といった感触。
ただ、最後止まる時のコントロール性が悪く、どう頑張ってもカックンになってしまう。丁寧にブレーキを抜いてもいったん止まってもう一度進み出してしまうような時もあり、これでは1世代前の軽自動車と同じである。軽自動車ではあるがプレミアムをコンセプトにしているものでこのブレーキはいただけない。もちろんコストとの兼ね合いがあるのはそうだが、標準のデイズが良かっただけに残念と言わざるを得ない。

また、EVなので回生協調のブレーキを採用している。なので踏んだ時に普通のブレーキのようなプシューっという音ではなくワイヤーが擦れるようなミョーという音がするのが新鮮だ。

そういえば減速が強いのはベースとなるデイズも一緒で、エンジンブレーキがかなり強い。どういう違いがあるのか謎だが、サクラの減速の強さはコントロールしやすいが、デイズの減速の強さはコントロールしづらい。

EVとしてのサクラの可能性

個人的にはこのサクラ、EVとしての可能性を大いに秘めていると感じた。航続距離は少ないし実用的ではないのではと感じる方もたくさんいるし、特に僕みたいなしょっちゅう数100キロ移動をするキチには合わない。
ただ、航続距離が少ないゆえのメリットもある。航続距離が少ない=バッテリーが小さい。なので、普通車のEVと比べても充電速度は必然と上がる。受け取れる電気の量的に急速充電は別かもしれないが、無料でできるところもある200V充電を使用すれば短時間でも電力を貯めることができる。

具体的なシチュエーションだと、例えばイオンにサクラで行き、充電開始して買い物にいく。イオンで買い物して、お昼ご飯を食べておおよそ3時間くらい色々楽しんで帰ってきたら、そこそこ走れるだけの残量が溜まってる。1時間楽しんでおよそ15%。こうきくと遅いと感じるが、3時間放置するだけで単純計算でおよそ半分の電力が貯まるということである。
こう考えたら意外と現実的じゃない?

また、前提とされている自宅充電。夜に200Vで充電し、朝には満充電。CMでもよく言われているシチュエーションだが、すごく理にかなっていると感じる。充電し忘れたらもちろん終わりだが、そんなのガソリン車でも同じ。そう考えたら、街中スペシャリストとして、サクラはかなり現実的ではないだろうか。

また、EVの最大のメリットは、「走る材料を集めるために移動しなくてもいい」ということだろう。ガソリン車はガソリンスタンドに行かないと基本的にエネルギーー補給をすることはできない。
自宅に充電器がある前提にはなるが、燃料の補給を自宅で、しかも動かない時間帯に勝手にできてしまうということである。燃料を入れるためだけに目的地を追加するのって実はすごく無駄なのではないだろうか。もちろんドライブ好きには走る理由なるだろうが、そのドライブの目的地を別の景色が綺麗な場所に置き換わるとなると、よほどエンジンの音が大好きとかそのほか理由がない限り、EVが最適解になるという人は多いだろう。

🍖×2

そうなると、航続距離が短いゆえにサクラの現実性はかなり上がる。EVであることのメリットをフルで生かしている走りの良さ、バッテリーが小さいことで200Vのカス充電器でも現実的な航続距離を稼げること、自宅充電で一晩で充分満充電にすることができることを考えると、お金があってエンジン音に特有のこだわりがないならこのクルマを選ばない理由はない、とさえ言える。

まとめ

個人的にサクラというクルマ、というかEVは現実的でない夢の商品だと思っていた。しかし、実際に所有的な使い方をしてみて、経済状況が許すなら個人的に欲しいと思える完成度だった。
ただ、見積もりを出してもらうと300万くらいするのである。高い高い。もっと加速も良く、伸びもよく、ハンドルもサクラほどではないにせよ滑らかなフィットが普通に買えてしまう。航続距離なんて5倍近くフィットの方が長いし、普通車としての広さと内装の良さまで持っている。
こう考えるとやはり軽であることがネックになってしまう。ステアリングの質感など、細部には軽らしさが出てしまっており、ウインカーレバーもおそらくデイズやルークスと共通のモノが使われている。この走りと価格であればステアリングはスベスベのものが望まれるし、ウインカーレバーもワンクラス上のノートのものを採用すればいいのに、、など、やはり軽であるがゆえに行き切れてない部分も散見されてしまっている。
個人的にはBセグメントあたりでサクラほど煮詰めたクルマが出れば、フィットを倒してしまうほどのとんでもないモンスターになるのではないかと感じる。

もちろんセグメントで価格を決めるなんて時代はもう終わっているし、排気量で価格を決めるなんて時代はもうかなり前に終わっている。しかし、軽で求められるもので価格というものは絶対的なものである。サクラの存在を否定するわけではないし、EVを普及させるための商品力として、サクラは絶対に必要な存在であることは確かだが、これから軽EV市場がどうなっていくのか、個人的には非常に興味があるし、これから注目してもいい市場になる可能性は充分持ち合わせている。

最後まで読んでいただきありがとうございました。スキやフォローぜひお待ちしております。

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